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JETROレポートから「米国テキサス州でみる日本食」
JETROレポートから「米国テキサス州でみる日本食」(本文2,023文字)
独立行政法人日本貿易振興機構JETRO(Japan External Trade Organization)は、海外ビジネス情報の地域・分析レポートとして、令和7年1月23日付にて「テキサス州オースティンで日本食需要が進化(米国)」を公開しました。詳しくは<一次情報>ならびに<関連情報>からご確認ください。
<米国テキサス州における日本食の状況>
はじめに、米国テキサス州における日本食の状況について簡単にご紹介しておきます。
米国南部に位置し広大な面積を持つテキサス州では、日本食レストランが増加しています。オースティン、ダラス、ヒューストンなどの大都市圏では特に人気が高いとされています。2024年版ミシュランガイドでは、州内の日本食レストランが一つ星を獲得しています。
テキサス州において日本食の需要が高まっている理由として、まず経済成長が挙げられます。特にオースティンなどではハイテク企業の進出が進み、若年層の高所得者が増加しています。彼らは新しい食文化に対してオープンであり、日本食の需要増加に大きく影響しているとされます。また、テキサス州は法人税や個人所得税が無税で生活費も安いため、他州からの移住者が多く、特にカリフォルニア州からの移住者が日本食に対する理解が深いことも一因と考えられています。
レポートはテキサス州オースティンから見える米国の食市場について、日本食の視点から解説しています。このレポートから米国の今後の食市場を展望します。
<JETROレポートの概要>
オースティンは、ハイテク企業の進出により、若年層の高所得者が増加している。この背景には、法人税や個人所得税が無税であること、生活費の安さがある。特にカリフォルニア州からの移住者が多く、2022~2023年の1年間で61万人以上が他州から移住している。
テキサス州の食文化はステーキやバーベキュー、メキシコ風の「テクス・メクス」が主流だが、近年は日本食レストランが増加している。2022年度の調査によると、テキサス州の日本食レストランは1,197軒で、2010年度から42.3%増加している。特にダラスやヒューストンに多く、日本食材スーパーも進出している。
オースティンでは、創作性の高い日本食が人気を集めている。例えば、「おまかせ」スタイルの高級寿司店が多く、顧客は寿司職人にメニューを任せることが一般的だ。代表的な店には「Tsuke Edomae」「Otoko」「Toshokan」「Craft Omakase」「Uroko」などがある。これらの店は少人数制で、寿司や日本酒を楽しむことができる。
また、オースティンの日本食レストラン「Uchi」は、創作系の料理で知られている。タイソン・コール氏が2003年にオープンし、ジェームズ・ビアード賞を受賞している。Uchiの料理は、伝統的な和食とは異なり、ヒラメをキノアとオリーブオイルであえた料理や、ハマチをポン酢に付けてオレンジと合わせた料理などが提供されている。
「Kome Sushi Kitchen」は、伝統的な家庭料理を提供している。オーナーの浅図佳代氏は、2005年にファーマーズマーケットで弁当の販売を始め、2009年にはフードトラックで巻き寿司の販売を開始した。2011年にはダウンタウンの北でレストランをオープンし、現在では地元市民に人気がある。
オースティンでは、日本食に対する理解が深まり、需要が増加している。テキサス大学には多様な人種が集まり、日本食の需要を創り出している。今後も日本食市場の成長が期待される。
<分析と展望>
テキサス州も含めて、新型コロナウイルスのパンデミック後の米国では、食市場には大きな変化が見られました。まず、健康志向の高まりが顕著であり、オーガニック食品や植物ベースの食事が普及し、ミレニアル世代やZ世代を中心に健康的な食事が注目されています。このような背景から、日本食は低脂肪で栄養価が高く、健康的な食事の選択肢として認識されており、米国全土で人気が高まっています。
日本食の需要はさらに高まっているとされる要因として、電子商取引(EC)の普及によるデリバリーサービスの急速な拡大があります。ウーバーイーツやドアダッシュなどのプラットフォームを通じて、日本食レストランの料理が手軽に楽しめるようになりました。
今後、米国における日本食の展望として、以下の4点が挙げられます;
1. 健康志向の高まり
日本食は低脂肪で栄養価が高く、健康的な食事として認識されているため、健康志向の高まりに伴い、需要が増加
2. デリバリーサービスの普及
ECの普及により、デリバリーサービスが拡大し、日本食レストランの料理が手軽に楽しめるようになり、家庭でも日本食を楽しむ機会が増加
3. 多様な顧客層の取り込み
日本食レストランは、白人系やヒスパニック系、アジア系など、さまざまな人種の顧客を取り込んでおり、特に若年層の高所得者へ浸透
4. 創作性の高い料理の提供
オースティンのように、創作性の高い日本食が人気を集めている地域では、今後も引き続き新しいスタイルの日本食が登場し、高い成長が継続
このように、日本食の需要拡大が期待されます。詳しくは<一次情報>ならびに<関連情報>からご確認ください。
<一次情報>
テキサス州オースティンで日本食需要が進化(米国)
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2025/6aaf18d3c69611cc.html
<関連情報>
新型コロナ後の食市場 米国最新食トレンドと日本食(1)
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2024/ec4a414fcc5f8d22.html
新型コロナ後の食トレンド 米国最新食トレンドと日本食(2)
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2024/35db1f834b2029c0.html