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洋楽バロンドールを決める 1970~79年編 part2
趣旨を知らない人はこちらをどうぞ↓
1970年
1位 レッド・ツェッペリン
2位 サイモン・アンド・ガーファンクル
3位 ジョージ・ハリスン
長らく続いたビートルズ王朝がついに王冠を明け渡した相手がレッド・ツェッペリンだ。この年のツェッペリンはアルバム『Ⅲ』のリリースしかしてないものの、前年からの活躍に加え、当時から完成されたライブパフォーマンスを見せており、この年いちばん注目と評価を集めていたバンドだといえる。
サイモンアンドガーファンクルやジョージ・ハリスンも、彼らのキャリアハイといえる年を送ったものの、やはり世代交代という意味でツェッペリンほど受賞に相応しいアーティストはいないだろう。
ちなみに4位は新人ながらも異質な存在感を放ったブラック・サバスを入れてやりたい。いや、ファンクを完全に確立したJBも入れてやるべきだったか…?
他にも新人ながらブレイクしたアーティストは非常に多く、カーペンターズ、エルトン・ジョン、ジャクソン5、ヴァン・モリソン、ジェイムスブレイク、デレク・アンド・ザ・ドミノス、CSN&Y、ニール・ヤング、ディープ・パープル、プラスチックオノバンド、ストゥージズ、カーティス・メイフィールド、ピンク・フロイドなどが挙げられる。
60年代の文化的ビックバンを経て、様々なタイプのアーティストが出てきたわけだ。
1971年
1位 レッド・ツェッペリン
2位 キャロル・キング
3位 マーヴィン・ゲイ
恐らく、歴史上1番の当たり年である。
この年にリリースされたアルバムや楽曲群を見るとその凄まじさに圧倒される。
その中でも「1年の内のヒット曲の多さ」を重視すると、ベテランSSWとして圧倒的な成績を叩き出したキャロル・キング、もしくは前年からさらに進化を遂げハードロックの芸術性の頂点を極めたツェッペリンのどちらかの戦いだ。迷う、非常に迷う!
ちなみにグラミー賞はキャロル・キングが受賞してるが、これはリリース日がキャロルの方が圧倒的に早かったのもあるだろう。というわけで代表曲対決といこうじゃないか、『stairway to heaven』か『it's too late』もしくは『you've got a friend』か。そう考えるとややツェッペリンの方が押し勝っている…?というわけで僅差でツェッペリンが受賞することになったとさ。
3位はニューソウルムーブメントを巻き起こしたマーヴィン・ゲイがランクイン。アルバムの完成度だけで言うと実は彼も1位にふさわしいかもしれない。
それ以外にも非常に名曲と名盤が生まれた年であり、ジョニ・ミッチェル「blue」,ジョン・レノン「imagine」,ローリング・ストーンズ「Sticky fingers」,ピンク・フロイド「middle」,ジャニス・ジョプリン「Pearl」,ポール・マッカートニー「RAM」,ザ・フー「Who's next」,イエス「fragile」,ジェスロ・タル「Aqualung」,T rex「Electric warrior」、デヴィッド・ボウイ「Hunky Dory」など枚挙にいとまがない。
1972年
1位 ローリング・ストーンズ
2位 デヴィットボウイ
3位 スティービーワンダー
1968年以来絶頂期を迎えたストーンズが、この年さらにギアを上げ悲願の受賞を遂げる。大傑作『exile on main street』を発表し、ツェッペリンと互角以上のライブパフォーマンスを繰り広げた彼らは最早敵無しと言っていい強さを誇っていた。ただ残念ながらこの年をピークに段々と下降線を辿っていくこととなる…。
2位は名盤『ジギースターダスト』を発表しグラムロックスターとしての地位を確立したデヴィットボウイがランクイン。3位は確変状態に入ったスティービーがランクイン。「superstition」や「You're my sunshine」など名曲を連発する。
デヴィッド・ボウイ「ジギースターダスト」イエス「close to the edge」、ニール・ヤング「Harvest」、ルーリード「Transformer」、ポール・サイモンのソロ1stなど他にも名盤がリリースされ、それと同時にアル・グリーンの「Let's stay together」やイエスの「Take it easy」、エルトン・ジョン「Rocket man」、ディープ・パープル「Smoke on the water」、テンプテーション「Papa was a roliing stone」など大名曲も登場してる。
R&B界隈もスティービーワンダーの孤軍奮闘でなくダニーハサウェイやカーティス・メイフィールド、オージェイズなども活躍してる。
1973年
1位 ピンク・フロイド
2位 スティービーワンダー
3位 エルトン・ジョン
この年はやっぱりピンク・フロイドだろう。「狂気」は世界で最も売れたアルバムのひとつであり、プログレがいくらオワコンになろうがこのアルバムは未だに輝きを放ってる。
ただスティービーワンダーだって負けていない。名盤『innervision』をリリースし、昨年よりさらに勢いを増して活躍する。この時代は正直ロック勢が圧倒的な強さを誇っているが、それでも孤軍奮闘状態で抵抗しているところが恐るべし。3位はイギリスのシンガーソングライターとして確固たる地位を築き始めたエルトン・ジョンがランクイン。割とこの時期SSWが強いな。
デヴィッド・ボウイ、ポール・マッカートニー(ウィングス)、ポール・サイモン、グランドファンクレールロード、マーヴィン・ゲイ、イギーポップ、ザ・フー、ELP、ツェッペリンなどもノミネート候補。
新人としてはエアロスミス、キッス、クイーンの御三家も思い浮かぶ。
ストーンズの「Angie」,zz topの「la Grange」,イーグルスの「Desperado」,レーナード・スキナード「free bard」,ボブ・ディラン「knockin on heaven's door」,ビリージョエル「piano man」,カーペンターズ「Top of the world」など、楽曲単位ではあるものの活躍したアーティストも多数。
1974年
1位 エルトン・ジョン
2位 スティービーワンダー
3位 ウィングス
正直71~73年が当たり年すぎて、この年はあまり存在感が薄い。一年を代表するアイコニックな名盤もなければ、ヒット曲も少ない。とゆうわけで、前年から精力的な活動をしてきたエルトン・ジョンがMVPに最もふさわしいのではと考えた。もちろんスティービーワンダーも充分受賞にふさわしいが、メタ的にみるとワンダーはこの後前代未聞のキャリアハイを記録するため、ここはエルトンジョンに取らせて、再来年までお預けにするべきではと贔屓してしまった。
3位は同様に前年からヒット曲を続けて放ち、ソフトロック界隈で確固たる地位を築いたウィングスが当てはまるだろう。一応クラフトワークやクイーンなどの新人アーティストも台頭してきているだけでなく、ジョニ・ミッチェルやキング・クリムゾンも名盤をリリースしており、シーンは引き続いて目白押しなアーティストがたくさんいる。
他の候補としては「Sweet home arabama」のレーナード・スキナード,「Waterloo」のアバ,「Can't get enough」のバッド・カンパニー,「Docter docter」のUFO,「Rebel Rebel」のデヴィッド・ボウイ,「it's only rock'n roll」のストーンズ,「i shot the sheriff」のクラプトン,「Burn」のパープルなど、名曲自体は割と多い。
1975年
1位 クイーン
2位 ブルース・スプリングスティーン
3位 ボブ・ディラン
この年はかなりの当たり年だ。
カルトバンドのレッテルを貼られていたクイーンが「Bohemian rhapsody」が収録された「オペラ座の夜」をリリースし、英国中に圧巻の実力を知らしめる。対するアメリカもブルース・スプリングスティーンが台頭し、アメリカンロックに新しい風を吹かせた。ボブ・ディランやレッド・ツェッペリンなどキャリアが中堅に差し迫ったアーティストも第2次黄金期に突入し、名曲・名盤を発表。新旧どちらもバランスよく活躍している。
エルトン・ジョン、イーグルス、EWAF,エアロスミス,キッス,ベイ・シティ・ローラーズ,パーラメント,バッド・カンパニー,フリートウッド・マック,ピンク・フロイド,レインボー,パティ・スミス,ジョニ・ミッチェル…など非常に豪華なメンツ。
さらにはディスコの最初期の楽曲「Hustle」もこの年リリースされてる。
1976年
1位 スティービーワンダー
2位 アバ
3位 イーグルス
スティービーワンダー無双の年である。ABBAが「dancing queen」、イーグルスは「ホテル・カリフォルニア」をリリースするというどちらの経歴の中でもキャリアハイとなる超重要な年なのだが、相手が悪すぎたというしかない。
この年ワンダーは1年の休養を経て異常な創作意欲をみせた。「Sir duke」「i wish」「knocks me on my feet」「pastime paradise」「isn't she lovely」「As」「another star」…と、後世におけるR&Bのスタンダードナンバーとなる名曲を連発しており、それは64,67年のビートルズに匹敵するほどだ。もしかしたら互角以上かもしれない。
まあ、文句なしの受賞です。
ボストン、ウィングス、キッス、デヴィッド・ボウイ、ボズ・スキャッグス、クイーン、エアロスミス、ラモーンズ、ACDCらがノミネート。
1977年
1位 セックス・ピストルズ
2位 フリートウッド・マック
3位 スティーリー・ダン
1971年に匹敵する素晴らしい年だ。アングラで燻っていたパンクロックがロンドンに波及し一気にロックシーンが活気づく。ボブ・マーリーがロンドンに亡命し、デヴィッド・ボウイはベルリンで先鋭的な音楽を放つ。一方アメリカではソフトロックやディスコやAORといったシリアスさを薄めたジャンルが商業的な意味でも芸術的な意味でも頂点を極めた。この年にアーティストらが生み出した音楽は正に「新陳代謝」といった状況で、後の80'sの流れに繋がってくる非常に重要な年である。
特にドナ・サマー「i feel love」は後のハウスの流行に欠かせない1曲。
さらにビリージョエル,アバ,ELO,クイーン,キッス,テレビジョン,トーキング・ヘッズ,クラッシュ,ダムド…この年も非常に豪華だ。
さらにオルタナシーンを除けばスーサイドなんかも見逃せない。
1978年
1位 ビージーズ
2位 ヴァン・ヘイレン
3位 ローリング・ストーンズ
1977年が凄すぎたのか、この年は結構空洞状態であり、一応セールス面でぶっちぎりの人気を誇っていたビージーズがディスコを代表して受賞。ただここまでの受賞者メンツを振り返ると、明らかに彼らは浮いてるよなあ…という気がしなくもない。
2位はヴァン・ヘイレン。タッピングを利用した革命的なギターサウンドが停滞しかけてたアメリカンロックにさらなる新風を吹かせる。
そして3位は昨年のパンクとディスコに対してオールドウェーブの意地をみせたローリング・ストーンズが久々にノミネート。
パンクシーンは英米どちらも非常に活気があり、PIL,ザ・ジャム,エルヴィス・コステロ,ブロンディ,ディーヴォ,ポリスなどが続々とブレイク。
ポップシーンも元気が無いわけではなく、AORやソフトロックっぽいチープ・トリックやドゥービーブラザーズなんかも売れていた。
他にもクイーンやビリージョエルなんかも絶好調の活躍を見せてる辺りを考慮すると、ハズレ年では無いだろう。
1979年
1位 マイケル・ジャクソン
2位 ピンク・フロイド
3位 クラッシュ
この年を一言で言い表すなら「ポスト・1977年」と言ったところか。ディスコが急激に衰退する中でマイケル・ジャクソンが「off the wall」にて新たなアプローチを指し示し、パンクが衰退する中で「London calling」や「unknown pleasure」といったポストパンク的な作品が出てくる。そして昨年のストーンズ同様、ピンク・フロイドが「The wall」にてオールドウェーブとしての意地を見せた。正に70年代を締めくくるにふさわしいといえる。
ちなみに「Rapper's delight」というヒップホップ初のレコード曲が出来た記念すべき年でもある。
とにかくメジャーを見てもアングラを見てもエネルギッシュで、ノミネート候補も沢山いる。
ブロンディ,EWAF,ダイアナ・ロス,フリートウッド・マック,ザ・ナック,シック,ジャーニー,ダイアーストレイツ,ACDC,レインボー,キッス,ザ・キュアー,バズコックス,ジョイデヴィジョン,XTC,ポリス。
今までと比べて、急激に新陳代謝が起こってる様子だ。
○インフレ度
今回もインフレ度を計ってみた。
1970年 14.0
1971年 13.0
1972年 11.0
1973年 15.0
1974年 9.5
1975年 13.5
1976年 10.0
1977年 11.5
1978年 9.0
1979年 11.0
やはり1970~73,75年がずば抜けてる。70年は割と地味だと思っていたのだが、こんなに熾烈だったなんて意外だ。
では80年代編は後日アップロード予定なので待っててください。ではまた