コントロールを諦めれば自由になる
さて、昨日のお話(↓)に引き続いて、投資のような、人生論のようなお話です。
※すぐに「超難易度が高い」という声をいただいて、大幅改定したんですが、いかがでしょうか…(笑)
おさらいと自己客体化
昨日の記事では、私たちが論理だと思っているソレは、感情に対する理由の後付けであることが意外に多い。しかも無意識なので、本人すらその事実に気づいていない、という話をしました。
これに気付き対処するためには、自分を客観的に見ること(自己客体化といいます)が非常に大事なのですが、自分を客観的に見られるようにするためにとても重要な要素の一つに、
無意識のコントロール欲求を探し、気づき、諦める
というのがあります。これがすべてではないのですが、これが自己客体化の基本と言ってもいいぐらいよくある無意識の行いなので、これに気を付けるだけでも、だいぶ自分を客観的に見られるようになります。
コントロール欲求とは
さて、
・人間は無意識にコントロールできないものをコントロールしたがる
・あるいはコントロールできると思い込んでいる
・腹が立つのは、他人(or物)が思い通りにならなかったときだ
という話をご存じでしょうか。
書きだしたらむしろその説明でひとつの記事になりそうだったので、書くのはやめました。その代わり、なんとなくイメージを理解できそうな記事を貼っておきます。
この記事が個人的には感覚をつかみやすいかなぁと思いました。田端氏は炎上商法する人なんで好きじゃないですけど、それと記事の内容は別ですから…
(この「好きじゃないけど、それとこれとは別」というのも、コントロール欲求からの解放の例です。)
要するに、自分の中に「こうあってほしい/あるべき」という願望、規範意識、期待があるのは当然だが、他人やほかのものがそれ通りになっていないとしても、それも当然、という話です。
コントロール欲求の実例と対処法
この言葉は、対人関係の文脈で良く用いられますが、電車が目の前で行った、電車が遅れた、とかもそうです。
イライラしてしまったり、焦ったり、誰かに怒ったり…反応は様々ですが、そもそも電車がダイヤ通りに動いているのも、ダイヤが乱れるのも、不可抗力です。コントロールできないものに感情を荒立てても、得は何一つありません。
それよりも、たとえば、電車に乗る時には「予定時間で終わるタスク」「ちょっと遅れたらやる余剰タスク」「電子書籍(オフラインダウンロード済)」まで用意しておけば、電車が止まったり遅れたりしたら、「ゆっくり本が読めるねラッキー」ぐらいの感じになり、たまたまそこが圏外でも問題ないです。コントロールできないと割り切っているから、あらかじめ対策をしているわけですね。
この、コントロールできないと割り切り、あらかじめ対策すること、滅茶苦茶大切です。
対人でもそうで、自分と思考パターンが違う人、特に世間常識からみて首をかしげるような人は、どこにでもいます。「口調や態度が悪い人」、「指示・約束を守れない人」「理不尽なことを要求する人」。
そういう人を変えるのって、労力もかかる上に、おそらく難しいですよね。腹を立てるよりも、コントロールできないものは、コントロールできないのだからそれを前提として接し方を決めておく方が良いです。
みんな、他人に、社会に、過度の期待をし過ぎです。自分と同じように考えてくれる人なんてほとんどいないし、誰も、何も、自分の思い通りにはいきません。その前提で、自分の行動を決めるわけです。
投資にどう生かす?
さて、やっと本題の投資です。
結局、コントロールできないと割り切って、予め対策をするという話に尽きるのですが、順番に説明しましょう。
前回の記事では、長期投資で含み益が大きい人は、なかなか投資方針を見直さないし、まだ投資経験が浅い人は、含み益が小さく、すぐ損に陥ってしまうので、些細な値動きに敏感になったり、他の投資手法に浮気したりする、という話をしました。
これについて、ちょっと冷静に考えると、どちらも頭では無理だとわかっていても、投資中のリスク資産をコントロールできると無意識に思い込んでいる例だというのがわかりますよね。
投資歴が長い人は、明日引き出そうと思っていたその日に暴落するかもしれなくて、それはコントロールできないのに、頑張って育てた資産を巨大なリスクにさらし続けています。これは明らかに賢明ではありません。
頭のどこかで「そんなことそうそう起きない」と思っているから、リスクを見直さず放置します。
※わかってやっている場合を除く
逆に、投資歴が短い人が値動きに敏感になったり、コロコロと手法を変えてしまうのであれば、まずよく自分のリスク許容度と投資対象の特性を把握しましょう。
長期投資で安眠できないなら、満額投資する必要はありません。その不安は、コントロールできないから生まれるものです。言うなれば、それは眠っている赤ちゃんがいつ起き出すか、ずっと眺めて待っているようなものです。是非、投資額を減らして、ガチホしても安眠できる額だけを投資に回してください。長期投資を目指しているのに、目先の動きでごちゃごちゃやるのは絶対ダメです。まだ投資対象に悩んでいるなら、意思が固まるまで始めない方がマシです。
短期投資なら、短期の値動きなどコントロールできず、個人にはせいぜい、予想の的中率を50%から60%にする」程度のことしかできません。読みは外れて当たり前だと思って、しっかり損切り設定とレバレッジ管理をしましょう。
今一度、「投資中のリスク資産はコントロールできない」ということを投資の大前提においてください。
確率は裏切る
投資と確率について少し書いておきます。
投資の理論はそれなりに構築されていて、現状での最適解もすでに得られています。(分散のきいた時価総額加重平均インデックスへの長期投資)
ところが現実は、滅茶苦茶長い時間をかけてやっと確率に収束するので、短期的には決して理論通りに動くわけではないです。しかも、確率は素人の直感に反します。
たとえば、サイコロを一回投げてある目が出る確率は1/6ですが、6回投げてまんべんなく1~6が出ている確率は何パーセントでしょうか。答えは、ほんの1.5%ちょっとです。
たとえば、確率1%のガチャを100回引いて、全部外れる確率は何%でしょうか。答えは約36.6%です。つまり、確率1%のガチャを100人が100回引いたとしても、36~37人は当たらないのです。
まして投資なんて、確率論であるだけでなく、知ることすらできないような因子に左右されるので、的中を続けることは絶対に不可能です。
インデックス投資が現代ポートフォリオ理論通りの結果を高信頼度で残すには、多分1万年ぐらいかかるでしょう(笑)それまで株が残っていればですが。
株価は明らかにバブルでもそこからまだ上がることは普通に起こるし、暴落局面では行き過ぎた下落が起きるし、ある日突然理由もないのにフラッシュクラッシュを起こします。
NASDAQなんてセクタ分散は不十分なのに、10年以上の長きにわたり、ずっとS&P 500を超越してましたね。最近はそうでもないですが。
たとえばバリュー株投資を志してファンダメンタルズを分析しても、業績は良いのにPERが低い株の株価が、理由もなくさらに5年下がり続けることもあれば、倒産寸前の会社の株が突如テンバガー銘柄になることもあります。
テクニカルでも、チャートパターンを信じたはずが、どっかの政治家やらイーロンマスクの発言で予想の反対方向に倍増したり、はたまた半額になったりします。
さらに毎日、だいたいどこかのセクタが全銘柄を入れたインデックスを超越していて、それに投資していれば…と思うことでしょう。実は、最小値≦平均値≦最大値なのですから、どの時間で切っても、インデックスに勝つセクタがあるのは当たり前なんですけどね。
まとめ
これでもかというくらいに例を挙げましたが、再度言っておきます。
投資をするにあたり、赤ん坊が泣くのと同じぐらい、株価はこちらの都合に関係なく勝手に動き、それは予測もコントロールも到底不可能であることを事実として受け入れ、
コントロールを諦めること
が肝心です。
長期でも短期でも、予測は半分近く外れるものだし、来てほしくない時に暴落するし、してほしくない時に急伸するし、動いてほしい時は停滞する
と思っておきましょう。
一喜一憂するうちは、株に期待をしているか、自分を過信しているかのどちらかです。専業投資家ですら、勝率なんて知れてます。専業名乗ってる人のアンチ垢探したら、簡単に外した予想の情報入ってきますよ(笑)
自分の限界を知り、株への過度な期待をやめ、達観して始めて、本当に投資に向かい合う準備ができます。
外れて大丈夫でない戦略は、戦略ではなく特攻です。外れても大丈夫な額で、外れても大丈夫な戦略を組みましょう。そのための損切りであり、長期分散投資です。
長期投資の人は、戦略を決めたら、明日から80%の大暴落が始まるかも。コントロールなんてできないぞ。無視して毎月入れる。と毎日念じて下さい。もしくは10年ぐらい存在を忘れてください。
短期投資の人は、勝率はせいぜい6割、コントロールなんてできないぞと、毎日念じてください。
※宗教ではありません。
本当の意味でどうせコントロールできないと達観すると、必然的に、投入額は自分のメンタルとの相談で決まり、投資を長く続けることができるようになります。
おまけ:残酷な現実
最後に、ごまかしの効かない面白いデータを挙げておきます。短期投資をしている人の月間ランキングです。毎月勝ち続けている人は全然おらず、ほとんどの人は短期投資をやめていて、ランキングの下から見ると、資産全てを失って退場した方々を眺めることができます。諸行無常…2024/06/11追記:リンクが切れ、月次を過去にさかのぼって比較しにくくなってしまいました。残念!