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北欧デンマークにみる小さな国で、大きな心を育てるためにできること

Chiba:今日はデンマークのニュースからお知らせします。
デンマークでは毎年2月初めにテーマを決めたチャリティー週間を一週間行います。


その名も、Denmark Indsamling 2021
ここに、DANMARKS INDSAMLING 2021 CALLS FOR THE BIG DANISH HEART

デンマークの大きな心、とあります。

テーマは
「世界のホームレスの子どもを救おう」
「世界で人権を奪われている女性を支援しよう」
などで、

今年のテーマは
「コロナで経済的窮地におちいっている世界の子どもを助けよう」でした。

人口わずか580万人のデンマーク人が一週間、
2月6日の土曜日は国営テレビが一晩中チャリテーショーの仕上げを行いました。個人、協会、団体、会社などが寄付に応じて行く番組でした。

Sue: 日本の「24時間テレビ 「愛は地球を救う」」みたいな取り組みですね。
あれは民放が行っているものですが、これは国をあげてのチャリティー週間なのですか?

Chiba:そうです、これは国をあげてやっています。

子供たちが街を歩いて、プラスチックゴミを集めて企業が買い取ったり、高校生が募金の缶を持って、家を周ります。

国民みんなが1つのことに、協力して行動する姿が見れる瞬間です。

2月6日午後24時現在「デンマーク募金」に集まったお金は

120,409,254.00 Dkrです。

ちなみに昨年の募金は92, 104,924.00 Dkr、1Dkr=16円に換算すると約14億円でした。
今年はコロナ禍、一週間で約19億円!を、デンマーク人そして、デンマーク在住の人たちは寄付をしました。

毎年2月初めに十数億円ものお金を集めて世界各地の困ってる人たちを助けようと行動する姿は、デンマーク人たちは「小さな国の大きな心の持ち主」という言葉がよく似合うと思っています。

Sue:日本の寄付文化は、昔から様々な団体(ユニセフ、赤い羽根募金等)はよく知られていますが、国をあげて、というのはきっとこの1週間はお祭りのようになるのでしょうね。


ペダゴウが本気で大切にしている3つのこと

Chiba:さて、さて、そんな国民を育てている教育に話を戻しましょう。

Sue:そうですね、是非。今日のお話しは、大きな心の育て方にも通じるのかなと。
デンマークの就学前教育において、教師・ペダゴウが本気で大切にしていることを3つあげるとしたらなんでしょうか。

Chiba:以前、幼稚園では読み書きそろばんを教えず自由に遊ばせながら,且つ社会性を教えるのが主体でした。

しかし、デンマークは約8割が共働きです。よって、ほぼ9割近い人が幼稚園年長クラスは園に預けていることが統計として取れました。

そのため、小学校に上がる1年前には最近は読み書きを意図的に教えるようになってきました。

Sue:意図的に、と言いますと?何か教育法の考え方でも変わったのですか?諸外国をデンマークの教育省の人たちが視察に回ったと聞いたことがありますが・・・

Chiba:デンマーク は現場経験を十分にした官僚が多いのです。現場上がりの人の声は、施策をするのに説得力があります。

そしてやはり、世界の趨勢(すうせい)として、PISAのテストで、デンマークの学歴が中盤から下であることに危機感を持っている政治家や、若い保護者たちの意見が増えてきたことです。

ただ、教育現場の方は、今まで通り、子供は遊びが大事と思っている人が多いのですよ。

Sue:なるほど。日本もPISAは話題に上ります。


Chiba: そこで、特に1年生になる1年前の幼稚園学級、すなわち0年生クラスも、義務化し、読み書きそろばんの他に、時間の概念、季節の概念、社会情勢(付近の交通状況)、感情・しつけ、社会性(個人の責任、義務、友情)、などを教えることになりました。

Sue:子どもが社会に出るための準備ですものね、プログラムがいろいろな好奇心に触れられるものになっていて、遊びから学びへと緩やかに傾斜がついている!と私の北欧教育スクールの先生方も興味津々でした。

Chiba:前述の通り、2009年から0年生(幼稚園学級)が教育の義務に編入されました。したがって、デンマークの教育の義務期間は0年生~9年生までの10年間となりました。

<教育の義務となった幼稚園クラス0年生の到達目標>
言葉:言葉の様々な使い方、言い回しなど。
算数:日常生活に関係する数や形の理解。
科学:自然現象を(観察)理解。
芸術:独創的に、絵、音楽、ドラマで自己表現。
体力:運動能力の向上。
立案:社会性、コミュニケーション、他人への思いやり。


この0年生は基本的には6-7歳(デンマークは入学が9月で日本より半年遅い)が行きますが、個々人の発達・成長度合いを見定めて、もう一年0年生をやることも可能となっています。


1年生になり諸々の教科を専門的に教える前に、より人間性、人格育成に力を注ぎ、土台がしっかりできているとその上にいろいろと積み重ねることが出来るのです。

Sue:確かに頭と心のバランスがよく考えられていますよね。


Chiba:そうですね、とてもよく考えられていると思いますよ。

何よりも、子どもたちが楽しく学校に通えるようにすることは、働く親にとっても、受け入れる学校にとってもとても大切な要素ですから。

さて、小学校準備期間は、以前は就学に備えるための一般的なものだったのです。

だからこそ、教師・ペダゴウが子どもを思って考えていることは
以下の3つではないか?と思っています。

①身体的健康
②精神的健康
③社会性

しかし、これは私の主観です!

念のため、AnneMette(アンメッテ デンマークの0年生教育のスペシャリスト)に電話して聞いてみました。

彼女の言葉で表現すると

①子供に共感する(子どもの心とつながるEmpathy)
②思いやり
③社会性

これも彼女の主観です。

Sue:ペダゴウによって大切にしている3つは表現さえ違えど、心身ともに健康的であること、社会性を身に付けること、そしてやはり人間として必要なことを大切にしているのですね。

ちなみに法律ではどのように表現しているのですか?

Chiba:国民学校の目標(国民学校法)を一部ご紹介します。この目標を要約してみますと:

1,学校は保護者と協力し合う。生徒個々人を育成する。
2,生徒に学びの意欲と、自分自身に自信を持たせる。
3,社会参加と民主主義の理解。

以上、個々人と社会性を同時に育成すること、特に社会性としては民主主義を重要視してます。

Sue:ここにも社会参加、民主主義、とあるんですね。

この「社会参加と民主主義の理解」ですが、例えば、「民主的に物事を進める」と言う言葉は耳にすれど、いざ実践となると、本物の民主的な現場では何がおこっているのかを私たちは実は知らないのかもしれません。

例えば、みんなで何かやるときに「やらない!」と輪に入らずに、日本語的に言えば場を乱す子がいた場合、日本はその子に強い口調で正したりします。

「何をやっているの?」「ちゃんとしなさい!」「いまは何をする時?」とか。

これはその場を皆んなでそろって進めるためにはとても必要なことで、デンマークの先生だったら、どのようにこのようなケースを社会参加や民主主義として体験させるのでしょうか。

自由と責任を教えるには大人が頭を使おう

Chiba:「自分が言った、自分がした行動に責任を取らせる教え方」です。これはですね、「大人」が本当に頭をよく使って「言葉」も「対応」もしなければ子どもの尊厳を傷つけることになりかねませんからね。
よーく、大人がなんのために責任を取らせるのか、目的を見失わない、のがポイントです。

前述したアンメッテも、「要は拒否した子どもに対して強制的に物事を押し付けず、子どもの自由を尊重するのです。自由を選んだ後に結果として責任が伴うことを教えます。」と言っています。

これですよ、真の民主主義、真の自由を教えるということは。これが自律につながっていくのです。

Sue:責任を取らせる、という部分、デンマークではどうしているのか気になります!

Chiba:例えばですよ、保育園の一コマを再現してみます。

先生「さあこれからお昼ご飯にします!みんなで机の上をかたづけましょう。」

男の子「嫌だ,やらない。」

先生「そう言わず一緒にやりましょう?」

男の子「やだ!嫌なものは嫌だ!」

先生「そう、あなたが決めたんだから、それじゃあ仕方ないねぇ。」

そして食事の時、

先生「みんなで食べましょう。」

男の子「僕も食べよっと!」

先生「さっき、あなたはみんなと一緒は嫌だといったでしょう?」

男の子「言ってないよ」

先生「お昼ご飯にしましょう!みんなで一緒に机を片しましょう、と言ったら、嫌だといったでしょう?」

男の子「言ったか覚えてないよ!いやだ、みんなと一緒に食べる!」

さて、この先生はお片付けを手伝わなかった上に自分は言ってない!と主張する男の子に対して、なんと言ったと思いますか?

この先生は「言っていない」と言った男の子の言葉をまずは尊重します。

もちろん、言い訳しているな、と分かった上です。

そして、こう伝えます。
「じゃあ約束して。今日あなたが私を言ったことをきかなかったけれど、明日から、あなたは、テーブルセッティングをすると約束できる?出来るなら今日は一緒に食べていいわよ。

これはクラスのリーダーである私の判断です。もし明日できなかったら、一緒に食べることはできません。言っていない、というのは、なしよ?」

と教え、その後、食事はみんなで取らせました。

ポイントは、自由を主張し、自分の尊重ばかりを要求して、周りのお友達のことを考えないのは無責任である、という社会参加の仕方を教えていたこと。これこそが、自分の言動に責任を持たせるやり方です。

これを小さいときから教えるのが肝心なのです。これは礼儀作法のしつけにもつながります。 

Sue:私たちは北欧教育スクールフィーノリッケで小学校準備のレッスンをしている際に、見学している大人の方々から「自由ですね・・・・」と少し戸惑い気味で言われます。


子供達に座りましょう、といっても座らなかったり、
話を聞きましょう、といっても聞かなかったり、
好き勝手に話してしまうことがあるからです。

それはもちろん時と場合によったりすることもありますが、
子供たちが大人のように「私はこう思うんです」と落ち着いて、自分の感情を出さないようにしゃべることは今はまだ練習中だと我々は思っているわけです。

私も一人の親として、自戒の意味を込めて、ですが、
親はどうも「早くできるようになってほしい」「子供の成長を待てない」という傾向があるように思います。
「あぁ、ちゃんとできているな」というのは、礼儀正しく大人が好きないい子を表現している瞬間だったり。

Chiba:礼儀正しいのはいいことですよ。日本のいいところの一つです。

Sue:礼儀正しい、というのが一斉に!というのが日本ぽいかもしれません。「全員椅子に座りなさい!背筋ピッ!」ではご挨拶いたします!みたいな。

ところでデンマークは一律、おはようございます!みたいなことってあるのですか?

Chiba:わあ~!そんな軍隊みたいなことはしませんよ。軍隊はユニフォーム・画一的です。デンマークの学校には制服はまずありません。個々人・個性を尊重します。

きっと、先生が最初に伝える言葉からして違うと思いますよ。

日本:静かにして先生の言うことを聞きなさい!

デンマーク:なんでもいいから思ったことをどんどん言いなさい!

その後双方の子どもたちはどんな大人なっていくのでしょう?

Sue:世界の基準がその方向にあるとした場合、日本人は今の教育スタイルでいくと、どの時点で「なんでもいいから思ったことをどんどん言える」ようになるんでしょうね?

なんとなくですが、社会でも空気を読んで余計なことは言わずに穏便にすましていたら、5−60歳になっていきなり爆発したりして・・・。

Chiba:自分が自分の声をあげることがどれだけ大切か、自分は社会に影響を与えることができる、という経験が自信をつけ、社会の参加意欲を掻き立てるのです。

Sue:自分に与えられた責任が、たとえどんなに嫌なものであったとしても、社会的にみてNGならば、今、気づいて行動を変えることで、自立した先の社会で生きることがどんどん楽なる、と言うことですね。

<次回に続く>


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