出不精旅日記(台湾) 2024.11.30 森の底で風の歌を聴く 墾丁国立森林公園
台湾も5日目、そろそろ旅の折り返し地点に来ました。
体調が悪い人が気になりますが、さて今日はどうしましょうか…。
「風邪は大丈夫そうだよ。これから墾丁の森林公園に行く。まずはバイクを借りに行こう」
あ、バイクで行くのですね。
ホテルのスタッフさんにバイクが借りられる店でおススメは無いかと訊くと
「どこも一緒。バス停前にいくつかあるよ」
台湾はバイク大国。利用者が多いので競争も激しく、値段やサービスはどの店もそれほど変わらないとのこと。
というわけで恒春のバスステーション前の一軒に入ってみます。
マダムと老犬2匹がお出迎えしてくれ、夫のパスポートと免許証(中国語に翻訳したものが必要です。バイクをレンタルする場合は渡航前に準備します)をチェックして、制限速度や返却時はガソリンを満タンに…などの約束事を確認して誓約書を書きます。
ちなみに24時間お借りして400元。
分かりづらいところはGoogle翻訳などを使って丁寧に説明して下さいました。
「今日は風が強いからゆっくり走るんだよ」
海の近くだから海風が吹きつけるそうです。
細やかなアドバイスも頂いて、いざ出発!
※台湾のバイクレンタルについてはこちらが参考になります。
確かに海風は強めでしたが、晴れた海が綺麗で爽快でした。
25分ほど走って墾丁に到着。
コンビニで簡単なお昼を買って、ここからは山道です。
10分ほど登って、到着。
駐輪場の傍らの木を見上げると…
入園料を払い、地図を頂いて、いざ散策!!
ここは今回の旅で唯一私が「行きたいな」と希望した場所。
とにかく、心から、森に来たかったのです。
私はしんどいことがあると森に救われるタイプ。
これに気付いたのは30代も後半でした。
もう目の前が真っ暗、絶望のドン底というときに友人が連れて行ってくれた長野の森、夫が連れて行ってくれた千葉の森…。
私はこんなにダメダメなのに、どんな時も木々は何も言わずに優しく受け止めてくれる…。
森にしばらくの間深く沈み込み、木や風と話し合い、その歌を聴き…。
しばらくして森を出る頃には、曇っていた心が少し晴れて、何となくホッとして、その日を境に私は少しずつ元気になっていきました(もちろん、友人や夫にも深く感謝しています)。
今年は、結構しんどいことが多かったのです。
だから都内の、例えば林試の森なども良いのですが(いいですよね、林試の森)、せっかく台湾に行くのだから森を訪ねたい…。
これが私の希望でした。
途中にあったベンチで一休み。
コンビニで買ったおにぎりやパンを食べつつ、周囲を観察します。
ハイキング風の老夫婦、にぎやかな家族連れもいますが、入園者は少なめ。
地元の方が多いようで、観光客っぽい人は私達もふくめてチラホラしかいません。英語を話していたのは一組だけ。
アクセスがちょっと面倒ということはありますが、ここは穴場スポットですね。
南部はもちろんですが、台湾全土の植物が観察できるので、植物好きの方には心からお勧めです。
あちこちでスタッフさんが雑草を刈ったり剪定したりしていて、手入れも行き届いています。
山の斜面を利用しての公園なので、多少の高低差があります。坂道や階段があるので、履物はスニーカーでないと辛いかも。
私達は結局すべての道を歩き回りましたが、途中で展望台もあり(タイミング悪く掃除中だったので登りませんでしたが)、お年寄りは前半のなだらかな道と展望台だけ、というのんびりルートを採用しているようでした。
私達はあまりおしゃべりせずに歩いていましたが、夫は元気のない私をみかねて、たまに声をかけてくれます。
「飲食店は本当にしんどいからね…毎日マラソンをしているようなもんだから。きつくて続かない人も多いのに、君は原稿も書いて、介護もあって、その上悩みごともあったらおかしくもなるよ」
そうでしょうか? 周りの友達を見回しても、私は楽な方だと思うんですが…
「認知が歪んでる。確かに大変な人も多いけど…君も相当だから。
あと君の周りは働くのが好きな女子が多すぎる。みんな、もう少し気楽にしていいんだよ」
私達氷河期世代は、ダブルワーク、トリプルワーク、普通にやっちゃうのです。だってそうしないと食べられなかったのだもの…。
でも若い頃からずっとこの調子だから、疲れが出て来るお年頃、体も、心も…。
話したところで状況が一変するわけではないけれど、夫の励ましのお陰で心の荷物は少し軽くなりました。
「じゃあ、お昼を食べに行くよ。バイクでちょっと距離はあるけど、ベトナム料理ね」
またまた海沿いをひた走り、結構距離はありましたが(笑)無事に到着。
どれも本当に美味しい!
来て良かった☆
機会があったらまた伺いたいです。
お味に感動していたら夫が
「あれれ…俺、やっぱり何だか調子が悪いかも…」
と言い出したので、寄り道せずにまっすぐホテルに。
だからコートを着てくれば良かったのに、出がけにおすすめしたのに…と思いましたが、暑がりなので仕方ないですね…とほほ。
バイクは24時間以内に返せばいいので、ホテルに停めさせてもらいます。
ご心配をおかけするかも…と思いつつも、夫はホテルのスタッフさんに
「ちょっと調子が悪いんだ」
と伝えていました。旅先だし、念のため伏線をはっておこう…回収しなくていいけど。
スタッフさんは
「分かった、よく休んでね。何かあったら言ってね。薬もあるよ」
と言ってくれます。ありがとうm(__)m。
そしてお昼寝。よく歩いたので「夫は寝かせて読書しよう」と思っていた私もグーグー寝てしまいました。
目覚めるともう夜?
ガサゴソしていると思ったら、夫が身支度しています。
「お腹空いた?」
「ベトナム料理いっぱい食べたし…私は全然空いてない」
「俺は食べたい。昨日の店が美味かったからもう一度行ってくるわ。風邪うつしても悪いからテイクアウトにする。バイクでちゃちゃっと行ってくるから寝てて」
いや、あなたこそ寝ててくださいよ、異国で夜道を運転とか怖すぎる…と言う間もなく出かけていき、すぐに戻ってきました。
「いやー、本当にいい店だったわ。女将さんがうちのショップカードくれっていうから渡してきた。facebookで繋がったし、写真も撮ったよ」
「食べたら寝て下さい。薬飲んで寝て下さい。いつも調子に乗って動いて少しずつ悪くしていくんだから、ここで食い止めましょう。
はい、『族長の秋』はしまう、空気公団も明日聴く」
「わかったよ…薬も飲んだし、もう寝るよ」
私もチャーハンを半分ほど頂いて、ちょっと読書をして、早く休むことにします。
目を閉じると、まだ森の気配を感じました。
ありがとう…私はもう少し頑張れそうです。
(つづく)