保健機能食品等に関する説明会 概要
保健機能食品等に関する説明会 概要(本文5,449文字)
消費者庁は、保健機能食品等に関わる業界団体へ適宜説明会を実施しており、今般令和6年12月26日に「保健機能食品等に関する説明会」を開催しました。概要をご案内します。
<議事>
1. 消費者庁からの説明
1-1, 機能性表示食品の説明資料(案)について(資料1)
1-2. 特定保健用食品の次長通知の一部改正について(資料2)
1-3. 特別用途食品の内閣府令・次長通知の一部改正について(資料3)
1-4. 栄養成分表示の内閣府令改正案について(資料4)
2, 農林水産省から関係団体に対して「食料・農業・農村基本計画」の改定に向けた状況について、情報提供
3. 消費者庁から関係団体に対して、参考資料「紅麹関連製品への対応に関する関係閣僚会合」の取りまとめの対応状況について説明
<議事概要>
1. 消費者庁からの説明
1-1. 機能性表示食品の説明資料(案)について
1-1-1. 錠剤・カプセル剤等食品に関する「フローチャート」(案)について
内閣総理大臣が定める基準に従い、天然抽出物等を原材料とする錠剤やカプセル剤などの加工食品の生産・製造および品質管理の体制を記載した資料を提出する必要がある。特に、天然抽出物等を原材料とする場合、基準を遵守することが求められる。
食品表示基準は令和6年内閣府令第71号による改正後のものであり、商品名や食品の区分を記載した資料の提出が必要である。また、届出に係る食品の製造施設および従業員の衛生管理が基準に即していることも求められる。
GMP(適正製造規範)による管理が必要な理由として、精製や濃縮された特定成分を含む食品は過剰摂取による健康被害の可能性が高いため、厳格な品質管理が求められる。一方で、成分割合が天然と異ならない食品や、全てを摂取しても成分量が天然と同程度である食品は、過剰摂取のリスクが低いため、一般の食品以上の品質管理は必ずしも必要ではない。
フローチャートでは、錠剤やカプセル剤形状であるか、原材料や成分割合に基づき、届出が必要かどうかを判断するプロセスが示されている。具体例として、みかんジュースやヨーグルト、青汁(粉末)、チョコレート、ラムネ菓子などが挙げられ、それぞれの合理的な理由に基づき、届出が不要と判断される場合がある。
1-1-2. 容器包装上の表示の在り方(案)について
加工食品の表示方式について、機能性表示食品である旨を容器包装の主要面の上部に枠で囲んで表示することが求められる。また、届出番号は機能性表示食品の表示に近接した箇所に表示する必要がある。
科学的根拠を有する機能性関与成分については、その名称と機能性を科学的根拠に基づいて表示し、報告されている旨を的確に示す文言を表示することが求められる。さらに、機能性および安全性について国による評価を受けていない旨を明確に表示し、消費者庁のウェブサイトで確認できることを示す必要がある。
表示方法の見直しにより、消費者が適切な商品を選択できるようにするため、表示形式および表示位置の統一が図られている。具体的には、「機能性表示食品」である旨を上部に枠で囲んで表示し、届出番号を近接した位置に表示することが求められる。また、最終製品による臨床試験を行っていない場合は、機能性関与成分が有する機能性について報告されている旨を的確に記載する必要がある。
1-1-3. 専門家に意見を聴く仕組みについて(案)について
令和6年5月31日の関係閣僚会合で取りまとめられた対応策に基づき、消費者庁は特定の届出資料について、医学や薬学等の専門家の意見を聴く仕組みを導入することとなった。
この仕組みは、特に新規の機能性関与成分や、複数の既存成分の新しい組合せに関する届出が対象となる。専門家は、届出資料に記載された医薬品との相互作用や、機能性関与成分同士の相互作用が適切に表示されているかを確認する。また、必要に応じて安全性や機能性に関する助言も行う。
運用開始は令和7年4月1日を予定しており、届出資料の確認期間は通常の60営業日から120営業日に延長される場合がある。この場合、消費者庁長官が認めた場合に限り、届出者に通知される。専門家の意見を聴く仕組みは、会議体ではなく個別に意見を聴く形式で運用され、専門家の構成や経歴は非公表とされる。
1-1-4. 科学的根拠の質の向上について(案)について
令和6年5月31日の関係閣僚会合で、PRISMA2020の準拠を令和7年4月からの新規届出に導入することが決定された。これにより、科学的根拠の質を向上させるための具体的な対応策が示されている。
まず、PRISMA声明2020の内容を告示に記載し、システマティックレビュー(SR)の透明性と正確性を確保する。また、届出者が臨床試験公開データベースの事前登録後に正規の手続きを踏まずに変更を行わないようにするための規定が追加される。さらに、論文の投稿先についても透明性が高い雑誌を選ぶよう努めることが求められる。
科学的根拠の評価資料として、新たに別紙様式(Ⅴ)-1-2と(Ⅴ)-17が作成され、既存の様式(Ⅴ)-6の記載が明確化される。これにより、SR作成者と届出者の関与が明確化され、資料の信頼性が向上する。
具体的には、SR作成者が作成する資料と届出者が作成する資料を分割し、各資料への関与者を明確にする。これにより、届出者が内容に手を加えることができる範囲が限定され、科学的根拠の質が保たれる。
1-1-5. 遵守の状況等の自己点検及び評価に関するチェックリスト(案)について
このチェックリストは、食品表示基準に基づき、各項目について適切に点検し、評価を行うことを目的としている。
まず、機能性関与成分の安全性について新たな知見が得られた場合、その内容を消費者庁長官に報告することが求められる。また、機能性について評価に変更が生じる新たな知見が得られた場合も同様に報告する必要がある。これにより、最新の科学的知見に基づいた適切な情報提供が確保される。
次に、生産・製造および品質の管理に関する事項として、製造施設および従業員の衛生管理が基準に即していることを確認する。また、機能性関与成分を含有する原材料の規格書等を適切に保管し、定期的に試験検査を実施することが求められる。これにより、製品の品質と安全性が維持される。
さらに、健康被害の情報収集および提供に関する事項として、医師の診断を受けた健康被害に関する情報を収集し、必要に応じて速やかに情報提供を行うことが求められる。また、消費者や医療従事者から得た健康被害情報についても適切に対応することが重要である。
1-1-6. 機能性表示食品の届出等に係る告示(案)作成の基本的な考え方(案)について
告示(案)は、条文、各様式および記載要領の構成とし、現行の「機能性表示食品の届出等に関するマニュアル」と同様の並びとする。記載要領は、マニュアルに記載されている内容に沿って、各様式に具体的に何を記載するかを示す。また、現在運用されている「機能性表示食品に関する質疑応答集」の一部も告示(案)に規定される予定である。
有効性の信頼確保の観点から、PRISMA声明2020への準拠を届出様式の中で規定し、年1回の遵守事項の自己点検に関するチェックリストを規定する。また、「錠剤、カプセル剤等食品の原材料の安全性に関する自主点検および製品設計に関する指針」についても、遵守事項の報告様式の中で「努めること」として規定される。
この見直しにより、容器包装への表示の切替え等への影響は想定されず、内閣府令の届出に係る規定等の施行日である令和7年4月1日に合わせて施行される予定である。
なお、機能性表示食品の届出等に係る告示(案)については、1月以降にパブリックコメントを行った上で、年度内に公布予定とされている。
1-2. 特定保健用食品の次長通知の一部改正について
特定保健用食品の表示許可等に関する一部改正では、GMPの要件化により、新規機能性関与成分の安全性や機能性確認が強化される。専門家の意見を聴く仕組みや、届出後の定期的な自己評価・公表が導入される。また、PRISMA2020の準拠が令和7年4月から新規届出に適用される。
疾病リスク低減表示制度の見直しでは、カルシウムや葉酸などの関与成分について、科学的根拠に基づいた表示が求められる。健康被害の情報提供が義務化され、消費者庁や都道府県知事への情報提供が必須となる。
これらの改正により、消費者が安心して利用できるよう、製品の品質と安全性が確保される。施行日は令和7年4月1日を予定している。
1-3. 特別用途食品の内閣府令・次長通知の一部改正について
内閣府令の改正では、許可対象となる許可区分に応じた必要的表示事項を内閣府令に規定することが主な内容である。これにより、法的根拠が明確化され、製品の誤認使用による健康影響を防ぐことが目的である。具体的には、低たんぱく質食品やアレルゲン除去食品などの許可区分ごとに、規格や表示事項が詳細に定められている。
次に、経口補水液に関する規定が強化される。経口補水液は、脱水状態時に使用されるが、誤認使用による健康リスクが高いため、販売方法に関する留意事項が追加された。これには、実店舗やインターネット販売、自動販売機での販売方法が含まれ、消費者が適切に使用できるようにするための措置が求められる。
また、必要的表示事項を消費者に認識させるための資料提出が義務付けられる。これにより、消費者が製品の使用方法や注意事項を正しく理解し、適切に使用できるようになる。
この経口補水液に関する規定は令和7年6月1日から施行される予定である。
1-4. 栄養成分表示の内閣府令改正案について(資料4)
提案されている主な改正点は次の通り。まず、食物繊維の許容差の範囲が見直される。低含有量の場合、大きな試験室間誤差が生じるため、許容差の範囲を改正し、0と表示できる量の規定を追加する。また、ビタミンB群における測定法として、高速液体クロマトグラフ法が追加される。
次に、日本人の食事摂取基準(2025年版)の公表を踏まえ、栄養素等表示基準値が見直される。これにより、最新の基準に基づいた正確な栄養成分表示が可能となる。また、栄養素等表示基準値の見直しに伴い、栄養成分の補給ができる旨の表示の基準値も改正される。
さらに、分かりやすい栄養成分表示の取組として、日本版FOPNL(包装前面栄養表示)の基本的な方向性が検討されている。これには、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムの表示が含まれ、栄養素等表示基準値に占める割合も表示される。
この改正案の施行日は2024年12月を予定している。
2, 農林水産省から関係団体に対して「食料・農業・農村基本計画」の改定に向けた状況について、情報提供
※ <関連情報>の、「食料・農業・農村政策審議会企画部会」の記事を参照ください。
3. 消費者庁から関係団体に対して、参考資料「紅麹関連製品への対応に関する関係閣僚会合」の取りまとめの対応状況について説明
【消費者庁】「機能性表示食品の今後について」からスライド12「紅麹関連製品による健康被害を踏まえた対応」、Ⅲ 今回の事案を踏まえた更なる検討課題を抜粋
紅麹関連製品による健康被害を受け、機能性表示食品制度の信頼性向上のため、具体的な対応策が講じられている。まず、GMPの要件化が実施され、機能性表示を行うサプリメントはGMPに基づく製造管理が義務付けられている。届出者は自主点検を行い、消費者庁が立入検査を実施する。また、新規の機能性関与成分の安全性や機能性確認を強化するため、専門家の意見を聴く仕組みが導入され、製品の品質と安全性が確保される。
次に、健康被害の情報提供が義務化される。事業者は健康被害と疑われる情報を収集し、消費者庁長官や都道府県知事に提供することが義務付けられ、重篤度に応じた明確なルールが設けられる。これにより迅速な対応が可能となり、消費者の安全が確保される。
さらに、食品表示基準の改正が行われ、PRISMA2020の準拠が新規届出に導入される。届出後の定期的な自己評価や公表も義務付けられ、信頼性の向上が図られる。また、特定保健用食品(トクホ)との違いや表示方法の見直しも行われ、消費者が製品の特性を正確に理解できるようになる。
健康被害の原因究明については、紅麹関連製品に含まれる化合物の調査が進められ、必要に応じて食品衛生法上の規格基準の策定や衛生管理措置の徹底が検討される。具体的には、紅麹製品に含まれるプベルル酸やその他の化合物が腎障害を引き起こす可能性があるため、これらの成分の影響を詳細に調査する。
なお、関係団体から「Ⅲ 今回の事案を踏まえた更なる検討課題」の一つ(機能性表示食品制度に対する信頼回復に向けた届出者による表示の適正化等の自主的な取組)に関する報告があり、「サプリメント摂取による体調変化に関する申し出対応マニュアル」の見直しや「機能性表示食品適正広告自主基準」の見直し、機能性表示食品に係る「公正競争規約(案)」の策定が進められている旨の報告があった。
<展望>
機能性表示食品に関する新たな規制強化が進められていきます。まず、GMPの要件化によって製造管理が厳格化され、過剰摂取による健康被害のリスクが低減されます。また専門家の意見を聴く仕組みの導入により、新規成分や複数成分の組み合わせに対する安全性と機能性の確認が強化されます。さらにPRISMA2020の準拠により科学的根拠の質が向上し、消費者が信頼できる情報を得られるようになります。これらの改正により、消費者が安心して機能性表示食品を利用できる環境の整備が期待されます。
※詳しくは<一次情報>からご確認ください。
<資料>
00_保健機能食品等に関する説明会議事次第
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/assets/food_labeling_cms206_241226_01.pdf
01_【資料1-1】錠剤・カプセル剤等食品に関する「フローチャート」(案)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/assets/food_labeling_cms206_241226_02.pdf
02_【資料1-2】容器包装上の表示の在り方(案)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/assets/food_labeling_cms206_241226_03.pdf
03_【資料1-3】専門家に意見を聴く仕組みについて(案)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/assets/food_labeling_cms206_241226_04.pdf
04_【資料1-4】科学的根拠の質の向上について(案)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/assets/food_labeling_cms206_241226_05.pdf
05_【資料1-5】遵守の状況等の自己点検及び評価に関するチェックリスト(案)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/assets/food_labeling_cms206_241226_06.pdf
06_【資料1-6】機能性表示食品の届出等に係る告示(案)作成の基本的な考え方(案)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/assets/food_labeling_cms206_241226_07.pdf
07_【資料2】「特定保健用食品の表示許可等について」の一部改正について~GMPの要件化と疾病リスク低減表示制度の一部見直しについて~
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/assets/food_labeling_cms206_241226_08.pdf
08_【資料3】特別用途表示の許可等に関する内閣府令・次長通知の一部改正について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/assets/food_labeling_cms206_241226_09.pdf
09_【資料4】栄養成分表示に関する改正案について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/assets/food_labeling_cms206_241226_10.pdf
10_【参考資料】「紅麹関連製品に係る事案を受けた機能性表示食品制度等に関する今後の対応」(内閣官房HPより抜粋)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/assets/food_labeling_cms206_241226_11.pdf
議事概要
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/assets/food_labeling_cms206_241226_12.pdf
<一次情報>
保健機能食品等に関する説明会について(2024年12月26日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/
<関連情報>
機能性表示食品の今後について
https://www.caa.go.jp/notice/assets/food_labeling_cms201_240823_01.pdf