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一子、YAZAWAになる
「俺はいいけどYAZAWAが何て言うかな?」
矢沢永吉さんの名言である。
夫が亡くなり、とても深い、とても暗い井戸の底で暮らして二年が過ぎ、もうこれからもずっとそこに居続けるのではないかと思っていた私がふと気が付くと、いつの間にか復活していて、真夏の8月の最高に暑い日の陽光の下、ホテルのプールサイドで若いツバメにジンソニックのトニックウォーターが甘すぎると文句を言っていた。
ツバメ君が、ジンリ
あンまり役に立たない浅草ガイド①
一子さん、どうして浅草に住み始めたのですかと何度も何度も尋ねられる。
亡くなった夫の愛した浅草だから、その夫が晩年病で歩けなくなり、麻布のだだっ広い家ではつかまり歩きが出来ずほどほどの広さの浅草のマンションが丁度良かったから、主なかかりつけの築地のがんセンターにタクシーで直ぐに通えたから、その夫が、縁もゆかりもない場所で逝きたくない僕は僕の家で死にたいんだと言い張ったから…
そして、彼を実際に
スナック美奈子(仮名)
暑すぎる今年の夏の引きこもり生活で中断していた、スナック美奈子を開店にこぎつけるべく、半年ぶりに物件探しを再開しました。
隅田川沿いにひっそりと佇むスナック美奈子が開店するのはいつのことになるのやら。
ちょっとしたお通しやお料理を考えるのも楽しい。
酒の肴になる、旬の野菜、魚、肉、山菜を使って。
因みに、スナック美奈子は無音です。BGMはありません。
カラオケなんて勿論ありません。
美奈子マ
エルメスを売り捌き、良寛の書を買う
夫が亡くなり、断捨離を始めた。
よくある話である。
私に子どもはいないので、特別遺さなければいけな財産は必要ない。
以前は、使わなくなったブランド品や洋服は、年若い友人によろしければと譲っていた。そんな私の気前の良さを同級生の友達に、もったいないわね、今は何でも売れるのよと忠告された。
そうして、あまり使った事のない新品同様のエルメスのバッグを買い取ってもらったら、当時買った値段以上になった。
アートディレクターと結婚寸前までいって、別れた話
20代の後半から、30代半ばまで、名の通った年上のアートディレクターと恋愛し濃密な時を過ごした。
お互いに家は別々にあったのだが、彼の住むインテリア雑誌に何度も取り上げられる家を維持していくのが経済的に難しくなり、仙台坂上のマンションを引っ越し、目黒の私の家に一緒に住むようになった。
業界の話は分からないが、重鎮になればなるほどギャラも高くなり、次々とギャラも安くセンスの良い若手に追い上げられ
触らないでもらえますか
浅草のデパ地下にある老舗の魚屋さんで、とうとうそう言ってしまった。
思えば、最初から変に媚を売る男性店員だった。
買った商品を受け取るたびに、妙になれなれしく私の手を触り接触の多い店員だなと思ってはいたのだけれど、最初から確信犯であることは分かっていたが放っていた。
そこの魚は、他の店より間違いなく美味しいし、質も良い。
いつもその店員が対応するとは限らず、ずっとそこで魚を買っていた。
その
何者でもない人生を望む
子どもの頃からずっと、何者にもなりたくない人生を送って来た。
根が怠け者なのだろう。
「普通の人生」を送るのが望みなのは、今も昔も変わっていない。
自分には何の特筆すべき才能もなく、何者にもなれないという合理的な考えの元、生きて来た気がする。
天才が努力をしてより一層の高みを目指す厳しい世界で、私は私の等身大のままでいいのだ、小さな世界を小さく生きるのが妙に気持ちが良いと思う人生観だ。
本を読
当たり前じゃないですか
毎日毎日、ご飯を食べて、掃除して、洗濯して、お風呂に入って、ゴミ出しして、税金を払って、健康保険料を払って…
エアコンが壊れて付け替えに来てもらったり、定期的に契約している換気扇のクリーニングの人もやって来る。
引きこもりの生活の私ですらやることは多い。
そういうことが、全てめんどくさくなった。
何もしたくない、何も考えたくない、誰とも会いたくない。
そんなある日、たまたま気分が優れていると