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文化庁が食文化分野における新たな顕彰制度を創設しました
文化庁が食文化分野における新たな顕彰制度を創設しました(本文2,739文字)
文化庁は、令和7年2月25日付にて「食文化分野における新たな顕彰制度創設に向けた提言」について情報発信し、国内外の顕彰制度や関係分野の詳細な実態を調査・分析した結果を踏まえ、新たな顕彰制度の創設に向けた具体的な提言を取りまとめました。ここに概要をまとめます。詳しい内容は<一次情報>からご確認ください。
<創設の目的>
地方の過疎化や少子高齢化により、伝統的な技術や技能の継承が困難になっている現状を踏まえ、食文化に貢献する料理人や技術者の社会的地位を向上させることが重要である。この状況下、日本の食文化を保護・継承し、その価値を国内外に発信することを目的として、新たな顕彰制度を創設した。この制度により、食文化の担い手を顕彰し、後継者の育成を促進することで、日本の食文化の持続的な発展を図る。
<概要>
1. 顕彰制度創設に向けて
1-1. 日本の食文化をめぐる現状と課題
日本の食文化は、地方の過疎化や生活様式・嗜好の変化により、継承が危ぶまれる状況にある。特に、少子高齢化による担い手不足が深刻であり、伝統的な技術や技能の継承が困難になっている。一方で、訪日外国人の増加に伴い、日本食への関心が高まり、インバウンド需要の拡大を通じた地域・産業の活性化が期待されている。このような状況下で、日本の食文化の保護・継承は喫緊の課題であり、国としての対応が求められている。
1-2. 新たな顕彰制度創設の必要性
日本の食文化において中心的な役割を担う料理人や食料品・飲料製造業の技術者(以下「料理人等」)の技術や技能は、長い歴史の中で継承されてきた伝統のわざである。これらの技術を持つ方々の社会的地位の向上や、生業としての魅力を発信することが、日本の食文化の価値向上に繋がると考えられる。したがって、国は食文化分野における新たな顕彰制度を早急に創設する必要がある。
1-3. 新制度の実行における基本的考え方
新制度は、食文化の形成に関わるすべての要素に光を当てることを理想とし、料理人等が弛まぬ活動を続ける上での励みとなることを主眼とする。また、顕彰される料理人等に憧れてその道を目指す後継者を確保することを狙いとし、集団ではなく人物に焦点を当てて顕彰する仕組みとする。さらに、多様な分野や職種に配慮し、時代背景や人々の嗜好の変化に柔軟に対応することが求められる。
2. 新制度の構成
2-1. 顕彰対象及び顕彰対象者
新制度は、日本の多様で幅広い食文化の中から分野を特定せずに横断的に顕彰することを基本とし、料理人等の無形のわざを顕彰対象とする。顕彰対象者は、各分野において当代一流と目されるわざの保持者、いわゆる「トップ オブ トップ」を選定する。具体的には、飲食店の調理人・店主、バーテンダー、給仕従事者、食料品・飲料製造業の技術者などが含まれる。
2-2. 顕彰対象者の選定及び選考の視点
顕彰対象者の選定及び選考の視点として、以下の4つを挙げる。
・ 歴史的価値:技術の研鑽を積み、歴史的に見て価値の高い技術を保持していること。
・ 芸術的価値:料理や製品等を通じて芸術的価値を表現していること。
・ 文化貢献:食文化の発展に寄与し、後継者の育成・確保や文化発信に貢献していること。
・ 社会貢献:地域社会の維持や地域経済の循環に配慮し、非営利の社会活動や慈善活動を行っていること。
2-3. 顕彰対象者候補の選定方法
顕彰対象者候補の選定には、特定の分野に造詣の深い専門家等を推薦委員として任命し、推薦委員方式を採用する。推薦委員は毎回入れ替えを行い、名簿は非公表とする。これにより、特定の分野への偏りや推薦委員への働きかけを排除する。
2-4. 顕彰対象者の選考方法
推薦委員方式により選定された候補者の中から、選考委員会が顕彰対象者を選考する。選考委員は国内外の食文化について高い見識を持つ学識経験者や文化人、料理人、飲食品製造・流通関係者、マスメディア関係者等から選定し、公正性を確保するために名簿を公表する。選考委員の任期は最大3年とし、1/3ずつ順次改選する。
2-5. 実施主体
新制度の実施主体は文化庁とし、選考委員会の選考結果を尊重して文部科学大臣が受賞者を決定する。文化庁が主催することで、文化芸術の振興と公益に寄与することを目指す。
2-6. 顕彰頻度
新制度による顕彰は年1回とし、顕彰式典を行って広く周知する。これにより、顕彰の権威を高め、受賞者の社会的地位の向上を図る。
2-7. 受賞者の呼称
受賞者は「食の至宝」と称し、重要無形文化財の保持者としての認定を予感させるものとする。これにより、受賞者の社会的地位を高め、食文化の価値を国内外に発信する。
3. 新制度実行に当たっての課題
3-1. 既存の表彰制度等との棲み分け
新制度は既存の表彰制度と重複しないように設計し、既存の表彰制度実施団体に対して提言を説明し、意見を聴取する。これにより、部分的な重複や誤解を避ける。
3-2. 受賞者数
受賞者数は多様な分野や職種からできるだけ多く輩出することが望ましいが、新制度の権威付けの観点から限定的に輩出し、稀少性を持たせることも考慮する。受賞者数は、芸術選奨の毎回の受賞者数を参考にしつつ、学識経験者等からの意見を聴取し、関係方面と調整して決定する。
3-3. 受賞者を偏りなく輩出する仕組みの構築
特定の分野や職種に偏りなく受賞者を輩出するために、複数年にわたって顕彰対象とする分野と職種を特定し、それに対応した推薦委員と選考委員を選任する。これにより、受賞者の多様性を確保し、新制度の公平性を維持する。
3-4. 発信方法
新制度と受賞者の効果的な発信方法として、報道各社への情報提供、ウェブページ、SNS、政府広報などを通じて多言語で公表する。これにより、新制度の認知度を向上させ、顕彰の権威付けに繋げる。
3-5. 支援方法
受賞者の活動を継続的に支援する方策を検討し、受賞した当該年に限らず支援を行う。これにより、料理人等の職業としての魅力を日本社会に浸透させ、食文化の価値向上に寄与する。
<まとめ>
新たな顕彰制度の創設は、地方の過疎化や少子高齢化により伝統的な技術や技能の継承が困難になっている現状を踏まえ、食文化に貢献する料理人や技術者の社会的地位を向上させることを目的としています。この制度により、食文化の担い手を顕彰し、後継者の育成を促進することで、日本の食文化の持続的な発展を図ります。
今後の展望としては、顕彰制度の実施を通じて、食文化の価値を国内外に発信し、地域・産業の活性化を促進することが期待されます。また、顕彰された料理人や技術者が後継者の育成に寄与し、食文化の継承と発展に貢献することが見込まれます。これにより、日本の食文化がさらに高い評価を受け、国際的なブランド力が向上することが期待されます。
詳しい内容は<一次情報>からご確認ください。
<一次情報>
食文化分野における新たな顕彰制度創設に向けた提言について
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/94176401.html
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/94176401_01.pdf
食文化分野における新たな顕彰制度創設に向けた提言
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/94176401_02.pdf
提言概要
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/94176401_03.pdf