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失恋

私は失恋の痛みを知っている。と思っていた。しかしそれは思い違いだったとこの間の経験で痛感した。

失恋の痛みを教えてくれた彼女とは、半年ほど付き合っただろうか。期間はよく覚えていないが、互いに心通わせる時間はそれくらいあった。しかし次第に連絡はまばらになり、返信スレッドは「話せないかな」の言葉が連なるようになり、薄れるように関係が解消されていった。ついに関係が切れた時は1週間、いや1ヶ月くらいは憂鬱だった。誰にも話せなかった。私はそこで失恋の痛みを理解したと思っていた。

しかしこの間、また新しい関係ができた。そして突然終わった。楽しく呑んで駄弁りあった2日後、突然ブロックされたのだ。なんだか返信が遅いなーと思ったら、夜にはもうメッセージが送れない状態になっていた。

あの時の発言が気に障ったのだろうか。それともあの振る舞いが?いやあの時のちょっとした不甲斐なさだろうか。考えても分かるはずがない。「なんか、ムリ」といった具合で急に手を離されたのだ。崖から突き落とされたような気分だった。

だがこれも自業自得か、と思った。私も同じように、デートに行った直後に相手をブロックしたことがあったのだ。あの時彼女が感じていた心の痛みはこんな感じだったのか。私は芯から実感した。突然関係を打ち切られて、連絡も取れず、ただ独りで反省するあの悲しさたるや。腹の内にウナギがのたくっているかのような気持ち悪さだった。

思えば二つは性質の正反対な失恋だ。最初の失恋は相手のことが読み取れず、会話も妙にちぐはぐだった。だから薄れるように関係が途切れていっても、さもありなんという気持ちで腑に落ちた。だが次の失恋はばっさりと打ち切りに遭ったのだ。これほど心通じる相手がいたのかと心底感動したのに。

ところでこんな噂がある。女性は感情で好きになり、理屈で嫌いになる。 男性は理屈で好きになり、感情で嫌いになるらしい。もしかしたら彼女が関係を断ち切ったのは、「なんかヤダ」という感情での嫌悪ではなく、もっと理性的に自分との相性の悪さを分析した結果なのかもしれない。

もしそうだったら余計に嫌だなぁ。一言理由を告げてくれればこれほど悩まずに済んだのに。

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