なぜ Mi chiudo gli occhi と言わないの?
こんにちは Minori です。イタリア語の大きな特徴の一つとして,自身の身体の一部や自分の持ち物に関係している名詞には,原則的に 所有形容詞を使わない,というのがあります。例えば …。
このように,動詞の主語(その動詞の動作をする人)と,体の部位の所有者が同一人物の場合,再帰動詞を使います。そして,体の部位の所有者は再帰代名詞で明示します。
ですが,一部の動作(動詞)については,この法則が当てはまらないというのです。
指摘されてみて初めて気づきましたが,言われてみれば Mi chiudo gli occhi. Mi apro gli occhi. って聞くと,なんだか変な気がします。
命令法で考えてみましょう。tu に対して「手を洗いなさい!」は,Lavati le mani!です。動詞の形は lavare の命令法 tu に対する形 lava に,再帰代名詞 ti を結合させて lavati となっています。
※ ちなみに,前述したように Lava le tue mani ! とは言いません。
では,「目を開けて!」は❓️というと,Apri gli occhi ‼️が正解です。ここで,動詞 aprire の命令法 tu に対する形 apri に,再帰代名詞 ti を結合させた形 apriti を使って, Apriti gli occhi ! とは言いません。
普段,何気なく耳にしていましたが,言われてみればそうだなあと思いませんか❓️手 le mani も 目 gli occhi も,身体の部位です。では,なぜ le mani には再帰代名詞を使って,gli occhi には再帰代名詞を使わないのでしょうか。
その疑問の答えてくれるのが,本日ご紹介するこの動画。
Raff のイタリア語解説動画 ItalianoConRaff 。以前も紹介した通り、彼はかなりの文法マニア。他のイタリア人とは一線を画す、ユニークで深い文法解説を毎回届けてくれます。それでは、さっそくご紹介します。基本的に彼の動画を日本語に訳してお届けしますが、時々私がちょっとしたコメントを挟みます。その部分には👧マークがついていますので、ぜひチェックしてください‼️
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( Mi chiudo gli occhi ではなく) なぜ Chiudo gli occhi. と言うのだろう❓️もしかしたら,誰かがこう疑問に思っているかもしれません。その疑問とはこういうことです。
一般的に(動詞の)行動が身体の部位に関係している場合で,その身体の部位が自分のものであることを示すために,(イタリア語では)《再帰代名詞》を使います。例えば,Mi lavo le mani. 「手を洗う」 Mi gratto la testa. 「頭をかく」Mi soffio il naso.「鼻をかむ」のように。ですが,Mi chiudo gli occhi. とは言いません。
このビデオの目的は,(Mi chiudo gli occhi は)単に「これはこういうものだ」と受け入れるべき例外なのか,それとも,特定の身体の部位や特定の動作に関連する,一般的なルールがあるのかを見出すことです。
1.イタリア語は所有形容詞を使わない
多くの方がご存知のことと思いますが,次のような文では《所有形容詞》は使いません。
このような文章はどれも非常に奇妙に聞こえ,ごく特定の状況でしか使われません。通常,身体の部位が主語に属している場合には《再帰代名詞》を使います。
👧 「身体の部位が主語に属している場合」とは,主語と身体の部位の所有者が同一人物である場合ということです。
2.身体の部位が他人のものなら? 1
では,身体の部位が主語のものでなく,別の人のものである場合はどうなるのでよう。このような場合は《間接目的語代名詞》を使うことになります。例えば …。
3.身体の部位を文の主語にする場合
また,身体の部位を文の主語にする場合も《間接目的語代名詞》を使います。多くの動詞はこのような使い方はできませんが,一部の動詞では可能です。
3人称(lui, lei)に対しては,このようになります。
ここまでは大丈夫でしょうか。では,冒頭に申し上げた Chiudo gli occhi について考えていきます。
4.gli occhi 👀 は特別❓️
ここで 目 gli occhi が登場します。「目を閉じる」や「目を開ける」は,冒頭で申し上げたように Chiudo gliocci, Apro gli occhi と表現します。これらの文に《所有形容詞》は使いません。
また,《再帰代名詞》も使いません。
目が主語に属している場合(目が主語の身体の一部)である場合でも,《再帰代名詞》を使うことはありません。しかし 目 occhi だけが特別だというわけでなないのです。
イタリア語大辞典 la Grande Grammatica Italiana に書かれている解説を読んでみます。
さて,私が興味深いと感じるのは un'azione che parte dall'interno, che fa parte delle funzioni del corpo 「内部から起こる,身体機能の一部である行動」というこの定義です。その定義とは一体どういうことなのでしょうか。
なぜこの本では,chiudere gli occhi「目を閉じる」aprire gli occhi「目を開ける」abbassare le palpebre「まぶたを下げる」という例を挙げたのでしょう。この疑問を解消するためには,他に,所有形容詞も再帰代名詞も使わない他のケースを見つけることが有益です。つまり,身体の部位に関連する他の動作において,所有形容詞も再帰代名詞も使わない例を探すことが重要です。
いくつか思い浮かびました。
あまり一般的な表現ではないかもしれませんが,この表現には再帰代名詞も所有形容詞も使いません。他にもこんな動詞が思い浮かびます。
piegare 「曲げる」は,身体のどの部位にも使うことができます。この動詞を使う場合も,再帰代名詞は使いません。
alzare 「上げる」や abbassare 「下げる」も同様です。
alzare や abbassare も,身体のどの部位にも使うことができます。
scrollare 「振る,揺り動かす」や muovere 「動かす」も,身体のどの部位にも使うことができます。ですが,次のように,muovere を使う場合も《再帰代名詞》を使いません。
また,こんな動詞も思い浮かびました。
il respiro 息 は厳密には身体の部位ではありませんが,この動詞を提示したのは,英語ではこの場合,所有形容詞を使うことを思い出したからです。
では,これらの行動は,この文法書が言うような《内部から起こる行動》なのでしょうか❓️恐らくそうでしょう。この《内部から起こる行動》という定義は,《外部の何かが身体に作用する》ものではなく,《身体自身が起こす行動》だということです。
もう少し具体的に見ていきます。例えば, Mi pettino「髪をとかす」というとき,外部の道具である 櫛 pettine を使います。また,Mi taglio i capelli 「髪を切る」, Mi faccio la barba「ヒゲを剃る」など,それぞれ外部からの作用(ハサミ le forbici , ひげ剃り il rasoio )が引き起こす行動です。
これらの行動はいずれも、体の部位に対して《身体以外の》のものが外部から引き起こす行動です。この場合は,いずれも《再帰代名詞》を使います。
また,Mi gratto la testa.「頭をかく」というのは,(道具を使用していませんが)手 la mano が頭に作用しています。この場合も《再帰代名詞》を使います。
まとめると,《身体以外の》ものが身体部位に作用する場合や,《身体の一部》が別の身体の部位に作用する場合には《再帰代名詞》を使うということです。
一方で,Chiudo gli occhi や Apro gli oggi のように,《動作が身体の内部から起きる場合》には,《再帰代名詞》も《所有形容詞》も使わないということです。
👧 ここで,一旦まとめます。動画の中で言っている《身体の内部から起こる行動》というのは,《その身体の部位が自発的に起こすことができる動作》と考えられます。目を閉じたり開いたり,腕を曲げたり延ばしたり,肩をすくめたり,腕や頭を動かすことは,《道具》はもちろん,《他の身体の部位》の力を借りずに行うことができます。それが《身体の内部から起こる行動》と私は解釈します。
5.身体の部位が他人のものなら?2
4のケースは,身体の部位が主語に属する場合(主語と身体の部位の所有者が同一人物の場合)でした。では,《再帰代名詞》や《所有形容詞》を使わない4のケースの場合(例:chiudere gli occhi, aprire gli occhi, muovere la testa など)で,もし身体の部位が主語のものではなく,《他の人の身体の部位》であり,動詞の表す行為が,他の人に対して行われる場合はどうすればいいのでしょうか。その場合は,2で述べたように《間接目的語代名詞》を使うことになります。
このように身体の部位が,主語のものでない場合は《間接目的語代名詞》が使われます。同じことは,身体の部位が《主語》になる場合にも当てはまります。
ちなみに,Mi si chiudono gli occhi は,Sono molto stanco. 「私はとても疲れている」という表現です。
6.冠詞について
冠詞についても言及させてください。再帰代名詞を使うにしろ,使わないにしろ,このような文では身体の部位に関する名詞には《定冠詞》を使わなければならないという点です。
身体の部位が la testa 頭 のように1つしかない場合は,《定冠詞》を使うしかありませんし,ですが,身体の部位が 手 le mani や 指 le dita ,膝 le gionocchia のように複数の場合は,《定冠詞》と《不定冠詞》の両方使うことができます。「(片方の)膝が痛い」というのは,Mi fa mare il ginocchio. とも,Mi fa male un ginocchio. とも言うことができます。また,目 occhio の場合は,普通両目を閉じるので,「目を閉じる」は,Chiudo gli occhi. と《定冠詞》を使いますが,もし片方の目だけ閉じるなら,Chiudo un occhio. と言うことになります。ちなみに,Chiudo un occhio. は,「見て見ぬふりをする Faccio finta di non vedere 」という意味のイディオムとしても使われます。
最後に,私が思いつく範囲で,今回の動画で解説した身体の部位に関するリストを作りましたので,ぜひ参考にしてください。
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はい,本日はここまでです。非常に興味深かったですね。身体の部位が,自発的の起こせる動作の場合は,《再帰代名詞》も《所有形容詞》も使わない。なるほどです。Grazie Raff!
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