第76回食品表示部会「食品表示基準の一部改正に係る審議」概要
第76回食品表示部会「食品表示基準の一部改正に係る審議」概要(本文3,692文字)
内閣府消費者委員会は、令和7年1月30日に第76回食品表示部会を開催し、食品表示基準の一部改正について審議しました。
今回の部会では、「食品表示基準の一部改正」について詳細に議論されました。以下に、会議で取り上げられた主なポイントと出席者からの意見をまとめます。詳細は<一次情報>からご確認ください。
<議事次第>
食品表示基準の一部改正に係る審議
<食品表示基準の一部改正に係る審議について>
1. 栄養強化目的で使用した添加物の表示について
1-1. 栄養強化のための食品添加物の取り扱い
・ 栄養強化のために添加されるビタミン、ミネラル、アミノ酸等は、食品添加物として取り扱わない国が多く、FAO/WHOでも食品添加物の定義に含めていない。
・ 栄養強化目的で使用する場合は、含有量の表示が重要であり、別途栄養成分として取り扱うことが適当とされる。
栄養強化目的以外で使用する場合は、他の食品添加物と同様に取り扱う。
1-2. 食品表示基準における規定
・ 食品表示基準第3条第1項により、栄養強化目的で使用した食品添加物は表示が不要とされている(特別用途食品及び機能性表示食品を除く)。ただし、食品表示基準別表第4に規定する食品は表示が必要とされている。
1-3. 栄養強化目的で使用された添加物の範囲
・ 食品衛生法施行規則別表第1に掲げる添加物のうち、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、既存添加物及び一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用されるもののうち強化剤用途で使用するものが対象。
1-4. 食品添加物表示制度に関する検討会
・ 検討会では、食品添加物表示制度の在り方や無添加表示のガイドライン策定、栄養強化目的で使用した添加物の表示方法などが議論された。消費者の誤認を防止するため、「人工」「合成」の用語を削除する方向で検討する。
1-5. 消費者意向調査
主な意見は次の通り;
・ 消費者の半数以上が栄養強化目的で使用した添加物の表示を望んでいる。
・ 表示がないと栄養成分表を見たときに誤解を招く可能性があるため、表示を求める声が多い。
1-6. 実態調査
・ 栄養強化目的で使用した食品添加物を含む加工食品を取り扱っている事業者の多くが、表示を省略していない。
表示を省略している理由として、表示面積の不足や納品先からの要求がないことが挙げられている。
1-7. 食品表示基準の改正案
・ 一般用加工食品の横断的義務表示における添加物の免除規定から、栄養強化目的で使用されるものに関する記述を削除する。そして、栄養強化目的で使用された添加物も表示が必要となる。
審議では、栄養強化目的で使用した添加物の表示について消費者庁代表から詳細な説明があった。ビタミンやミネラルなどの栄養強化目的で使用される添加物について、消費者がその含有量を正確に把握できるようにする必要があることにも言及し、消費者が健康を意識した選択を行いやすくなることが期待される。
表示方法についても、消費者にとって分かりやすい形式を検討することが求められており、栄養強化目的で使用された添加物の表示を義務付けることで、消費者が製品の栄養価を正確に理解できるようにする。さらに、表示のフォーマットや位置についても検討が進められており、消費者が容易に情報を確認できるような工夫が求められる。
2. 栄養成分表示に関する改正案について
2-1. 栄養成分表示の概要
栄養成分表示は、1食分、100g、100ml、1個当たりなどの単位で表示され、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量が義務表示項目であり、そしてミネラル(カルシウム、鉄など)、ビタミン(ビタミンA、ビタミンCなど)、n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸、コレステロール、糖質及び糖類は任意表示項目である。
2-2. 改正案の概要
別表第9・・・ 食物繊維の許容差の範囲の見直し、ビタミンB群の測定法の追加
別表第10・・・ 日本人の食事摂取基準(2025年版)に基づく栄養素等表示基準値の見直し
別表第12・・・ 栄養素等表示基準値の見直しに伴う、栄養成分の補給ができる旨の表示の基準値の見直し
2-3. 許容差の範囲と測定方法
栄養成分の表示値は、食品表示基準で定められた方法で得られた値が許容差の範囲内にある必要がある。例えば、熱量の許容差は±20%であり、表示された値が80〜120kcalの範囲内であることが要求される。
2-4. 栄養成分の測定及び算出の方法
食品表示基準別表第9に規定されている栄養成分の測定及び算出の方法を改正する。具体的には、ビタミンB群における高速液体クロマトグラフ法の追加や、食物繊維の許容差の見直し。
2-5. 栄養素等表示基準値の改正
栄養素等表示基準値は、2025年版の食事摂取基準に基づいて、18歳以上の性別及び年齢階級別の栄養素の基準値を加重平均する算出方法に改正する。
2-6. 栄養強調表示
栄養強調表示(低カロリー、減塩など)を行う場合、強調する成分について合理的な推定による表示はできないこととし、栄養成分の補給ができる旨の表示や、低減された旨の表示についても基準値を見直す。
2-7. FOPNL(包装前面栄養表示)ガイドライン
コーデックス委員会において、FOPNLに関するガイドラインが承認され、国内の法律に沿って任意または義務とする日本版FOPNLの基本的な方向性について検討を進める。
栄養成分表示の改正案では、食物繊維の許容差の範囲やビタミンB群の測定法の追加が提案された。具体的には、食物繊維の許容差の範囲を見直し、低含有量の場合の試験室間誤差を考慮した新たな基準を設けることが検討されている。また、日本人の食事摂取基準(2025年版)に基づく栄養素等表示基準値の見直しも含まれており、これにより消費者がより正確な栄養情報を得られるようになる。さらに、栄養成分の補給ができる旨の表示基準値も見直される予定である。
3. 個別品目の表示のルールの見直しについて
個別品目ごとの表示ルールの見直しについては、横断的な基準に合わせる方向で進められている。食品ごとの個別の事情や消費者の要望を踏まえながら、表示基準が妥当であるかどうかを定期的に確認することが検討されている。具体的には、JAS規格に基づく表示基準が策定されてから本格的な見直しが行われていないため、関係する業界団体からヒアリングを実施し、ルールの要否及び改正の必要性について検討する。これにより、消費者が誤解しないような明確な表示が実現されることが期待される。また、表示基準の見直しにより、消費者がより正確な情報を得られるようになり、食品選択の際の安心感が高まる。さらに、デジタルツールを活用した情報提供の充実も検討されており、消費者が容易に情報を確認できるような工夫が求められている。これにより、消費者の利便性が向上し、食品表示の透明性が高まることが期待される。
詳しい情報は、「【資料4】 個別品目の表示のルールの見直しについて」をご確認ください。
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/250130_shiryou4.pdf
4. パブリックコメントで寄せられた主な意見
パブリックコメントでは、多くの消費者から意見が寄せられている。主な意見としては、アレルギー表示の強化や原産地表示の明確化、食品添加物の表示基準の厳格化が求められている。また、消費者が誤解しないような明確な表示方法の導入や、デジタルツールを活用した情報提供の充実が求められている。これらの意見を踏まえ、今後の食品表示基準の改正が進められる予定である。具体的には、アレルギー物質の表示方法の改善や、原産地表示の詳細化が検討されており、消費者が安心して食品を選べるような環境が整備される。また、食品添加物の表示基準の厳格化により、消費者が健康を意識した選択を行いやすくなることが期待される。さらに、デジタルツールを活用した情報提供の充実により、消費者が容易に情報を確認できるような工夫が求められている。これにより、消費者の利便性が向上し、食品表示の透明性が高まることが期待される。
詳細は<一次情報>からご確認ください。
<まとめ>
今回の審議では、栄養強化目的で使用した添加物の表示と栄養成分表示の改正案について議論されました。栄養強化目的で使用される添加物は、消費者がその含有量を正確に把握できるように表示が義務付けられることが提案され、栄養成分表示には、許容差の範囲や測定法の追加、栄養素等表示基準値の見直しが含まれています。
今後の展望として、改正案が施行されることで、消費者の健康維持・増進に大きく寄与することが期待されます。栄養成分表示の精度向上によって、消費者による合理的食品選択や誤解のない明確な表示の実現が促進します。さらに、デジタルツールを活用した情報提供の充実により、消費者が容易に情報を確認できるような工夫が求められ、消費者の利便性が向上し、食品表示の透明性が高まることが見込まれます。
<配布資料>
議事次第
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/250130_gijishidai.pdf
【資料1】 内閣府令案 新旧対照条文
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/250130_shiryou1.pdf
【資料2】 栄養強化目的で使用した添加物の表示について
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/250130_shiryou2.pdf
【資料3】 栄養成分表示に関する改正案について
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/250130_shiryou3.pdf
【資料4】 個別品目の表示のルールの見直しについて
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/250130_shiryou4.pdf
【資料5】 パブリックコメントで寄せられた主な意見
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/250130_shiryou5.pdf
【参考資料1】 諮問書(令和6年12月25日付 消食表第1165号)
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/250130_sankou1.pdf
【参考資料2】 改正事項の概要
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/250130_sankou2.pdf
<一次情報>
第76回 食品表示部会
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/bukai/076/shiryou/index.html
第76回 食品表示部会の開催について
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/bukai/076/kaisai/index.html
<関連資料>
https://note.com/fir_institute/n/nf67f7929788a
<動画配信>
https://www.youtube.com/watch?v=VIDe-JAapEY
※ 内閣府消費者委員会第74回食品表示部会のオンライン配信です。
※ 本動画は会議終了後もしばらく掲載し、後日削除します(議事録掲載まで配信の予定)。
■内閣府消費者委員会公式YouTubeによる動画配信について■
※以下のWEBリンク先から内閣府消費者委員会公式YouTubeにアクセスいただき、「ライブ」をクリックいただきますと「【内閣府消費者委員会】第74回食品表示部会」の配信ページがございます。
「内閣府消費者委員会公式YouTube」について(https://www.cao.go.jp/consumer/sns/youtube.html)
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