キノコにちなむ23の豆知識/23 Random Pieces of Trivia キノコ
キノコにちなむ23の豆知識/23 Random Pieces of Trivia キノコ(本文3,007文字)
キノコの美味しい季節になりました。
ひとくちに「キノコ」といっても、そのバラエティーは千差万別で個性的です。
そこで今日はキノコにちなんだ豆知識を23個お伝えします。楽しんでください。
01 「きのこ」は、植物ではなく、菌類(真菌類)です。真菌類にはきのこのほか、酵母やカビなどが含まれます。
02 きのこは菌類なので微生物に分類されますが、菌糸と呼ばれる細長い細胞の集まりから構成される多細胞生物です。私達が「きのこ」として認識している「子実体」は、この菌糸の集合体です。
03 子実体は、胞子を作り散布する器官です。胞子は新しい場所で発芽して新たなきのこに生長していくことになります。特に断りのない限り、ここで扱う「きのこ」は子実体を指します。
04 きのこは、見た目と構造から「カサ」、「ヒダ」、「柄」の3部位に分けられます。
05 「カサ」、「ヒダ」、「柄」の3部位はそれぞれ特徴的で個性的です。
カサ: 傘や帽子のようにみえる部分。形や色は種類によって様々で、カサがないキノコもあります。カサの形で9種類程度、さらに表面の様子で7種類程度に分類されています。
ヒダ: 胞子を作り貯蔵するカサの裏側の部分。胞子を形成する表面積を増やすためにヒダ状になっており、色や形、構造から様々に分類されています。
柄: 軸や足とも呼びます。柄がないきのこもあります。カサとの繋がり方で4種類程度、表面の様子から10種類程度に分類されています。植物とは構造が異なるので「茎」とは呼びません。
06 きのこは、栄養摂取の方法によって「腐生菌」と「菌根菌」に大別されます。腐生菌のきのこは、落ち葉や倒木、切り株などに生えます。しいたけやなめこが代表的です。菌根菌のきのこは、植物と共生して地面に生えます。まつたけやトリュフが代表的です。
07 日本にふつうに自生しているきのこはおよそ1万種類と言われています。そのうちで食べられるきのこは1,000種類程度で、さらに食用のきのこは100種類もありません(数は判断基準や評価方法などによって変動します)。つまり、食べて美味しいきのこはごくわずかなのです。
08 日本のきのこ1万種類のうち、いわゆる毒きのこは150~200種類、特に注意しなければならない猛毒を持つきのこは10~20種類(判断基準や評価方法などによって変動します)。
09 厚生労働省食中毒統計によれば、毒きのこが原因とされる食中毒事故は、毎年およそ20件程度報告されています。令和5年は24件の報告がありました。ムキタケやヒラタケ等と間違えられやすい「ツキヨタケ」や、ウラベニホテイシメジやハタケシメジ等と間違えられやすい「クサウラベニタケ」による食中毒が多いとされています。
10 「毒きのこ」というと、赤いカサに白い水玉模様の「ベニテングタケ(紅天狗茸)」が一般的なイメージです。ベニテングタケを食べると、食後30分程で下痢,嘔吐,腹痛の胃消化器系の症状が現れ,めまい,錯乱,運動失調,幻覚,興奮,抑うつ,痙攣など神経系の症状も現れ,死に至ることもあります。
11 「不思議の国のアリス」に登場するきのこはベニテングタケとされています。それ以後、空想上の世界に登場するきのこのモチーフはベニテングタケが一般化していきます。ゲームの「スーパーマリオブラザース」の主人公マリオは、ベニテングタケを連想させるきのこを食べてスーパーマリオに変身します。
12 代表的な毒きのこのベニテングタケを、塩付けにして食べる地域があります。またニホンリスやエゾリスはベニテングタケの毒に耐性があり、餌として食べていることが報告されています。
13 食べられるきのこと毒きのこの見分け方として、「柄が縦に裂けるきのこは食べられる」や「派手な色のきのこには毒がある」など多くの言い伝えがあります。しかし、それらのほとんどには信用できる根拠がありません。あなたがきのこの専門家でもない限り毒きのこを見分けることは難しいので、自生するきのこを自己判断で食べるのは控えましょう。
14 世界で一番生産されているきのこはマッシュルームです。英語で「マッシュルーム(Mushroom)」はきのこ全般をさす一般名詞ですが、和名は「海外から輸入された人工栽培のきのこ」という意味の「ツクリタケ(作茸)」です。フランス語ではシャンピニオンと呼ばれます。
15 国内でのきのこの生産は、えのき、ぶなしめじ、しいたけの順に多く、この3種類で全体のおよそ7割になります。
16 食材としてのきのこは全般的に低カロリーで低脂肪です。また食物繊維やビタミン類、カリウム、リンなどが豊富な食材です。
下表は国内生産量上位の3種類の栄養成分です。その他のきのこについてはリンク先をご確認ください。
表 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年によるきのこの栄養成分(100グラムあたり、いずれも生のもの)
17 10月15日は「きのこの日」です。1995年に日本特用林産振興会によって制定されました。アメリカ、カナダ、さらに南半球のオーストラリアでも、10月15日を「きのこの日」としています。なお、この日は「すき焼き通の日」でもあります。
18 えのきたけを生で食べることはおすすめしません。えのきたけには「フラムトキシン」というタンパク質が含まれていて、赤血球を破壊する溶血症状を引き起こす原因になります。またリステリア菌に汚染されている場合もあることから、かならず加熱処理してから食べるようにしましょう(ただし、現在は生食できるえのきたけもあります)。
19 物事にはそれぞれ長所があるというたとえとして、「香り松茸、味しめじ」という言葉がありますが、ここでいう「しめじ」は「本しめじ」で「ぶなしめじ」ではありません。この2つはまったく異なるきのこです。
本しめじは、シメジ科シメジ属に分類されるきのこで、全体的に太くて大きく丸みを帯びた形です。栽培が難しく希少なきのこなので、一般に流通される量はかなり少ないです。
ぶなしめじは、シメジ科シロタモギタケ属のきのこで、人工栽培されたものを小売店でよく見かけます。細くバナナのように房になっているので、本しめじとはハッキリ違いが分かります。
20 しいたけは出汁を取る食材のひとつとしてよく知られています。日本料理でいう出汁=うま味成分は、おもに昆布の「グルタミン酸」、カツオの「イノシン酸」、しいたけの「グアニル酸」の3種類です。グアニル酸は生しいたけにはほとんど含まれてなく、干すことによって生成されます。
干ししいたけのグアニル酸の含有量は非常に多く、のりやドライトマトなどの数倍から数十倍です。
21 「雷が落ちると椎茸が生える」という言い伝えがあります。実際に人工雷を発生させると、きのこ、特にしいたけの生育が早まることが実験で証明されています。
22 きのこの下処理では洗わないのが基本です。洗うことで美味しさが落ち日持ちもしなくなるためです。ただし、土などが付いている場合は、ペーパータオルなどで軽く拭き取るとよいですし、もちろん洗ってもすぐ食べるのであれば問題はありません。
23 まつたけは香りの良い高級食材としてよく知られています。香りは「マツタケオール」や「ケイ皮酸メチル」と呼ばれる物質によるものです。海外では「履き古した靴のニオイ」や「体を洗っていない不潔なニオイ」を連想させる不快な匂いとしてかなり嫌われています。食習慣があるのは日本と朝鮮半島だけと言われます。
<参考>
【食品安全委員会】食中毒予防のポイント 毒キノコによる食中毒にご注意ください
https://www.fsc.go.jp/sonota/kinoko_tyudoku.html
【厚生労働省】毒きのこによる食中毒の発生状況
https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/rinsanbutsu/yaseikinoko/joukyou.html
広報誌「厚生労働」毒キノコ
https://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/2018/09_05.html