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2024年アニメ映画評16・「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」

 毎年恒例となったちびっこ探偵映画の新作。今回の舞台は北海道函館で、前作と違い、実在する場所が舞台だ。「コナン」映画で函館が舞台になったのは二回目で、一度目は「銀翼の奇術師」だが、舞台と言っても飛行機事故で函館に不時着しただけでなので函館の景観はほぼ出てこない。そういう過去があるからリベンジ(何の?)のために本作を作ったのかも。
 剣道大会に参加する服部平次と、その応援のコナン・蘭・和葉・小五郎が函館を訪れる一方、同所の斧江財閥宛てに日本刀を奪うという予告状がキッドから届く。キッドは、本来ビッグ・ジュエルしか盗まないが、今回は行方不明の父親が昔盗もうとしたということで、例外的に刀の窃盗を決意していた。予告状の存在を知ったコナン・平次はキッドを捕まえようとするも失敗。しかし、その後、諸々の事情でコナン・平次・キッドの三人は日本刀に隠された暗号を一緒に解くこととなり……。
 「純黒の悪夢」以降のコナン映画は結構面白く、今回も良かった。7点。前作「黒鉄の魚影」に比べて暗号が凝っていてて、ミステリーぽっさが増していたのも高評価。ただ、爆発がしょぼかったのは残念だ。函館山か五稜郭はぶっ飛ばして欲しかった。あと、客演というか、「YAIBA」や「まじっく快斗」からの出張キャラが割といて、読んでない人はよう分からんだろうなと思った。
 それにしても、身体能力が人間離れした奴がどんどん増えてるなあ。コナン・蘭や諜報機関周りの人間だけならまだしも、平次や沖田、更にはゲストキャラクターまでフィジカル・オバケばかりになっていて、ザ・パワーインフレって感じだ。……いや、コナンはバトル漫画じゃないんだけどね。
 まあ、細部に変なところはあったけど、土方歳三について詳しくないと解けない暗号パズルは面白かったし、アクションも割と派手だったので満足できた。ただ、お宝=兵器と思ってた奴らが、血眼になってそれを探してんのは謎だった。戦時中に有効だった兵器なんて、現代だと時代遅れの廃棄物だろ。ちなみにだが、恐らく本作で出てきた暗号機械はナチスの「エニグマ」がモチーフだろう。
 それはそれとして、あるかどうか分からないものを捕らぬ狸の皮算用で過大評価した上、その評価を勝手にインフレさせていく様は、人間の不合理と愚昧を体現していて興味深い。先に述べた通り、戦前の兵器な上、まともにメンテナンスされていないのだから普通に考えればゴミ屑の可能性が高いのだが、そうは判断しない、正確にはその可能性を排除しているところに悪役達の浅ましさと人間らしさがある。こうした性向は人間普遍のものだが、闇バイトやディープ・ステイト信者を見るに、SNSの登場によって判断保留ができず、都合のいい仮説に基づいて判断する人が一層可視化されてきたのだろう。

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