アンデルセンの目でみてみよう。-第4夕講
昔々のデンマークに
ある一人の童話作家がそこに存在しました。
日本の多くの方がきっと
1度は読んだことがあるに違いありません。
その人の名は
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
といいます。
アンデルセンの目で見てみよう。
彼の作品に宿る思いが、
のちに、
デンマークを住みよい国に導き、
デンマーク国民の心を豊かに育ててくれた。
そう、私たちは思うに至っています。
「いじめ」については「みにくいアヒルの子」
「貧困と幸せ」については「マッチ売りの少女」
「自己責任」については「赤いくつ」
「福祉・おもいやり」は「ナイチンゲール」
「自己決定」は「人魚姫」
「政治」は「裸の王様」などなどです。
アンデルセンの作品にヒントを得つつ、
私たちの社会を
「当事者」の目線から、
対話の形で
眺め、見てみたいと思います。
第3夕講はこちらからご覧ください
https://note.com/finolykke/n/n71030804c4eb
第4夕講 「優劣をつける競争を必要としない」学校教育
時は流れて、9月。
夏休みが終わったばかりのはるとくん。
今日ははお父さんとやってきました。
そして、はるとくんは小学校1年生になりました。
はると:じぃ、久しぶりー!
Chiba:はるとくん、なが~い夏休みが終わって今日から1年生だね。少しデンマーク語覚えてきたかな?
はると:デンマーク語はか・た・こ・と。
夏休み、長くないよ、短かった!
そういえば、はるとくん、って久しぶりにいわれたよ!
友達はみんな「はると!」って呼ぶから、じぃも、はるとでいいよ!
Chiba:それは、それは。
では、はると、夏休みの宿題、日記帳とか全部終わったの?
はると:えっ?宿題なんて何にも出されなかったよ!
Chiba:うっそう!
宿題が何にもなかったなんてありえない、、、
いったいそれじゃ夏休み中一体何をしてたの?
はると:お父さんやお母さんが海や山に
1週間づつ連れっててくれてキャンプをしてた。
デンマークには高い山がなくって、みんな丘みたいだったよ。
お母さんが言ってたよ、夏休みってね、
今まで学校に行ってたから夏の間勉強を休むんだって。
キャンプの他に動物園や美術館にも連れてってくれた。
でも、一番楽しかったのはイタリアをドライブ旅行
したことかなあ~!ピザおいしかったよ!
初めてのデンマーク以外の外国でドイツを通って行ったからねえ~
Chiba: 何だ、なんだ!
それじゃ夏休みは遊びっぱなしじゃやないの!
読み書きなんかすっかり忘れちゃったんじゃないの?
はると:夏休みは、
夏のやすみだから読み書きしなくたっていいんだって!
へ、へ、へ、デンマークの学校にはいって良かったな!
Chiba:さあさあ、夏休みはもう終わり!
これから1年生、読み書きはちゃんとするんだぞぅ!
また学校の様子も話してね。
はると:じぃ、まだ、ききたいのかよ!!
でも、学校帰りに、じぃの家に来るとケーキあるしなぁ。
宿題もほとんどないし、試験もテストもないから
話してやってもいいけどぉ?
Chiba:お。強気だな?ちゃんと言葉で説明できるかな?
はると:うん!いいよ!大丈夫。日本語でいいでしょ?
授業はね、国語、算数としっかり科目別に習っているよ。
音楽も体育も工作の時間もちゃんとあるし、
描いた絵は全部廊下に張り出してくれるし。
いい学校だよ!僕のが一番だけどね。
Chiba:ほぉ、何か?誰かが1番、とか言われたの?
はると:ううん、僕は日本でそうしてたけど。。。
そういえば、お友達、
「私が一番!」「僕が一番」って言ってなかったな。
先生は、誰かの絵が上手だから1番、
次に上手な子は2番、
そして次が3番なんて差を付けないよ!
Chiba:そうだよね、
デンマークの学校では
先生が生徒に差をつけるような教育をしない
ということだね。
はると:うん、星マークもらったり、褒めたりしてもらうと
嬉しいけど、恥ずかしいしね。
もらえないと「がんばったのにな」って気になるしね。
Chiba:自分の中のきもちを上手に表現したね。
デンマークの絵の先生はね、
生徒一人一人の絵がみんな一番だから、
2番はあり得ないとしているんだよ。
例えば、運動会のようなものはデンマークにはないでしょう?
ないけれど体力検定の日が毎年1回はあるんだよ。
体力の個人差は人間としての能力差ではないので、
1等、2等とかではなく100mを何秒で走ったか、
何メートル跳んだかとかその記録が
そのまま残るだけ。
テストや試験がないとびくびくしないで
むしろのびのびと勉強が出来るよね。
お父さん:日本で言うところのスポーツテスト?
はあるんですね・・・。
正直、こんなに遊んでばかりで大丈夫か?と、、、。
デンマークの雰囲気に慣れようと、
夏休みは遊びに集中しましたが、
先行学習しないでいいのか?
やはりまだこの感覚になれません。
勝った、負けた、という経験も大事だと思うんですよね。
負けて悔しいからバネにする、ということも、
必要だと思っています。
練習があれば、忍耐力もつくでしょう?
デンマークはどうなんでしょうか?
我慢強い子が育ちにくいんじゃないですか?
Chiba:10人十色、百人百様ですね。
子ども全員を出来る子にすることは不可能なのです。
出来る子は出来る子なりに、
出来ない子はなるべく落ちこぼれないように
教育するのが優秀な教師です。
遅れた子どもを落ちこぼさないようにするのも
忍耐力を付けるでしょう。
お父さん:そういうものですかねぇ・・・。
はると:あー、そうそう、
今日、算数の時間に先生がもうひとり来たよ!
算数が分かりにくい子のそばにいて手伝ってあげてた。
僕も手伝ってもらいたかったなあ~。
Chiba:はるとは自分でできたんでしょ?
だったらいいじゃない、あまえなくても。
はると:えー、特別扱いいいなぁって思ったんだよ。
Chiba:それは特別扱い、とは言いません。
デンマークでは単なる苦手なところを
手伝っているだけだよ。
はると:ふーん、違うのか。。。
昨日はさ、学級会があって、
先生からクラスのルールをみんなで
決めましょうといわれてさ。
5人づつのグループに分かれて、
各グループごとに10個のルールをだしあって、
最後にクラス全体のルールが出来たんだ。
みんなで決めたんだから、
みんなで守りなさいと先生は言ってたよ。
Chiba:それはいい経験をしたね。
ルールはね、みんなで話し合って、
みんなで決めて、みんなで守るからルールなんだよ。
誰か一人の意見で決まるものでもないし、
未来永劫変えてはいけないものなんてないんだ。
ルールは、その時その時に合わせて作るものだよ。
【編集後記:つれづれなるままに】
Sue:ルールの作り方、対話によって落とし所を探る、っていうのがとにかくデンマークらしい、実社会で生き抜く力の早期教育ですよね。
私はデンマークの幼児教育って、日本の大人社会で一番必要とされている「主体性」「考動力」「課題解決」というキーワードが生活や日々の学び方に思いきり反映されていて、圧倒された記憶があります。