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アーサー+メラは音楽的にも必然〜映画『アクアマン』二部作への愛とツッコミが止められない5

大好きすぎた映画『アクアマン』、ビジュアルも世界観もぎゅう詰めの内容も疾走感も何もかも偏愛していますが、どうにもツッコミが止められないのは音楽のこと……。

まず前作『アクアマン』の好きな点をただ述べたい

映画『アクアマン/失われた王国』が公開され、(ScreenX含め3回も)見に行ってあらためて認識したのは、前作『アクアマン』が本当に好きすぎたこと。多すぎる好きポインツを挙げてみると、

笑ってしまうほど詰め込みすぎな内容、それもありかもと思わせる疾走感、海中世界の息を呑む美しさ、「こんなの見たことない」が満載の派手な水中バトル(一対一も多対多も)、海洋生物型マシンてんこ盛りvs海洋生物大集合のド迫力、

みんな大好きジェイソンのワイルド&キュートな魅力、アンバーの華麗なアクション(このヒロイン、最強すぎる)、ニコールのさすがの存在感、パトリックの久々の美形キャラ化とまさかのジュリー・アンドリュース様(カラゼンの声やってます)との共演、

縦横無尽に動く視点、複数のバトルを立体的に把握させる映像、90度とか180度とか回転する画面。シチリアでのメラ+アーサーのバトルと、クライマックスの兄弟一騎討ちで(アーサービューで)天地逆転してくずおれるオームのショット、ほんと好き。

挿入曲の分かりやすすぎるカッコ良さ(マンタのアーマー改造シーン最高)、ワーグナーかジョン・ウィリアムズかな?と思うほどのライトモティーフの多用(メラの動機はエンディングのボーカル曲にもリンク。オームとマンタの動機はそっくり、というか音符でいえば同一でちょっとかわいそう?)、

都合良すぎる展開も細かい不整合も気にならない(気にする気がなくなる)すばらしい勢いとノリ、みんな好き。

と、好きなところだらけだけど、先日は続編『アクアマン/失われた王国』の音楽的な仕掛けにこまごまとツッコミを入れていたこともあり、やっぱり音楽を語りたい!特に、最強ヒロインであるところのメラに関連する音楽を。

『アクアマン』におけるライトモティーフとメラの動機

上でも少し触れたが、『アクアマン』二部作の特徴の1つはライトモティーフの多用だと思っている。ライトモティーフとは、登場人物や物事など特定の何かを表現する短い音楽(モティーフ=動機)のことで、「メラの動機」なら彼女の関連シーンで繰り返し現れる。

メラの動機を含む、少し長い「主題」も聞こえてくる。勝手に名前を付けると「メラとアーサーの主題」「メラの闘いの主題」「メラの水を操る主題」など(私見にすぎませんが、メラの主題やアーサー/オームの動機については以前も書いてみたのでよろしければご参照を)。

メラの動機は次の3音で構成される。

G B♭ C

たとえば前作ではこの3音がそのまま、シチリアでオームの精鋭部隊の3人を倒すシーン、ワイン棚を背後にして最後の2人と対峙するシーンで使われる(「メラの闘いの主題」。ドラムやヴォカリーズが乗ってカッコいい)。

メラとアーサーの主題は、15分に1度現れる

同じくこの3音を含む「メラとアーサーの主題」が、二部作を通して最も印象的かつ分かりやすいメラの主題かもしれない。前作『アクアマン』後半ではメラ本人が縦笛で演奏し(マンタとの闘いの後、アーサーが小船の上で目を覚ますところ)、エンディングの美しいボーカル曲「Everything I Need」の一部にもなっている主題をそう呼んでいる。

「メラの動機」「メラとアーサーの主題」の例

メラの動機や主題を説明できるちょうどいい公式動画を見つけられなかったので、ワーナー公式音源の「Everything I Need」を。

0:38-0:46 'Cause baby, everything you are is everything I need の、

「baby, eve-」の3音:メラの動機(この曲はロ短調なので、GB♭C でなくF♯AB になっている)
「baby, everything you are」の7音:メラとアーサーの主題の最短形(その後に「everything I need」の5音が足されることも多い)

なぜ「メラとアーサー」かというとこの主題、メラとアーサーの出会いの瞬間、メラが海から上がってアーサーと目が合う際に初めて登場し(上記の7音がハ短調で)、その後2人の関係が変化する(メラのアーサーに対する評価が上がる)局面でこれでもかというほど繰り返されるため。トムを救ったメラにアーサーが感謝を述べるとき、床の隠し扉に驚いたアーサーが思わずメラの手を取って引き寄せる(そしてメラがその手を服で拭いちゃう)とき、トレンチの海域に向かう小船の上でメラがアーサーに「あなたは陸と海との架け橋」と語りかけるときなどなど。

前作では静かなシーンが続くと爆発が起きて場面が急展開するのは有名な話で、それがだいたい40分に1回あるけれど、メラとアーサーの主題は平均すると15分に1回流れている(それをいうならアーサーの各種動機は3、4分に1回レベルだけれど、性質が違うので)。

アーサー+メラの音楽的な必然

全編にわたって頻繁に現れ、物語を強く方向づけるこの主題は、アーサーとメラのキスシーンでクライマックスを迎える。このときはハ短調からホ短調に変わり、弦と金管と打楽器を目立たせて最高に盛り上げる。

『アクアマン』二部作の音楽はおそらく、あまりシンフォニックにならないように作られている。つまり管弦がある程度の規模で入るところでもオーケストラっぽくしすぎず、個々の楽器の音も目立たせず全体に溶け込むように作ってあると思うのだけれど(私見です)、ときどきあえてそうしない部分があって(トムとアトランナの出会いとか、アーサーのバルコ直伝の必殺技のシーンとか)、この主役2人のシーンもすごくシンフォニックに盛り上げている。

クライマックスの後、この主題は「Everything I Need」で再び現れ、静かに終息する。エンドクレジットに合わせてこの曲が流れたとき、「そうか、これはアーサー1人の物語ではなく、アーサーとメラの物語だったんだ」と思った。

最強ヒロイン、メラ

このように、ライトモティーフを用いた音楽が積み重なってアーサーとメラの関係の深まりを表現し、ちょっと唐突にも思える(?)あのキスシーンの必然性が増すように働いている、といえる。

だからといってもちろん、音楽だけで必然性や盛り上がりが出せるわけではない(当然だ)。強調したくなるのは、メラというヒロインの強さだ。強さといっても、戦闘におけるそれではない。

いや、「闘いの主題」のところではオームの精鋭兵5人を文字通り皆殺しにするし(マークは生きてたかな?)、オームも不意打ちとはいえ完全にダウンさせてたし、ほんとメラ最強。屋根の上走るのもワイン操っての攻撃も華麗の一言だし、アンバー美しすぎるし、突きつけられている剣を奪って反撃にかかる直前にニヤッとするのカッコ良すぎて大好き。だけどここでいいたいのは、メラの内面の強さである。

メラはとても強い人として描かれている。子どもの頃オームと共に受けたアトランナの教えを大切に守り、なんとかオームを止めて戦争を防ごうとする。アーサーを助けた後、国を裏切ってしまったこと、もう帰る場所がないことを悲しむけれど、「正しいことをなすべきときがある、たとえ心が痛んでも」と静かに言う。自らの意思で動き、他人のせいにしない。

そんなメラは最初「あなたが王にふさわしいとは思わないけど、なぜかバルコが信じているから」という理由でアーサーに助力を求めに(というかおしりを叩きに)来るが、行動を共にするうちに彼の資質を認め出す。自信を失い小船の上で「おれはリーダーでも王でもない」と言うアーサーを「2つの世界の人だからこそ王として価値がある、あなたは陸と海との架け橋、いまはそれが分かる」と(メラとアーサーの主題付きで)励ますまでになる。

正直、サハラとシチリアの出来事でなぜそこまでアーサーを王にふさわしいと認め、その後海中大戦争のど真ん中でつかまえてキスしちゃうまでになったのかは、よく分からないのだ。続編『アクアマン/失われた王国』で、オームがなぜ最後にアーサーを真の王と認めたのかよく分からなかった(のでいろいろ考えてみた)ように。

けれどメラの場合、「君がアーサーは王にふさわしいっていうんなら、きっとそうなんだろう」「君が惚れたっていうんなら、祝福するよ!」という気分にさせられる。というかさせられた。それはメラの内面がとても強いから。

「守られる必要のないヒロイン」だからこそ、生きるあれこれ

そう、メラは間違いなくヒロインだけれど、しばしばある「ヒーローに守られるためのヒロイン」「ヒーローの添え物として、ヒーローに合わせて作られた*ヒロイン」じゃない。そもそも守られる必要全然ないし(むしろアーサーを守りまくっている)。1人で考え行動し結果に責任を持ち、ヒーローを必要としない。「ヒーローとヒロイン」ではなく「主役2人」といいたくなる。

*ヒーローに合わせて造形されたのはヴィランの方で、特にオームはパズルのようにきっちりアーサーの裏返しになっていて、それが不自然さというか動きの悪さにつながり、ときどき本気でかわいそうになる

そんなヒロインだからこそ、隠し扉に驚いたアーサーがメラをかばおうとつい手を取っちゃって……みたいなベタな描写が逆に生きるし、例のキスシーンで、四王国による戦争の真っ只中(海底人も海中生物もトレンチもばたばた倒れてるはず)、飛び交うビームや爆撃をカラフルな花火のようにしょって2人してくるくる絡まってるのにも、なんか納得させられてしまった。

普段あまり映画を見る方ではないのだけれど、目で見て耳で聞いて楽しんでいさえすれば、(仮に多少引っかかるところがあったとしても)映像と音の力でなんとなく分かってしまう、納得してしまう、というのは、やっぱり他のものにはない映画の良さだと思う。もちろん、だれそれの動機がどうだとかなんだとか笑、細かく見る楽しみもあるけれど。

おまけでオームの動機とマンタの動機についても軽く触れたかったのですが、長くなりすぎたのであらためます!

追記:触れました!↓)

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