「天花との酒盛り」
「生きてる感じがするなぁ……」
天花との一年ぶりの再会を肌で楽しみながら、
ちゃぷ ちゃぷ と僕が歩くたび心地よく鳴り渡る音に耳を澄ませていた時に、自然と独り言が口から溢れた。
凍雲に身を包んだ鉛の空に向かい祝杯をあげた僕は、熱った体をちょうどよく冷たい風に叩いてもらい、すっかり調子が良くなっていた。
酒がサウナだとしたら寒風が水風呂で、買い物帰りに朗らかに歩む僕は、その交互浴がこれ以上ないくらいに心地よく幸せな瞬間となっていた。
部屋の中からガラス越しに見る雪も良いが、やはり僕は精神の根底に生に対する爆発的な情熱を秘めているのだとつくづく思う。
朝の段階で雪が降ると分かった時点で、僕の心は尻尾を振るう犬のように、その時が来る瞬間に惑溺していた。
濡れるだとか、寒いだとか……そんなことは関係なく、ただひたすらに世界を楽しめることに喜びを隠さずにはいられなかった。
今日は酒を飲むまいと決めていたものの、こんな日にこそ飲まないという選択肢はあまりにも勿体無い。
この文章が書き終わったのち、また酒を片手にふらふらと白銀の大地に身を繰り出すのだ。
しんしんと舞い降りる雪が、心地よく僕の目を覚ましてくれるのだから。
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