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アダルトチルドレンのポエム“燃える沈黙”

燃える沈黙



まるで海の中で溺れているようだった。何度顔を上げても、あなたのいる陸にはたどり着けない。波は大きく、私の口を覆い尽くす。

悪夢にうなされていた少女は目を覚ました。いつもの薄暗い部屋に戻ってくる。
「ジューーン!早くしなさい!」
ママのけたたましい声が聞こえる。急いで行かなければならない。

大きなママが仁王立ちして、わたしを見下ろしている。止めどなく続く責めるような言葉。地団駄を踏みながら怒鳴るママに、ただ従うしかなかった。
「それでいいのよ」
と言われながら。

だけどわたしの中には、たくさんの思いが溜まっていた。それは発酵してガスとなり、体の中で膨れ上がっていた。早く出さないと、わたし自身が爆発してしまう。

小さな体は震え、つま先から頭まで真っ赤になる。涙が止めどなくこぼれ落ちた。

「ねえ、ママ、わたしの話を聞いて!」
心の中で叫ぶ。言葉にならない言葉が喉の奥から込み上げるけれど、それは口から出られない。押し留められたまま、頭の中をぐるぐると旋回する。

やっと一人になって横になる。目を閉じても、また始まるのだ。耳元で続く止まらない声。それは幻聴だった。

そしてついに、私の小さな頭が爆発した。焦げ臭い煙、血が火花のように飛び散る。
「痛いよ!助けて!」
そう叫びたかったけれど、ママはただ怒鳴るだけだった。
「汚いじゃないの、やめなさい!」と。

私は泣くこともできず、煙の出る頭を抱えて逃げた。

爆発してしまう頭でも、生きていくためには外に出なければならない。
何度も爆発を繰り返し、今度は顔が、次は手が飛び散る。
誰かが声を掛けてきても、何を言っているのかわからない。
焼けただれた恐ろしい顔に人々は凍りついた。せっかく差し伸べられた手をも、握ることはできなかった。

周りにいる人々に火の粉を浴びせた。
少女の周りには誰も近づかない。

逃げたい。
どこにも行く場所はないけど、
足だけはかろうじて動くことに気づいた。
強い痛みに耐えながらゆっくりゆっくりと足を前に進めた。
一歩一歩、血の足跡を残して。

最後にたどり着いたのは、山小屋だった。そこで少女は一人で暮らし始める。山の生活は少女にとって癒しだった。動物たちは、少女の話にじっと耳を傾けてくれた。

やがて少女は大人になった。
体の大きな傷は、時間とともに塞がり、頭は黒髪に天使の輪が見える。

ただ、あの声だけは、今でも時折聞こえるけど。

少女は大人になってから、時々ママに会いに行っていた。

ママも自分がされたように、子供の頃に傷つけられていたこと。
遠くから一人でやってきて、孤独の中で戦っていたことも。
そのことを、山の動物たちが教えてくれたから。

だから、ママの話をたくさん聞いてみた。
ママの背中が丸くなった頃

「ねえママ、今日はこんなことがあったのよ」
そう話すと、ママは私の目の高さでゆっくりと微笑んだ。
「そうなの。よかったわね!!」と。


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じゅんじゅん
同じ苦しみを持つ人々に励みになればと思ってます。サポート待ってます。(⌒∇⌒)