第19週: 竹林の小径とレイク・ウォビゴン村
京都帰省
1歳になった孫の顔を見せるため、久しぶりに京都に帰省した。子どもの成長をシェアできるアプリ『見てね』(英語版は『family album』)で孫の成長をいつでもスマホからみることができる時代になったが、リアルな孫の顔を見て両親も大喜びだ。
せっかく京都に帰ったので、妻と子供に地元を案内するため、ドライブに出かけた。京都市西部の嵐山にある竹林の小径(こみち)は、野宮神社から天龍寺北門を通り大河内山荘へ抜ける約400メートルの道で、京都を代表する観光スポットだ。地元とはいえ正直ちゃんと行ったことがなかったので、いい機会だと思い行って見ると、外国人観光客でごった返しており、日本人の方が少ないぐらいだ。こんな竹が生えているだけの道に世界各国の人たちは何の価値を見出しているのだろうと不思議に思ったが、京都の蒸し暑さにも負けず、消しゴムマジックで人混みを消しながら記念写真に勤しんでいる外国人を見て合点がいった。いかにも京都っぽいところで旅行を楽しむ「わたしたち」をSNSでシェアするためだ。Instagramで#arashiyamabambooforest(嵐山竹林)と検索すると映えた人たちがいっぱい出てくる。
アメリカの作家、ギャリソンキーラーが作り上げた架空の村レイク・ウォビゴンでは、村の誰もが自分や自分が所属するグループが平均以上だと認識する傾向を持ち、この心理的なバイアスのことを「レイク・ウォビゴン効果」といった。この嵐山の竹林もレイク・ウォビゴンの村民で溢れかえっている。実際には全ての人が平均以上などということは原理的にあり得ないのだが、自分(とその仲間)が平均以上だと感じることで自己満足に至ることが大事なのである。マウント合戦に終わりはない。