シンポジウム「機能を持った新開発食品の安全性の考え方」 概要
シンポジウム「機能を持った新開発食品の安全性の考え方」 概要(本文2,282文字)
学校法人東京農業大学食品安全研究センター(FSRC、Food Safety Research Center)は、令和6年12月11日に同大学の総合研究所研究会である食の安全と安心部会に共催して、「機能を持った新開発食品の安全性の考え方」と題したシンポジウムを開催しました。
<開催概要>
令和6年度東京農業大学総合研究所研究会【食の安全と安心部会】第7回シンポジウム
「~機能を持った新開発食品の安全性の考え方~」
開催日時: 2024年12月11日(水)13時から
開催方式: ハイブリッド開催(会場とYouTubeによるオンライン)
会場: 東京農業大学世田谷キャンパス国際センター榎本ホール
<趣旨>
<演題>
1. 「機能性食品の安全性と効果」 食の信頼向上をめざす会代表・東京大学名誉教授 唐木英明 氏
2. 「機能性表示食品の今後について」 消費者庁食品表示課保健表示室 今川正紀 氏
3. 「わが国の健康食品の実態とその安全性の考え方」 吉祥寺二葉栄養調理専門職学校 梅垣敬三 氏
4. 「機能性乳酸菌の安全性評価について」 株式会社明治 田口智康 氏
<講演概要>
1. 機能性食品の安全性と効果
機能性食品、いわゆる健康食品による健康被害は、新規成分の高濃度摂取や意図的な混入が原因である。特に、勃起促進剤やステロイド剤の混入が問題視されている。紅麹サプリ事件は制度の欠陥ではなく、安全文化の不足が原因であり、製造工程管理の厳格化が求められる。機能性食品には消費者の強い支持があるが、その根拠は効果の実感に基づいている。
しかし、行政は機能性食品に関する説明を安全性に限定し、使用法や有効性、社会的意義についての言及が不足している。PRCT(プラセボ対照試験)の義務化は不適切であり、軽症ではプラセボとの有意差が得にくく、薬理作用が過小評価されることが問題である。
今後の方向性として、セルフメディケーションの重要なツールとしての機能性食品の社会的意義を明確にし、食品衛生法と食品表示法の改善、消費者教育の強化が求められる。特に、健康被害が多い健康食品に対する規制を可能にすることが重要である。また、トクホを始めとする機能性食品の制度を改善し、消費者が理解しやすい形にすることが必要である。
2. 機能性表示食品の今後について
機能性表示食品制度は、事業者が科学的根拠に基づき、食品の安全性と機能性に関する必要な事項を消費者庁長官に届け出ることで、機能性を表示できる制度である。特定保健用食品(トクホ)とは異なり、国が審査を行わないため、事業者は自らの責任で適正な表示を行う必要がある。令和6年3月に健康被害が報告され、消費者庁は制度の見直しを行った。改正内容には、健康被害情報の収集体制の整備、GMP基準の適用、表示方法の見直し、届出に関する事項の見直しが含まれる。これらの実施によって、消費者の信頼性を高めることをめざす。また、特定保健用食品についても同様の対応が必要であり、表示許可等の一部改正が行われた。その他、関連する改正について具体的に説明。
3. わが国の健康食品の実態とその安全性の考え方
健康食品は、健康維持・増進に特別に役立つことをうたって販売される食品や、そのような効果を期待して摂取される食品全般を指し、サプリメントも含まれる。これらの食品は形状や公的評価の有無、有効性や安全性の科学的根拠、製品としての品質がさまざまである。
安全性確保の課題として、食品形状の実態と安全性、成分・原材料の実態と安全性、利用対象者と健康被害の実態、安全性確保に求められる事項が挙げられる。特に、サプリメント形状の製品は医薬品と混同されやすく、誤認が健康被害につながる場合がある。市販後の有害事象の収集と分析が現実的な対応策の一つであり、消費者が製品の実態を正確に理解することが重要であると考える。
4. 機能性乳酸菌の安全性評価について
乳酸菌は古来より食品の発酵に利用されており、保存性の向上や風味、食感の付与、さらには健康効果が期待されている。ヨーグルトなどの発酵食品は健康的な食品として広く一般に認識されており、新規の乳酸菌を用いた製品の開発が進められている。
しかし、新規乳酸菌の安全性の保証と確保が重要であり、乳酸菌の安全性評価に関するガイドラインや指針、各国での手続きについて整備が必要である。さらに食品事業者は新規乳酸菌の安全性を自ら評価し、適切な利用を確保することが求められている。その他、実際の評価項目や有用なツール、情報源を紹介し、新規乳酸菌を用いた食品の製品化において注意すべき項目についても具体的に説明。
各講演は機能性食品の安全性と効果、制度の見直し、健康食品の実態と安全性、乳酸菌の安全性評価に関する重要な知見を提供しています。これらの知見は、消費者の健康を守るための制度改善や教育の必要性を指摘しており、今後の食品業界における安全性確保と信頼性向上に寄与するものです。消費者が安心して機能性食品を利用できる環境を整えるためには、制度の改善とともに、消費者教育の強化が不可欠とされます。
<一次情報>
【総研研究会】食の安全と安心部会 第7回シンポジウム/FSRC共催について
https://nodai-nri.jp/news/20241106_001
<関連情報>
食品安全(動画集)
https://www.nodai.ac.jp/fsrc/29501/