雑記4 最近観たホラー映画4ーー「ゴーストランドの惨劇」「仄暗い水の底から」ーー
「ゴーストランドの惨劇」は割と面白かった。8点くらい。仕組みは「ハイテンション」によく似ているものの、こちらの方がドラマとしてもトリックとしても完成度が高い。家に突然、不審者がやって来て家族を殺すこと、ヒロインの妄想が作品の鍵を握ることなどが類似点だが、まあ、現実かと思ったら幻覚だったというネタはありふれており、古くは「邯鄲の夢」(これは幻覚ではなく夢)から鏡花の「星あかり」、アニメ映画の「イノセンス」や「劇場版魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」など類例は多いので、典拠とまでは言えないか。ホラー映画では「シックスセンス」や先述の「ハイテンション」が同系統の作品だが、これらが謎解きの衝撃に重きを置くのに対し、「ゴーストランドの惨劇」では、甘美な夢想を捨てでも辛い現実に立ち向かおうとするヒロインの決意に重点がある。そのため、ヒロインのベスは希望に溢れた夢の世界と絶望渦巻く現実の世界を何度も行き来する。この、妄想と現実の往還は類似作品にない独自な点と言えるだろう。この他、家族愛をテーマにしたドラマの娯楽性やヒロインたちの住む屋敷の造形などがよくできており、全体的にいい作品だと思うが、その一方でホラー映画にしては恐怖シーンが少なく、人によっては物足りないかもしれない。
「仄暗い水の底から」は個人的にとても面白かった。8点か9点といったところ。離婚調停中のシングルマザーとその子供の絆が、心霊現象によって切り裂かれていく物語で、少しずつ迫りくる恐怖が絶妙である。最後の最後まで幽霊がまともに姿を見せないのもよい(「リング」も同じような展開ではあったが)。中田英夫作品としては「リング」よりずっと面白いと思うが、大抵のオールタイムベストではこちらの方が下位であり、疑問である。やはり新規性の少ないところが評価を下げているのだろうか。作品の主典拠は、貯水槽に死体が入っている、という有名な都市伝説である。伝説の場合、死体は必ずしも少女に限らず、清掃員だったり、会社員だったりするが、母子物語に関連付けるため少女が選ばれたのだろう。貯水槽に落ちた人間の幽霊が出るという設定は、1970年代に秩父で起きた殺人事件をネタにしている可能性があり、この事件では、貯水槽に落とされた被害者女性の幽霊が出るという噂があったという。原作未見なので都市伝説の要素が小説でどのように反映されているかはわからない。作品末尾の、廃墟となった団地で高校生になった郁子が母・淑美の幽霊と再会する場面は、上田秋成『雨月物語』所収の「浅茅が宿」を思い起こさせる。作品は全体的に映画「シャイニング」の影響が色濃いと思われ、エレベーターから汚水が大量に噴き出すシーンは明らかに「シャイニング」の有名シーンを参照している。心霊現象によって淑美が徐々に狂乱していくのも似た展開だが、ジャック・トランスとは違い、彼女は最後まで子供を守ろうとしており、母の愛が強調されている。