事業再構築補助金の手引き ~事業転換について~
こんにちは、予算管理に特化した税理士&コンサルタントのT.Hiroです。
ついに事業再構築補助金の手引き が発表されましたね!前回記事で、「事業再構築補助金の手引き」について、ポイント3選や売上高要件などについてお伝えしましたが、今回は5類型のうちの1つ、「事業転換」への考察をお届けします。
(前回記事もご参照ください!)
1.事業再構築の定義の1つ、"事業転換"とは?
今回、事業再構築補助金の対象となる事業を定義するために、新たに"事業再構指針"という新しい用語がでてきたことは前回記事でもお伝えしました!
「事業再構築」とは、「新分野展開」、「事業転換」、「業種転換」、「業態転換」又は「事業再編」の5つを指し、本事業に申請するためには、これら5つのうち、いずれかの類型に該当する事業計画を認定支援機関と策定することが必要となります。
と述べられていることから、まずはこの5類型から、自社に当てはまるものを選択する必要があります!
その中で、事業転換とは?
●事業転換
新たな製品等を製造等することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更すること。例えば、飲食サービス業であれば、飲食という仕事は変えずに、別のサービスに乗り出すケースなど(日本料理屋→ラーメン店 など)を指す。
と定義されています。
つまり、業種を変更することなく、メインの商材や種類を変更するようなイメージですね。
飲食業のケースはイメージしやすいですが、
●例えば、製造業であれば、油圧機器向けの部品製造から、半導体向けの部品製造への転換
●例えば、ジム運営業であれば、対面でのジム運営から、オンライン授業形式でのWeb版ジム運営への転換
●例えば、学習塾(サービス業)であれば、対面での学習塾運営から、オンライン授業を中心とした非対面学習サービスの提供への転換
などが挙げられるのではないでしょうか?
いずれも、コアとなる業種自体に変更は加えないものの、提供するサーバー内容やその方法を大きく変化させることで、事業再構築を図ろうとする事例になるかと思います!
2.事業転換のメリット・デメリット
事業再構築の定義の中で、事業転換を選択した場合、メリットとしてはなんといっても業種に変更がない点です!
すなわち、これまで培ってきた強みである技術やサービス内容、その会社のブランド力を失うことなく、バージョンアップした形で事業を続けることができる点です!
事業者の方の目線からしても、全く新しい業種を新たに開始することはかなりハードルが高く、途方に暮れてしまうのではないでしょうか?
その点、事業転換であれば今までのノウハウや路線を大きく変更する必要がありません!
むしろ、IT化やオンライン化、需要が伸びている顧客への転換など、時代の流れをキャッチして事業を永続的に続けていくうえで、乗り換えのチャンスととらえることができるかもしれません!
一方、デメリットとして考えられることは、これまでの顧客層を、事業転換後の新事業後に失ってしまう可能性がある点です!
製造業の事例であれば顕著で、従来の事業である油圧機器関連の顧客層は、半導体向けに舵を切ったことから、徐々に取引量が減っていく可能性があるかと思います。
これまでの顧客と築いてきた関係性や良好な取引関係は、もしからしたら崩れてしまうかもしれない点が挙げられます。
また、オンライン対応などに切り替えた場合、ITへの対応が難しい顧客層は離れていってしまう可能性があります。
そのため、新規の顧客層を開拓する取り組みもどんどん進めてい行かないと、事業転換しただけでは難しいかもしれませんね!
3.事業転換に該当する要件とは?
事業転換は、事業再構築指針の5定義の中の1つで、新たな製品等を製造等することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更することを指します。
具体的には、下記3要件が設定されています!
(1) 製品等の新規性要件
(2) 市場の新規性要件
(3) 売上高構成比要件
この3つを満たすことを、事業計画において示すことが、申請するための最低条件となるようです!
それぞれについて簡単にみていきましょう。
(1) 製品等の新規性要件
製品等の新規性については、下記のように定められています。
製品等の新規性要件を満たすためには、①過去に製造等した実績がないこと、②主要な設備を変更すること、 ③競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと、④定量的に性能又は効能が異なること(計測できる場合)の4つを全て満たす(=事業計画において示す)必要があります。
つまり、①~④の4要件をすべて満たし、事業計画においてそれを記載することで初めて製品等の新規性要件を満たすことになります。
設備を導入して、新たな製品をつくって売り出すこと。既存の設備では、製造要件やスペック的に満たせないようなものを、新たな設備を導入することで満たしていく必要があると考えれます。
新分野展開の新規性要件ともほぼほぼ同義になっているようです。
①~③はあくまで定性的な要件である一方、④は定量要件なので、いかに技術的に性能が有能であり、既存製品とは異なるかを示すことで、評価される可能性が高いです!
(2) 市場の新規性要件
市場の新規性要件を満たすためには、①既存製品等と新製品等の代替性が低いことを事業計画において示す必要があります。また、加えて、②既存製品等と新製品等の顧客層が異なることを事業計画において示す場合には、審査において、より高い評価を受けることができる場合があります。
市場の新規性とは、代替性が低いもの、つまり、現在事業主が展開しているビジネスと比較して、顧客を食い合わないような新規性を求めらています!
世の中において、新規というよりは、その会社の中で新規性があることが必要なようです。
さらに、既存製品等と新製品等の顧客層がことなることを事業計画で示すことで加点ポイントともなるようです。
(3) 売上高構成比要件
事業転換に該当するためには、 3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品等の属する事業が、売上高構成比の最も高い事業となる計画を策定することが必要です。
つまり、自社の売上高ポートフォリオの中で、最大の売上高に変更していく必要があるということです!
これ、かなり厳しい要件ですよね・・・。
計画段階ですら、売上高比率を最大にすることには抵抗がある方もいるのではないでしょうか?
経済産業省の資料では以下の通り例示されています。
「日本料理店」と「焼肉店」は、日本標準産業分類の細分類ベースで異なる
分類がなされている。従って、3年間の事業計画期間終了時点において、焼肉事業の売上構成比が、日本標準産業分類細分類ベースで最も高くなる計画
を策定していれば、要件を満たすこととなる。
このように、かなり厳しい売上高構成比要件を求められている点には注意が必要ですよね!売上高構成比の最大を・・。かなり厳しい要件がここで追加されていますね!
最後までお読みいただきありがとうございました!
次回は、事業再構築の定義のうち、「業種転換」について考えていきたいと思います!