サイコパス・ドラッガー #19 ism

 有れから幾つもの時が過ぎ去った。明日美と云う神は今日も健在だ。新世界と云うパズルのピースを一つ一つ解いている。其処に他意は無い。応えを探しては求め、立ち止まりまた加速する。エンジンは音を立てて吹かされ雄々しく気高く邁進して行く。其れに従う民達。後には通り過ぎた道。見渡せば新世界の日常。過ぎ去るは凄惨な想い出、か弱き乙女の揺れ動く内情のココロの声。此れで良い。順調。誰もがそう想っていた。旅路は此処から始まる。見据えた白地図は上乗せされた虹色を歓び希望の匂いの風を運び何時しか新しい春の芽吹を感じていた。彼女は二十一歳を越えまた一段大人の階段を登ってゆく。神。神々しさの光を解き放ち人々を救う存在に成り行く彼女を慕う者も数知れず。第一世界の現実という退屈な今は着実に変わって行って変化を絶やさない。此の世に存在する人間含む凡ての命の有が代償で有り犠牲者で有り幸運の持ち主なのだ。彼女は嘲笑う。只笑う。このちっぽけな生を、大地を、全宇宙を、肉体を。産まれて欲しいと言った訳でも無いのにこんな星に生まれた。怠惰。無風。感情が波を打って体内に宿り血潮を巡らせ渇望する。生きてゆく証、確信。此れが私の命運の道。我流で進む天の道、総ての術。ならば答える空に問う、次の在り処を生存本能を未来の光を。其れは何処か。其れは何か。否、気付いている事柄。たった一つの解答即ち確定の事実。私が初まりの零の存在、上なる有。天照大神よりゼウスより格上の存在。そんなの御伽噺、虚偽のフィクション。現実の神なら此処に在る。私が一番偉い。批判なんて愚の骨頂。命令は絶対服従他に皆無。真新しき歴史なら此処から始まる。所謂真の正史。全てがスタートする新世界の合図。夢を見る。多幸感の絶頂を。極みの到達点を。願わない者など皆無で有り無であり滅ぶべき者なのだ。今日も明日美は只働く。凡ての生命の賛美歌を謳い掲げ朗らかに舞う。姫の如く。そして眠っては繰り返す、その聖なる生命の煌めきの彼方へ向って。物語は有無を言わず展開するのだ。未来は……言うまでも無い。

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