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【レポート】危ういサプリ実名リストを読む

【レポート】危ういサプリ実名リストを読む(本文2,165文字)
 
 
株式会社ウェルネスニュースグループは、令和6年9月9日ならびに同10日の2回に渡って、東京大学名誉教授の唐木英明氏による寄稿文「危ういサプリ実名リストを読む」を公開しています。
ここでは唐木氏の「危ういサプリ実名リストを読む」のダイジェストならびにその解説をご案内致します。
なお、筆者の視点で作成したダイジェストなので、内容をかなり濃縮させています。ご興味あれば<一次情報>にある原文を是非ご確認ください。
 
 
<概要>
【はじめに】

「危ういサプリ実名リストを読む」は、東京大学名誉教授の唐木英明氏によるウェルネスデイリーニュースへの寄稿文であり、週刊文春に掲載された「京大論文で分かった危ういサプリ実名リスト」という記事を基にしている。この記事は、2024年2月に発表されたSomekoらの論文(以下、京大論文)を背景に、機能性表示食品の根拠論文の質に疑問を投げかけている。
 
【科学の品質保証】
医薬品やサプリの効果を調べることは容易ではない。例えば、ある物質を頭痛がある人に飲ませた結果、痛みが治まったとしても、それが薬理作用によるものか、自然に治まったのか、あるいは心理作用によるものかを区別する必要がある。このため、プラセボ対照ヒト臨床試験(RCT)が行われる。しかし、RCTでも正しい結果を得ることは難しく、被験者の個人差やバイアスを排除するための工夫が必要である。Cochraneバイアスリスク検証ツールやConsort声明、PRISMA声明などのガイドラインが作られたのは、科学の不正やバイアスが生活に悪影響を及ぼす可能性があるためである。
 
【京大論文の指摘】
京大論文では、5つの大手医薬品開発業務受託機関(CRO)が実施した726件のRCTから32件を選び出し、その質を評価している。特に「報告した結果の選択によるバイアス」に注目し、「スピン」の有無を調査している。結果、72%のRCT論文において高いバイアスリスクが確認された。「スピン」とは、結果の解釈を歪め、データによって裏付けられるよりも好ましい結論を示唆する手法である。
 
【競争的資金獲得のための誇張】
科学論文にはバイアスや「誇張した記述」が少なくない。その理由の一つは「出版バイアス」であり、有効という結論の論文は採択されやすいが、無効という結論の論文は出版されにくい。また、研究費の確保のために誇張が常態化している。研究費は競争的資金であり、申請者は「実績」と「今後の見通し」に誇張した記述をすることが多い。
 
【宣伝広告のスピン】
科学の世界だけでなく、宣伝広告の世界でも「誇張した記述」が常態化している。京大論文の調査によれば、RCT論文のプレスリリースや広告の72%に「スピン」が確認された。筆者は、広告のスピンと論文のスピンがほぼ同程度であることに驚きを感じている。
 
【安全性に関わる問題とスピンの違い】
週刊文春の記事では、京大論文で「スピン」があると評価された論文を機能性表示食品の届出資料として使用している企業の見解を求めているが、筆者はこれに対しても疑問を呈している。特に、記事の最後に「健康被害」と直結するような記述があることについて、筆者は強い懸念を示している。
 
【結論】
科学の品質を保証するためには、声明やガイドラインの遵守、研究者の倫理観、論文の査読、内部告発などが必要である。京大論文の指摘は重要であるが、その評価が正しいかどうかは今後の検証が必要である。また、宣伝広告におけるスピンと科学論文におけるスピンの違いを理解し、適切な対応が求められる。
 
 
<解説>
唐木英明氏の寄稿文「危ういサプリ実名リストを読む」は、科学論文の質とその影響について深く掘り下げています。特に、機能性表示食品の根拠となる論文の質に疑問を投げかけ、科学の品質保証の重要性を強調しています。科学論文におけるバイアスや誇張の背景には「出版バイアス」や「競争的資金獲得のための誇張」があり、これにより無効な結果が隠され、有効な結果が誇張されることが常態化していると厳しく指摘しています。
 
また、宣伝広告の世界でも「誇張した記述」が常態化しており、科学論文と同様の「スピン」が見られることに驚きを示しています。特に、週刊文春の記事が「健康被害」と直結するような記述を行ったことについて、唐木氏は強い懸念を示しています。科学の品質を保証するためには、ガイドラインの遵守、研究者の倫理観、論文の査読、内部告発などが必要であると主張しています。
 
京大論文の指摘は重要であり、今後の検証が求められます。また、宣伝広告と科学論文の違いを理解し、適切な対応が求められると述べています。唐木氏の主張は、科学の信頼性を確保するための具体的な方法を示しており、科学界全体での取り組みが不可欠であると結んでいます。
 
 
<おわりに>
このように、唐木氏は科学論文の質とその影響について鋭い視点を投げかけ、科学の品質保証の重要性を指摘しています。今後、研究者や企業がガイドラインを遵守し、あるべき倫理観をもって研究開発を進めることで、科学研究の透明性と信頼性が向上していくことを望みます。またそのような姿勢が、消費者がサプリメントや医薬品を選ぶ際の重要な情報につながり、より賢明な判断を促すことが期待されます。
 
 
注意:本レポートは、唐木氏寄稿の原文をもとに筆者が作成したダイジェストです。是非<一次情報>から原文をご確認ください。
 
 
 
<一次情報>
危ういサプリ実名リストを読む(前) 【寄稿】東京大学名誉教授 唐木 英明
https://wellness-news.co.jp/posts/%e3%80%8c%e5%8d%b1%e3%81%86%e3%81%84%e3%82%b5%e3%83%97%e3%83%aa%e5%ae%9f%e5%90%8d%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%83%88%e3%80%8d%e3%82%92%e8%aa%ad%e3%82%80%ef%bc%88%e5%89%8d%ef%bc%89%e3%80%80%e3%80%90%e5%af%84/
危ういサプリ実名リストを読む(後) 【寄稿】東京大学名誉教授 唐木 英明
https://wellness-news.co.jp/posts/%E9%80%B1%E5%88%8A%E6%96%87%E6%98%A5%E3%80%8C%E5%8D%B1%E3%81%86%E3%81%84%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%AA%E5%AE%9F%E5%90%8D%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%80%8D%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%82%80%EF%BC%88%E5%BE%8C/

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