誠実な人が報われるのを見ると、明日を頑張りたくなる(映画『引っ越し大名』感想)
2019年公開 星野源主演の映画『引っ越し大名』
人生初コメディ映画でした
仕事が忙しくて、なんだかとてもむしゃくしゃして、頭を空っぽにしたくて見始めたこの話。
……普通に面白かったです
コメディって、何かをすると笑われる人が居るっていうイメージだったんですね。本人は真面目なのに笑われるっていうのが苦手なので、コメディは避けてました。
でもこの話、とてもストレスなく見れたんですよ。仕事終わりの疲れた頭で。
わかりやすい話なので、すっとストーリーが自分の中に入ってきました。
疲れた時に丁度いい話です。
主人公の春之助さんがとても誠実で好きです。こういう男、もっと世の中に居てもいいのに。
望んでもなかった仕事で誠実に奮闘するのも、武士なのに腰が低いのも、身分の隔てなく人を人として見るのも。全部いいなって思ったし、周りに流されないで普通の感性を持ち続けたところがとても好きです。
上司にも部下にもほしい。こういう誠実な人。
そんな性格だから仲間が集まるんだなってしみじみと納得させられるストーリーでした。
ちゃんとしている人のところに人が集まって、ちゃんと報われる。
そこから横道に逸れないすっきりしたストーリーだったから、ストレスもなかったし、春之助さんをぼーっと見ながら、しみじみ良かったねって応援したくなる。
その集まった仲間もすごくいい人たちで。春之助さんが理不尽に罵られることがあると、みんな怒るんですよ。応援したいなって見てた人が、そんな風に仲間から慕われるのを見ると、よかったねって言いたくなってしまう。
春之助さん、決して完璧な人じゃないです。頭は良い人なんだけど、要領はよくないし、武士に求められる武芸が達者なわけでもない。
ただ、人格者なだけなんです。ものすごくお人好しなだけ。そしてとても優しくて誠実。それだけ。
でも、それだけで充分なんだなって思わせる。そういう人でした。
抜けてるところもあるし、情けないところだって、間抜けなところだっていっぱいある。でも、そういうのが全部、ただの愛嬌になる。そこを補ってやろうって思わせる。この人なら信じられる。そういう不思議な魅力のある人でした。
たぶん、人はこういうのを天性の人たらしって言うんだろうね。
好きなシーンがあるんですよ。予告のラストにあった、求婚シーン。
春之助さんがね、「不束者ですが、よろしくお願いします」って頭を下げるの。求婚なのに。
当時の感覚では、絶対に女性側が頭を下げるじゃん。でも、春之助さんから頭を下げるんですよ。武士なのに。
とても疲れた顔して、なのに挨拶するときはちゃんと身形を整える。
そういう随所に春之助さんらしい誠実さが垣間見えて、それがとてもいいなって思った。
残してきた仲間たちに手紙を書くのも、とても春之助さんらしい誠実さが出ているシーンでとても好きです。残された人たちも、そういう春之助さんらしい誠実なところに救われたんじゃないのかなって勝手に思ってる。
最初は書庫にひとりきり。幼馴染に引っ張り出されて何故か責任重大な仕事を押し付けられて。
頭を掻き毟りながらなんとか自分なりに頑張っていたら、どんどん仲間が増えていく。
それが如実に出ているのが、食事のシーンでした。
最初は、家族と幼馴染だけ。そこから仲間が増えていくたびに、一緒に食べる人も増えていく。
春之助さんも呑むようになったり、よっぱらったり、どんどん気の抜けた顔をすることが増えていく。
なんか、そういう日常を見るといいなって思いませんか?
例えば、於蘭さんの元夫はどうなったのか、とか。幼馴染たちの幼少期だったりとか。物語をもっと膨らませる要素はたくさんあって。その空白を描きたいなって思ってしまうのは、創作をしている側の勝手な都合なんだけど。
でも、見ていると不思議なことに創作意欲がもりもり湧いてきました。
この映画を見ていると、私には自分の殻を破るために発破をかけてくれる幼馴染が居るわけじゃないけど、一歩を踏み出したいって思ったし、何事にも誠実であれば、少しでも報われるんじゃないかって思わせる。
そんな風に、ただひたすら心癒されて前を向くための映画でした。
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