産後の不安定な心に寄り添ってくださった医療従事者さんに感謝
私は4月末に第二子となる男の子を出産した。
産後すぐはホルモンバランスの急変により精神的に不安定になりやすいらしい。
重い症状はなかったものの、私にもそれらしきものが現れた。
そのときの話を書く。
*
私が出産した病院は総合病院で、産後5日目に退院となる。
退院前日、つまり産後4日目、この時点では気分の落ち込みなどはなくいつも通り過ごしていた。
その日の夜、私の病室に助産師さんがやって来た。
「赤ちゃんの黄疸の数値がちょっと高いので、念のため明日の朝にも計測させてください。
まあ大丈夫だと思うけど、念のためね!」
「あ、はい…」
返事をしたものの、黄疸の数値が高いとはどういうことなのか、何をもって大丈夫なのか、私はよく分かっていなかった。
質問すればよかったのだが、すぐ言葉が出てこなかった。
その晩はずっとモヤモヤしたままだった。
*
翌朝、黄疸の数値なるものを再計測した。
しばらくして、助産師さんが病室に来た。
「昨日より黄疸の数値が上がってるので、赤ちゃんの退院は1日遅らせましょう。あとで小児科の先生が説明に来ます。お母さんは問題ないので今日退院できますが、赤ちゃんといっしょが良ければ明日退院でもいいですよ。
どっちがいいですか?」
ショックだった。
頭をがつーんと殴られたような感覚。
退院できないだと?
息子は大丈夫なんだろうか?
数値が下がらなかったらどうなるんだろうか?
いっきに不安が押し寄せた。
そして自分の退院をどうするかも悩ましかった。
できれば息子といっしょにいたい。
あと、おっぱいが母乳でパンパンに張って痛くてしょうがなかったので息子に吸ってもらいたかった。
とはいえ、自宅では上の3歳の娘が私と赤ちゃんの帰りを待ち侘びている。
私だけでも帰ってあげたい。
私の退院をどうするかは夫と相談してから決めさせてもらうことにした。
すぐに夫に電話したところ、娘がかなり寂しがっているので私だけでも帰ってきてほしいとのことだった。
私も娘に早く会いたい。
娘にとって母親である私と何日も離れるのは初めてだ。
きっと心細いだろう、早く帰ってやりたい。
一方、息子の方は私がいようといまいと、大した差はない。
あるとすれば母乳が飲めるかどうかだが、ミルクでも全く問題はない。
私が搾乳しておっぱいの張りをどうにかすればいいだけの話だ。
息子には申し訳ないが、私は予定通り退院することにした。
助産師さんから話を聞いてから、ずっと心がザワザワしていた。
息子の体は大丈夫かという不安、
先に退院することの罪悪感…
気付くとぽろぽろと涙が出ていた。止まらなかった。
第一子の産後もちょっとしたことでよく泣いていた。
経験済みとはいえ、感情をコントロールすることはできなかった。
助産師さん曰く、息子は元気で、黄疸の数値が高いことはそんなに深刻なことではない とのことだった。
泣くほどのことではない。
そう頭では分かっていても気持ちがついてこない感じだった。
*
ほどなくして、小児科の先生が説明にやって来た。
物腰柔らかで穏やかな50歳くらいの男性だった。
先生はとても丁寧に説明してくださった。
黄疸とは何か
なぜ数値が高いといけないのか
数値が下がらない場合の治療方法
などが分かった。
息子の場合、光線療法という黄疸の治療が必要か判断するために、あと1日病院で経過観察が必要とのことだった。
明日もう一度計測して下がっていればそのまま退院、上がっていれば治療のため追加で2日くらい入院してから退院 とのことだった。
説明していただいたことで疑問は解消されたが、まだ心はザワザワしたままだった。
先生の前なので泣かないように我慢していたが、今にも泣きだしそうだった。
説明の後、先生はすぐには病室から出ず息子を見てにこにこしていた。
先生「かわいいですねぇ、お名前はもう決まってるんですか?」
私「あ、はい。〇〇といいます。」
先生「〇〇くんかぁ、良いお名前ですね。大丈夫、〇〇くんは元気ですよ。
でも、いきなり黄疸だ、退院できない なんて言われたらお母さんもびっくりしますよね。ごめんなさいね、いっしょに帰りたかったですよね。
黄疸は新生児にはよく見られる生理的な現象なんです。決して病気ではないです。どうか安心してくださいね。
」
私「はい…ありがとうございます。」
私の精神状態を察してくれたのか、先生は優しく語りかけてくださった。
不安な気持ちに寄り添ってくださったのがありがたかった。
先生が病室から出て行った後、また少し涙が出てきた。
でも、さっきより心は落ち着いていた。
不安による涙ではなく、安心の涙だった。
その後、助産師さんが病室にやって来た。
赤ちゃんと私の退院が別日になるということで、事務手続きなどの説明をしてくださった。
説明の後、助産師さんは私を励ましてくださった。
「上のお子さんのことも心配ですもんね、帰ったら上のお子さんのこと抱きしめてあげてください。赤ちゃんのことは大丈夫ですよ。安心してくださいね。」
息子を残して私だけ先に退院することに後ろめたさを感じていたが、助産師さんの言葉で胸のつかえが取れた気がした。
そして私はその日に退院した。
翌日の計測で黄疸の数値は下がっていることが分かり、1日遅れで息子は無事に退院した。
*
先生や助産師さんの温かい言葉には本当に感謝している。
病院のスタッフさんは常に忙しそうにされている。でもその中で患者の気持ちに寄り添ってくださっている。
医療従事者の方々には本当に頭が上がらない。
息子が大きくなったらこのときの話を聞かせてあげたいと思う。