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【安全性評価基準】遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物について

【安全性評価基準】遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物について(本文3,321文字)
 
食品安全委員会遺伝子組換え食品等専門調査会は、令和6年6月25日付にて「遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物に関する食品健康影響評価指針(令和6年6月25日一部改正)」を安全性評価基準として公表しました。
またこれにあわせて、同日付にて「遺伝子組換え食品(種子植物)に関する食品健康影響評価指針(令和6年6月25日一部改正)」と6月28日付にて「遺伝子組換え食品(種子植物)の食品健康影響評価に関する技術的文書(令和6年6月28日遺伝子組換え食品等専門調査会決定)」を公表しています。
 
~ 食品健康影響評価指針の概要 ~
■第1章 総則■
 
<第1 評価指針作成に至る背景>
食品安全委員会(以下「委員会」)は、「食品安全基本法第21条第1項」に基づき、食品健康影響評価の公平性・透明性を確保するための指針を策定してきた。遺伝子組換え食品等については、平成3年に厚生省が「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」を作成し、平成13年から法的に安全性審査が義務付けた。平成15年の食品安全基本法施行により、評価は厚生労働省から委員会に移管され、平成16年に「遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物の安全性評価基準」が策定された。最新の科学的知見を基に評価基準を見直し、今後はこの指針に基づいて評価する。
 
<第2 目的及び対象となる添加物>
本指針は、評価方法の整合性と透明性を確保し、遺伝子組換え添加物の安全性を評価することを目的としている。対象となる添加物は、食品衛生法で認められた範囲内で、特定の条件を満たすものに限る。評価は、添加物の製造方法や使用形態に応じてケースバイケースで実施するものとする。
 
<第3 本指針に用いる用語>
本指針中で用いる専門用語については、食品安全委員会が作成した「食品の安全性に関する用語集」を参照のこと。
 
<第4 遺伝子組換え添加物の食品健康影響評価に際しての原則と基本的な考え方>
遺伝子組換え添加物は、遺伝子組換え体そのままを食する遺伝子組換え食品とは異なり、最終産物としての添加物製品の食品健康影響評価を行う。製造に用いられる宿主の安全性確認や、遺伝子組換え添加物の有効成分と非有効成分の安全性確認が重要。また、非意図的に混入する夾雑物等の非有効成分についても考慮する必要がある。添加物の性質や用途、製法等が多岐にわたるため、ケースバイケースで評価する。
以上のような原則に立って、以下の基本的な考え方に従って、評価を行う。
1. 評価範囲: 添加物製造への利用経験や食品としての食経験のある非病原性の宿主に由来する遺伝子組換え体の利用に限る。
2. 安全性評価: 組換えDNA技術による全ての形質変化がヒトの健康に有害影響を与えないことを確認する。栄養阻害物質、内因性毒素、アレルギー誘発性物質などが考慮されるものとする。
3. 評価の重点: 遺伝子組換え添加物の精製度、使用形態、非意図的に混入する夾雑物等の非有効成分も含めた食品中での残存等を考慮し、製品毎に評価する。
4. 抗生物質耐性マーカー: 現在使用されている耐性遺伝子等の安全性は評価済だが、今後は抗生物質耐性マーカー遺伝子を用いない技術の利用も考慮されるものとする。
5. 試験の実施: 科学的に信頼できる概念及び原則に従い、必要に応じGLP(Good Laboratory Practice)に従って試験を計画・実施する。原データは要求に応じて提出されるべきである。
 
<第5 指針の見直し>
組換えDNA技術は日々進歩しており、本指針も国内外の動向や最新の科学的知見を考慮し、必要に応じて見直すものとする。
 
 
■第2章 遺伝子組換え添加物に関する食品健康影響評価で確認する事項■
 
<第1 評価対象品目の概要>
評価対象品目に関する開発の経緯及び次の第2から第7までの概要が説明されていること。
 
<第2 食品健康影響評価において比較対象として用いる添加物、宿主等の性質並びに遺伝子組換え添加物及び遺伝子組換え体との相違に関する事項>
次の1から5の事項の概略が示され、その中で①から③までの事項が明確であること。
① 遺伝子組換え添加物の食品健康影響評価を行う上で必要とされる比較対象として、食品衛生法で認められている添加物が存在すること。なお、食品用酵素においては、比較対象となる酵素と類似の反応を触媒すること
② 製造に用いられる遺伝子組換え体の由来となる宿主の性質
③ 遺伝子組換え添加物と従来の添加物及び遺伝子組換え体と宿主等の相違点
1. 従来の添加物の性質、用途等: 名称、基原、有効成分、製造方法、用途、使用形態、摂取量
2. 宿主に関する事項: 種名、株名、由来、利用経験、構成成分、寄生性、外来因子、近縁株の病原性、宿主は非病原性であること、有害生理活性物質や栄養阻害物質の種類、作用、量、必要に応じてアレルギー誘発性に関する知見
3. 挿入DNAに関する事項: 供与体の種名、株名、由来、性質、導入方法
4. 遺伝子組換え添加物の性質、用途等: 製品名、有効成分、製造方法、用途、使用形態、推定摂取量、有効成分の比較、食品用酵素の場合、製造過程での変性・失活や分解・除去も考慮
5. 相違点の検討: 遺伝子組換え添加物と従来の添加物、遺伝子組換え体と宿主の相違点
 
<第3 遺伝子導入に用いる塩基配列に関する事項>
1. プラスミド等のベクターの名称、由来、有害性の有無
2. ベクターの塩基数、塩基配列、既知の有害塩基配列の有無、選抜遺伝子の性質、伝達性、宿主依存性、既知の有害塩基配列を含まないこと、伝達性がないこと
3. 挿入DNAの病原性、毒素産生性、安全な食経験の有無、供与体は病原性や毒素産生性がないこと
4. 導入遺伝子及び遺伝子産物機能、有害作用の有無、特に食品用酵素として使用される場合、毒性やアレルギー誘発性の有無
5. 発現に関わるプロモーター、ターミネーター、発現制御塩基配列
6. 挿入DNAのクローニング、組込方法、宿主へ導入するコンストラクトの作製方法や順序
7. 構築されたコンストラクトに関する事項
7-1.塩基数及び塩基配列並びに制限酵素による切断地図に関する事項、挿入DNAの塩基数及び塩基配列、当該コンストラクトに対してサザンブロッティングを行った場合には、制限酵素の名称、断片の数、サイズなど
7-2. 宿主に対して用いる導入方法において、意図する挿入領域がコンストラクト上で明らかであること。
7-3. 導入しようとするコンストラクトは、目的外の遺伝子が混入しないよう純化されていること。
 
<第4 遺伝子組換え体に関する事項>
1. 宿主との差異: 非病原性及び有害生理活性物質の非生産に関する差異、安全性に問題がないこと
2. 遺伝子導入: コピー数、挿入近傍配列、ORFの有無、転写及び発現の可能性、挿入された遺伝子の構造とコピー数、近傍のDNA配列
3. 選抜遺伝子の安全性: 構造、機能、基質特異性、抗生物質耐性マーカー遺伝子の使用状況や耐性発現の機序
4. 遺伝子産物のアレルギー誘発性: アレルギー誘発性に関する知見、物理化学的処理や既知のアレルゲンとの構造相同性
 
<第5 遺伝子組換え体以外の製造原料及び製造器材に関する事項>
1. 添加物の製造原料又は製造器材としての使用実績
2. 添加物の製造原料又は製造器材としての安全性について知見
3. 1及び2について確認できない場合、食品又は添加物の製造原料又は製造器材についての安全性
 
<第6 遺伝子組換え添加物に関する事項>
1. 諸外国における認可状況、食用等に関する情報
2. 遺伝子組換え体の残存の有無がドットブロットハイブリダイゼーション法等の適切な試験により確認されていること
3. 非有効成分の含有量、安全性、従来の添加物に比べ有意に増加していないこと、従来の添加物には存在しない非有効成分を含有しないこと。安全性に問題がないと合理的な理由
4. 精製方法、効果、有害物質の予測、安全性上問題がない合理的な理由
5. 常成分の濃度変動が従来の添加物と同等であること。仮に変動があっても、安全性上問題がない合理的な理由
 
<第7 第2から第6までの事項により安全性の知見が得られていない場合に必要な事項>
次のうち、必要と考えられる試験成績に基づき、添加物としての安全性が確認できること。
1. 遺伝毒性試験
2. 反復投与毒性試験
3. 発がん性試験
4. 生殖毒性試験
5. 発生毒性試験
6. その他必要な試験
7. ヒトにおける知見
 
 
 
<一次情報>
【食品安全委員会】遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物に関する食品健康影響評価指針(令和6年6月25日一部改正)
https://www.fsc.go.jp/senmon/idensi/index.data/gm_foodadditive_shishin.pdf
  
<関連資料>
【食品安全委員会】遺伝子組換え食品(種子植物)に関する食品健康影響評価指針(令和6年6月25日一部改正)
https://www.fsc.go.jp/senmon/idensi/index.data/gm_crop_shishin.pdf
【食品安全委員会】遺伝子組換え食品(種子植物)の食品健康影響評価に関する技術的文書(令和6年6月28日遺伝子組換え食品等専門調査会決定)
https://www.fsc.go.jp/senmon/idensi/index.data/gm_crop_technicaldoc.pdf
 

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