その心 魔神か真神かマジンガー
まだ元旦地震のショックが抜けてません。
被災された方は、ショックどころではないでしょう。その心中を思えば、被災もしてないのに「ショックです~」なんて間抜けた話です。
でも、ショック。動揺してる。
主題歌で「無敵の力」と歌われたマジンガーZ。機械獣に破壊されたような焼け跡に、これが機械獣との戦いならマジンガーがいれば守ってもくれただろうが、自然が相手なら例えマジンガーでも守ることも戦って倒すことも不可能だ。
マジンガーZは、「正義の心でパイルダーオン♪」して戦うのであるが、正義ってなんだろう。事情が変わり時代が変わり社会が変われば変わることもある。ましてや自然災害に対して正義なんて使いようもない場違いワード、ミスマッチワードだ。
日本では、古来、地震や洪水などの自然災害や疫病の流行などは神の祟りか、神レベルの力を持った悪霊や魔物の仕業という捉え方があった。それが日本神道のベイシックな思想になっていることは周知の通りだが。「力」そのものは善も悪もなく、ただ「力」なのである。それを人間にとって実り――利益をもたらすものとするか、破壊や不幸をもたらすものとするかは、その「力」を持った存在の意思しだいである。まあ、神様の在り様も正義と同じく、時代と社会、つまり人の都合と事情で変わるのだけれども。
架空の存在であるマジンガーZは、意思を持たぬ「道具」である。その強い力を人間にとって利とするか不利とするか、良とするか悪とするかは、このマジンガーを動かす者の意思に委ねられている。魔神となるか真神となるか。ただし、それは同じ土俵に立つものたちの間だけで成り立つセオリーもしくはルールである。つまり人間世界の範疇でのみってこと。所詮、マジンガーは人間が作ったものだから神の領域の自然のセオリーには太刀打ちできないし、そのルールを変えることもできない。
でも、人は、自らが作ったマジンガーのような「力」ですら、制御しきれないこともあるし、呑み込まれ潰されることもある。本当に人類ってか弱い。
社会現象ともなったエヴァンゲリオンもまた人類にとっては禍神のような『使徒』を人類の都合に合わせていじくって設定し直し――つまり「鎮め」て「守り神」にしたような存在だ。日本の神道の神の在り方に似ている。天変地異や疫病などを引き起こす悪鬼や悪霊、邪神など邪悪な存在(時の為政者にとってというものやその都合で悪霊設定にしといた的なものもあるが)を、強大な力があるのならば、祀って鎮めてその力を利用する。そう考えてみるとエヴァンゲリオンという作品は、日本でしか生まれ得なかった、あるいは日本的感性が無ければ生まれなかった作品のように思う。
さて。今更だが、永井豪は、昭和を代表する漫画家の一人である。
彼の作品には、暴力的なシーンやエッチな描写が多い。正直、バイオレンスは好きではないし、エッチシーンはうざったかった。これらの描写のお陰で、ストーリー自体はすごく面白いのにPTA(自作小説のP世界異動マシーンではない方の)に睨まれて子供が読んではいけない認定されていて、今思ってもすごく残念である。ただし、あの頃の漫画は、少年向けならエッチなシーンもしくは過激な暴力シーン、少女向けなら恋愛要素がないとウケないという妙なセオリーがあったから、いたしかたなしと言えなくはない。だが、やっぱり残念であった。
私が一番好きな永井豪作品は、『真夜中の戦士』という短編だ。マジな作品である。永井豪作品の特徴であるエッチなシーンもない(なかったと私は記憶している)。登場するアンドロイドとそれを造った人間との関係に、今ならAIと人類の関係を見る人は多いだろうと思うが、当時の私は人類と人類を創造した神との関係を思い描いた。そして、今でもそれが頭に浮かぶ。
後にSF漫画家の佐々木淳子氏が描いた『ダークグリーン』の神々がチェスをし、人類を象徴する巨人が目隠しで歩く姿のラストシーンを見たとき、私はこの『真夜中の戦士』を思い出した。
万人受けしないかもしれないし、正直、古くさいところがあるかもしれないが、ストーリーありきのものが読みたい、示唆のあるものが世みたい人には二つともお勧めである。
余談だが、佐々木淳子の初期の短編作品は、総じて恋愛要素が皆無で、私はそこが好みだった。何しろ、前出のように当時は、エッチシーンと同じく、恋愛要素がなければウケないという鉄板セオリーがあったから、とってつけたような恋愛要素が無意味に盛り込まれた漫画作品が多かった。とってつけたエッチシーンと同じく、それが私にはうざかった。そんなもんなくても面白いものは面白いし、面白くないものは面白くない。恋愛要素が作品にとって重要なものは当然除くが。
更に余談だが、現在連載中の自作(駄)小説『少女デブゴンへの路』であるが、マジンガーZネタがすでに登場している。更にこの先にも永井豪作品ネタが出てくる。ちなみにハニーちゃんネタである。何となく罰当たりな気がしないでもないが、今更書き直せないし、自分的にこれを削ったら面白くないんである。なんなら、そこの部分、結構気に入っている。このまま行ったれと、開き直っている。
随分と余談だらけのご託を並べてしまったが、まあ、そんだけ自制御ままならない衝撃と同様が今回の災害にあったというわけなのである。