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賄い料理と、地球の裏側の料理を作るということ



オリーブオイルやワインやチーズなど、食品の価格が上がる一方の最近、イタリア郷土料理に入ってる物って意外と値が張るよなーって思う。
でもそれって現地ではとても安価な物なのが殆どだったりする。

で、ウチの賄いの話。
賄いって大抵は値段の安い物しか使っちゃいけない。でもそれだと「作る」っていうせっかく勉強になる行動をしてるのに一向に本質の方には行けない。
でもなんでも使って良いわけではないわけで…
せめてオーナーの自分が作る時はちょっと値が張る品も使わせてもらって、伝えたいことを料理にしている。
イタリアの郷土料理の知識は欠かせない。
その郷土料理ってやつは何を理解すれば良いのだろうか。単に美味しいとか、これとこれを使うっていう定義だけじゃ足りないと思っている。大事な事は風土であり、できれば歴史背景だ。
その地の風土があるからその食材と組み合わせが生まれたし、冷蔵庫が無かった頃と今では料理の内容もガラッと違う。

先日は鹿の煮込みとポレンタ
小松菜のパスタ
大根、人参、金柑、胡桃のサラダ
なんかを作った。

鹿の煮込みにはワインを。
ポレンタにはその他のチーズを。
パスタはコントレックスでボイル。

結構原価はする。
けれども風土を表現した料理には欠かせない。
何故か。
それは冷蔵庫が存在しなかった時代(この時代の方が長い)人々は食べる為に動物を飼い、肉には塩をして干して保存食としていた。ミルクも全く同じで、ミルク内のカゼインを凝固させ保存食にしたのがチーズ。
そうやって食というものを成り立たせていた。
だからその地の人はその地のチーズやオイル、ワイン、そして硬水である水も、どれもが「当たり前」で安価であった。
しかしどうだろう。
それらを地球の裏側まで運んでくるということは、沢山のエネルギーと人件費を費やし、高価なものへと変貌する。
そう、賄いでは使ってはいけない代物となる。
でもそれを使わなきゃ伝わらない料理がある。郷土料理は特にそうなのだ。何故ならそのチーズにもそのオイルにも意味があるからだ。

素晴らしきイタリアの風土と知恵が詰まった食材達…
イタリア料理とはなんと恵まれた食文化なのだろうか。
当たり前にある、チーズやオリーブオイル。ワインに生ハム。美味しい野菜の数々。

スタッフ達には賄いを通してイタリアでは「当たり前」であった物から郷土料理が生まれていてそれが今でも作られていて、そしてそれは風土を利用した先人達の知恵の形なんだということを感じてもらいたいと思っている。
例えば北イタリアの山岳地帯料理にオリーブはあまり入れたく無い。トマトも入れたく無い。たとえ好相性でもそれは何かの要素がたまたま良かっただけで、そういうことを「新しい」とも思わないし、伝えたいとも思わない。

お客様からは高価な品も使って郷土料理を作り、それなりの金額を頂戴しなければならない今だ。
という事は、サービスマンの知見の広さも大切だと思っている。

賄いでは面倒臭いくらいに説明をしている。

自分にできる数少ないことの一つだ。
出来るだけ一生懸命伝えたいと思っている。

しかし毎月の支払い請求書が怖くて仕方がない……(苦笑

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