短編集「シャンプー瞑想」
初めまして!
noteの設定に手間取った!
投稿挫折しそうだった!
だけど
あんたは今月は小説書きなさいって
天から言われて。。とにかく書くことにした美文です。
閃いたら書く。
そんな小説なのですが、よかったらおつきあいください。
タイトルは「シャンプー瞑想」
第1話『窓』
初めてのデートの時、彼は大学病院の裏通りに車を止めた。 自動販売機で缶コーヒーを買ってくれ、狭い車内で蓋を開けた。 カチンと音を立てながら、彼は「あそこなんだ」とぼんやり呟いた。 「えっ」。私にはよく聞き取れなかった。 「あの窓のところに入院してたんだ。前に付き合っていた彼女」 もう夜の十時だ、ボチボチ明かりが消えていく。 三つ目の部屋の窓の明かりが消えたころ「乳癌だったんだよ」と彼は静かに厳かに言った。
私は平気を装い「えー、どうなったの?」とあえて聞いてしまった。
「何回も見舞いにいったなあ。。おかしいとおもったんだけど、入院する何日か前に、別れ際、(さよーならー)って言ったんだ。その時は、ああって頷いたけど、あとで癌が再発して入院したってわかってね、、よく病室から出て帰る気になれず、ここに車止めて窓を見ていたりしてさ。」
と淡々と言うので、『死んだの?』と言う言葉が喉に引っかかったまんま、彼の横顔をみた。彼は、どうと言うことないように、にこにこしながら、
「死んでしまえば、どうすることもできないさ。。コーヒー飲まないの?」
と私の方をみて言った。
五階の左から何番目の窓だと教えられたが今は覚えていない。
死んだその彼女の名前も聞いたが忘れてしまった。
死んだ人にやきもち妬いても仕方がないもの。
もし、どんな人か聞いてしまったらその人の長所ばかりを聞いてしまうことになりそう。そうしたら、そんな長所は私にないと思ったりして、同じようにはできない、私にはない、私はその人に劣っていると考えてしまいそう。。。いけない。いけない!!
私は私。他の誰にもなれないし、誰も私にはなれないのよ。。と頭ではわかっているんだけど、自信が筋肉でできているとしたら、そのなかの毛細血管が数本切れた。
でも、彼にとっては身の焦がれるような女だったのかもしれない。彼の思い出の中では、最高の女だったのでしょう。
元彼女の存在は気になるものだ。いつ、よりを戻されるか用心ものだ。
よりを戻され、振られた経験がある。
だけど、彼女はいらっしゃらない。
あれから二年経った。
この頃彼の携帯につながらない。
今日も、既読スルー。
あの時君が最期の女だよって言っていたよね。私だってその気になって、行けるところまで行きましょうねと抱き合ったったじゃないの。
夏が突然、秋風に乗っ取られたように、彼の情熱は冷めてしまったのかなぁ。もしかして、今頃は誰か別の人に、私のことを乳癌で死んだと教えているのではないだろうか?
大学病院の裏通りに車を止めて、、、、、。
雨音は死んだ女にくれてやろ 美文
『窓』その2
三年前、離婚してから私は二人の娘と暮らしている。長女20歳はバイト、次女18歳は部活。お互いバイトや部活に忙しい大学生だ。時々、娘たちは別れた夫の家に泊まりに行く。今日は、娘たちが泊まりに行ったので、私は彼とゆっくり会えると思ったけど、連絡が取れず、一人で残り物のお味噌汁と納豆卵かけご飯を茶碗一杯食べた後、お風呂を沸かした。
私の唯一の楽しみは、ゆったりとお風呂に浸かること。今日は友人に誘われて、保険会社のお客様感謝デーに参加し、耳つぼマッサージを受けた。その時、耳つぼセラピストの方からシャンプーサンプルをもらった。
シャンプーの名前は「シャンプ〜瞑想」。瞑想するときのシャンプー?瞑想って、特別なスピ系の人とか、ヨガの人とかやるものってイメージがあるけどな。
でも普段買えないほど高級なシャンプーだから、少し興味が湧いた。13200円っ!!
お肌の高級エッセンス並みじゃないの!!
耳つぼセラピストさんは、こう言ってくれた。
『最初に湯シャンしてくださいね。
ラッキー!ハッピー!ついてる!絶好調!!
今日も無事生きてるって思いながら、湯シャンするんですよ!!
。。たしかに、わたしは生きている。彼の元彼女はこの世にいない。
彼女がいたら、私は、彼と会えなかった。存在しているだけで、私、ラッキー!!
半世紀元気に、心臓止まらず、体全体は自在に、私が頼まなくても、動いているし、労ったこともないのに動いている。ハッピーで絶好調だ!!
シャワーが光りながら、私に降り注いでいる。
この光はどこからきているんだろう?
明るい光浴びてるってハッピー!!
お湯はいつでも出てくれる。。。お金ないって言うのやめよう、、
だって、ガス代も水代も払えているんだもんね。
しかも、飲み水で、私は身体を洗えているのも、ラッキー!!
いったんシャワーを止めて
シャンプー瞑想のお試しボトルから、左手のひらに500円玉くらい出して
左の耳の横から右耳の横、右の側頭部、左の側頭部、他玉のてっぺんと5箇所くらいに置いた。
それから、右手で左盆の窪から右横へマッサージした。
そして側頭部から頭頂部までを10本の指の先で円を描くようにマッサージしてみた。
柑橘系の香りがなかなかフレッシュ気分へ導いてくれ、全体はフローラルで贅沢な香りだったので、うーん!!うっとり。。。
泡がきめ細かい。
シャンプーって、この泡のクリーミィな感じがいい。まったりへ導いてくれるから好き。
外国の女優みたい!
レトロな時代の映画が好きだなぁ。
そうだ、私はオードリーヘプバーン。
流し終わるまで、お湯が頭皮を温めてくれて、
どんどん空想が広がる。
お金持ちの教授が私を淑女に変身させてくれる。
美容院やエステに連れていってくれて、
銀座シックスのブティックまで連れて行って、この女に一番似合うスーツを選んでくれ!と店員に言う。
上から下までぴったしのコーデネイトで私はぴっかぴっか。
知的でキュートなオードリーみたいに、彼にエスコートされて13階のレストランでランチコース。
待てよ、ランチか?
夜景見ながらのディナーがいいよね〜
とにかくフルコース食べながら、彼が私の話にいちいち、相槌打ってめちゃめちゃ感心してくれる。っていうか、びっくりしている。
なんのだか知らないけど、一応教授だから、私のとりとめのない会話に驚くばかりである。「君の毎日はサバイバルだね!!」て、目を丸くしている。
電車待ってたら風が吹いてきて帽子が飛んで、線路に落ちた。その後、車掌さん探したが近くにいなくて、改札口の鉄道員に帽子のことたのみにいったけど、線路にはもう帽子なかったこととか、カート引きずって歩いていたらタクシーがカートを轢いて行ったこととか、、、、
ああ、もう十分に幸せです。こんなに笑って話を聞いてくれて、教授は私を新品の本のようだと絶賛してくれた!!
上品なフルコース、そして銀座のホテルに送ってくれて、軽くキスするだけで、明日の朝食は下のレストランに来てねーって言って帰ってくれた。なんて紳士。うっとり、、、
今までの男は全部、いきなりお持ち帰りパターンで、品がない奴らばっかり。私は娼婦じゃないんだよ。その証拠にお金なんてもらったことないし。尽くし損なんでした〜私って、私は寂しい男の空虚を埋めてあげてたつもりだったけど、、、本当は自分が空虚だったのよ。孤独だった。私がいなくても社会は変わらないし。娘たちだって、多分私がいなくても平気みたいです。小うるさいって言われてる。
でも、今はなぜか、空虚じゃない。私には私がいつでも寄り添ってくれてる。どんなにポンコツでも、私は自分を愛してる。自分が一番好き!!
教授が新品の本みたいだって大絶賛してくれたからかな。
私が主人公のネガティブな体験やポジティブな体験の数々のストーリーが書き込まれている新品の本。
新品の本って、大切に扱いたくなるよね。
私と言う新品の本を私は大事にめくっていくわ。
シャンプーのときに
温水シャワーを流しながらこんなに気持ち盛り上がれるなんて
は。じ。め。て。
お風呂から上がって、髪を乾かしたら、なんだか根元に力があって
毛の立ち上がりがいいし、艶が一段といい。
いいじゃん。このシャンプー!!
『シャンプー瞑想』か。。。
ヘアスタイルが決まったなぁ。気分いい。生まれ変わったみたいに目元がぱっちり、フェイスラインがキリッとした。
私は鏡の中の私に向かって、
今のありのままのわたしが人間らしくて好き。ってウインクしてみた。
気がついたらラインに彼から返事きていた。
(ごめん、コロナになっちゃって、熱で、もう死にそうだった。お前のラインに励まされたけど、返す力がなかった。)
一言(コロナになった)ってラインくれたらぺてん師の汚名を着せなかったのに。
でも私気分がなぜか最高だったから、
いつもみたいにひねくれたりせず、
ラインくれて、それだけでも、ありがとう!!て思えたよ。
窓からは煌々と月明かりが差し込んで
いい月夜になった。
今夜は最高!!
うたかたと髪を月夜へ掻きあげる 美文