令和6年度第2回食品衛生基準審議会添加物部会 概要
令和6年度第2回食品衛生基準審議会添加物部会 概要(本文2,855文字)
1. はじめに
消費者庁は、令和6年11月28日に「令和6年度第2回食品衛生基準審議会添加物部会」を開催しました。
本部会は、食品衛生の規格基準業務が厚生労働省から消費者庁に移管されたことに伴い、新たに設置された部会として、食品添加物の規格基準の改正や新規設定について審議します。専門家の意見を取り入れながら、今後も食品衛生に関する規格基準の策定を進めていきます。
2. 議題
2-1. 審議事項
2-1-1. 食品添加物の規格基準の設定等について
2-1-1-1, ゴム及び単糖・アミノ酸複合物の規格基準設定について
2-1-1-2. シクロデキストリンの規格基準改正について
2-2. 報告事項
2-2-1. 既存添加物の安全性の確認について
2-2-2. 令和5年度マーケットバスケット方式による保存料等の摂取量調査の結果について
2-2-3. WHOの非糖質甘味料の使用に関するガイドラインと国内における摂取量推計について
3. 議事概要
3-1. 審議事項
3-1-1. 食品添加物の規格基準の設定等について
3-1-1-1, 告示の改正の経緯
・ 添加物2品目(ゴムおよび単糖・アミノ酸複合物)の成分規格設定と、1品目(シクロデキストリン)の成分規格改正案が検討された。
・ 検討会で結論が得られたため、意見募集や食品安全委員会への評価依頼が進められた。
3-1-1-2. 告示の改正案の概要
・ 既存添加物「ゴム」および「単糖・アミノ酸複合物」の成分規格を新たに設定。
・ 既存添加物「シクロデキストリン」の成分規格を改正し、液体品の分岐シクロデキストリンの規格を設定。
3-1-1-3. 食品安全委員会における評価結果
改正案について、食品安全基本法に基づき食品安全委員会に意見を求めた。委員会は、成分規格の設定および改正が人の健康に悪影響を及ぼすおそれがないと評価した。既存添加物「ゴム」および「単糖・アミノ酸複合物」の成分規格設定は、流通品の分析結果や既存添加物自主規格を踏まえたものであり、品質がより確保されるとされた。また、既存添加物「シクロデキストリン」の成分規格改正は、液体品の分岐シクロデキストリンの成分規格を新たに設定することで、品質がより確保されると評価された。これらの成分規格の設定および改正により、人の健康に悪影響を及ぼすおそれはないと結論付けられた。
3-1-1-4. 最終結論
法第13条第1項の規定に基づく規格基準の改正が適当であると結論付けられた。
3-1-1-5. 既存添加物の成分規格案
食品安全委員会は内閣総理大臣に食品健康影響評価の結果を答申し、第11版食品添加物公定書の改訂時に新規収載品目として、「ゴム」、「単糖・アミノ酸複合物」、および「シクロデキストリン(分岐シクロデキストリン)」の成分規格案を決定した(詳細は【資料1-4】第11版食品添加物公定書作成検討会(第2回)報告書を参照)。
3-1-2. 「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(案)」(添加物(シクロデキストリン等3品目)に係る規格基準の設定及び改正)に関する意見
3-1-2-1. 意見の概要
「単糖・アミノ酸複合物」に関して、原料や製造条件による成分組成の変動とその毒性の変化の可能性に着目し、適切な毒性試験に基づいた安全性確認の重要性を指摘。現行の成分規格案では、窒素含量や性状、確認試験が規定されているが、原料や製造条件の制限がないため、有害なメイラード反応生成物(MRP)の排除や低減が不十分であると懸念がある。特にアクリルアミドのような遺伝毒性発がん物質の混在を防ぐための規定が必要であると提案。近藤委員は、科学的根拠に基づいた成分規格の提案を求めており、食品安全委員会の評価や農林水産省の施策に呼応する形で、アクリルアミドの低減に努めるべきであるとしている。
3-1-2-2. 提出された意見についての検討
部会は、近藤委員の意見に対して慎重かつ前向きな態度を示した。特に「単糖・アミノ酸複合物」の成分組成の変動や毒性の変化についての懸念が共有され、適切な毒性試験の実施やメイラード反応生成物(MRP)の排除・低減の必要性が議論された。アクリルアミドの混在防止規定についても支持があり、科学的根拠に基づいた成分規格の提案が重要と認識された。
3-2. 報告事項
3-2-1. 既存添加物の安全性の確認について
既存添加物の安全性確認に関する報告が行われた。平成8年度の厚生科学研究報告書に基づき、既存添加物の基本的な安全性が評価され、国際的な評価結果や欧米での許認可状況、安全性試験成績結果などが考慮された。今回の報告では、特にオリゴガラクチュロン酸、キハダ抽出物、ペクチン分解物の3品目について検討が行われた。オリゴガラクチュロン酸は安全性に懸念がないとされたが、キハダ抽出物とペクチン分解物については、遺伝毒性試験の結果から変異原性の可能性が否定できず、追加の試験が必要とされた。
3-2-2. 令和5年度マーケットバスケット方式による保存料等の摂取量調査の結果について
令和5年度のマーケットバスケット方式による保存料等の摂取量調査の結果が報告された。この調査では、20歳以上の人々の喫食量に基づき、保存料、着色料、甘味料、製造用剤、結着剤、発色剤の一日摂取量が測定された。調査結果によると、ソルビン酸が最も高い摂取量を示し、次いで安息香酸が続いた。全体として、調査対象の添加物の摂取量は、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)や内閣府食品安全委員会が設定した許容一日摂取量(ADI)を大幅に下回っており、安全性に問題はないとされた。
3-2-3. WHOの非糖質甘味料の使用に関するガイドラインと国内における摂取量推計について
WHOの非糖質甘味料(NSS)の使用に関するガイドラインと国内における摂取量推計についての報告が行われた。2023年5月にWHOが発表したガイドラインでは、NSSの長期的な使用が体重減少や維持に有効であるかは不明であり、むしろ望ましくない影響の可能性が示唆されている。国内の摂取量推計では、NSSの摂取量がADIを大幅に下回っていることが確認され、現行の規格基準の見直しは不要と結論された。
次回の会議は、令和6年12月15日に開催予定とのことが事務局からアナウンスされた。
4. 議事・資料
議事次第
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_01.pdf
委員名簿
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_02.pdf
【資料1-1】諮問書(ゴム、単糖・アミノ酸複合物及びシクロデキストリン)
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_03.pdf
【資料1-2】食品添加物の規格基準の設定等に係る部会報告書(案)
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_04.pdf
【資料1-3】食品健康影響評価の結果の通知について(回答)
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_05.pdf
【資料1-4】第11版食品添加物公定書作成検討会(第2回)報告書
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_06.pdf
【資料1-5】「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(案)」(添加物(シクロデキストリン等3品目)に係る規格基準の設定及び改正)に関する意見(近藤委員提出資料)
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_07.pdf
【資料2-1】既存添加物の安全性確認について
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_08.pdf
【資料2-2】令和5年度既存添加物の安全性評価に関する調査研究
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_09.pdf
【資料2-3】既存添加物の安全性の確認状況
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_10.pdf
【資料3-1】令和5年度マーケットバスケット方式による保存料等の摂取量調査の結果について
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_11.pdf
【資料3-2】食品添加物一日摂取量調査について
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_12.pdf
【資料4】WHO非糖質甘味料の使用に関するガイドラインと国内における非糖質甘味料の摂取量推計について
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_13.pdf
【参考資料1】Use of non-sugar sweetners WHO gideline
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_14.pdf
【参考資料2】WHOのノンシュガー甘味料の使用に関するガイドラインを読む
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241127_15.pdf
<一次情報>
令和6年度第2回食品衛生基準審議会添加物部会(2024年11月28日)
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/review_meeting_002/040191.html
令和6年度第2回食品衛生基準審議会添加物部会の開催について
https://www.caa.go.jp/notice/entry/039962/
<関連情報>
令和6年度第1回食品衛生基準審議会添加物部会(2024年6月5日)
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/review_meeting_002/038019.html