統計検定準1級対策①:条件付き確率とベイズの定理
はじめに
統計検定準1級対策第一段です. 今回は『統計学実践ワークブック』第1章 事象と確率の範囲にある条件付き確率, ベイズの定理についてまとめます.
1. 記号の表記
本記事では, 事象$${A}$$の確率を$${P(A)}$$と表す. また, 二つの事象$${A, B}$$に対して, $${A}$$と$${B}$$の両方ともが起こる事象$${A \cap B}$$を$${A}$$と$${B}$$の積事象といい, その確率を$${P(A \cap B)}$$と表す. さらに$${A}$$または$${B}$$の起こる事象を$${A \cup B}$$を$${A}$$と$${B}$$の和事象といい, その確率を$${P(A \cup B)}$$と表す. $${A}$$が起こらない事象を$${A}$$の余事象といい, $${A^C}$$と表す.
空集合を$${\phi}$$で表す.
2. 事象と確率
基本的な性質
全事象を$${U}$$とする. この時, 次が成り立つ.
$$
P(U) = 1 \\
P(\phi) = 0
$$
また, 全事象$${U}$$に含まれる$${2}$$つの事象$${A, B}$$において, 次が成り立つ.
$$
P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)
$$
特に$${A \cap B = \phi}$$のとき$${P(A \cup B) = P(A) + P(B)}$$が成り立つ.
上の性質から次が成り立つことが導ける.
$$
\begin{align}
P(A \cap A^C) &=& 0 \\
P(A \cup A^C) &=& 1 \\
P(A^C) &=& 1 - P(A)
\end{align}
$$
$${(proof)}$$
$$
P(A \cap A^C) = P(\phi) = 0 \\
P(A \cup A^C) = P(U) = 1
$$
また,
$$
\begin{array}{}
P(A \cup A^C) &=& P(A) + P(A^C) - P(A \cap A^C) \\
1 &=& P(A) + P(A^C) - 0 \\
P(A^C) &=& 1 - P(A)
\end{array}
$$
よって, 3つの式が成り立つことが示された. $${\square}$$
$${P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)}$$が成り立つことは, 集合を図示したもの(ベン図, オイラー図と呼ばれる)から成り立つことが理解できる. 実際, $${P(A)}+P(B)}$$では, 共通部分$${P(A \cap B)}$$を2回足しているため, $${P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)}$$で等式が成り立つ. これを理解しておくと事象の個数が3つ以上に増えたときも同様の考え方で対応ができる.
3つの場合
$$
\begin{align}
P(A \cup B \cup C) = & P(A) + P(B) + P(C) \notag \\
& \ \ \ - P(A \cap B) - P(B \cap C) - P(C \cap A) + P(A \cap B \cap C) \notag
\end{align}
$$
2. 条件付き確率とベイズの定理
条件付き確率の定義
事象$${A, B}$$において, $${P(A) > 0}$$とする. このとき, $${A}$$が起きたという条件のもとで$${B}$$が起きる条件付き確率を$${P(B|A)}$$と表し,
$$
P(B|A) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)}
$$
で定義する.
上記の式では, $${A}$$という条件のもとで$${B}$$が起こる確率を求めている. これは$${P(A)}$$で割ることで, 全集合を$${U}$$から$${A}$$に変換していると考えられる.
条件付き確率と積事象の関係
$${P(B|A) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)}}$$を変形すると次が導ける.
$$
P(A \cap B) = P(A) \times P(B|A)
$$
ここで事象の独立の定義を思い出すと次が成り立つことが分かる.
$$
\begin{align}
& \text{事象}A\text{と}B\text{が独立である} \notag \\
\overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} &P(A \cap B) = P(A) \times P(B)\text{が成り立つ} \notag \\
\overset{}{\Longleftrightarrow} & P(B|A) = P(B)\text{が成り立つ} \notag
\end{align}
$$
ベイズの定理
全事象を$${U}$$とする. 条件付き確率の定義式から次が導ける.
$$
\begin{align}
P(B|A) &= \frac{P(A \cap B)}{P(A)} \notag \notag \\
&= \frac{P(A|B)P(B)}{P(A \cap U)} \notag \\
&= \frac{P(A|B)P(B)}{P(A \cap (B \cup B^C))} \notag \\
&= \frac{P(A|B)P(B)}{P((A \cap B) \cup (A \cap B^C))} \notag \\
&= \frac{P(A|B)P(B)}{P(A \cap B) + P(A \cap B^C)} \ (\because \text{排反})\notag \\
&= \frac{P(A|B)P(B)}{P(A|B)P(B) + P(A|B^C) P(B^C)} \notag \\
\end{align}
$$
これをベイズの定理とよぶ.
条件付き独立
3つの事象$${A, B, C}$$について, 条件付き独立は次で定義される.
$$
\begin{align}
& C\text{を与えたもとで}A\text{と}B\text{は条件付き独立である} \notag \\
\overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} & P(A \cap B | C) = P(A|C)P(B|C) \notag
\end{align}
$$
練習問題
練習1
事象$${A, B, C}$$において, $${P(A) = 0.3, P(B) = 0.2, P(C)=0.4, P(A \cap B) = 0.15, P(B|C) = 0.4}$$が成り立つとする. このとき, $${P(A \cup B), P(B \cap C)}$$の値を求めよ.
(解)
$$
\begin{align}
P(A \cup B) &= P(A) + P(B) - P(A \cap B) \notag \\
&= 0.3 + 0.2 - 0.15 \notag \\
&= 0.35 \notag
\end{align}
$$
$$
P(B \cap C) = P(B|C) P(C) = 0.4 \times 0.4 = 0.16
$$
したがって, $${P(A \cup B) = 0.35, P(B \cap C) = 0.16}$$となる.
練習2
ある病気にかかっている人の割合が$${1\%}$$とする. この病気の検査では, 実際に病気にかかっている人が陽性と判定される確率が$${95\%}$$, 逆に病気にかかっていない人が陰性と判定される確率が$${90\%}$$である. この検査で陽性と判定された人が, 実際に病気にかかっている確率はいくらか. 小数第4位を四捨五入し, 小数第3位まで求めよ.
(解)
病気にかかっているという事象を$${A}$$, 検査で陽性と判定される事象を$${B}$$とする. $${P(A|B)}$$を求めればよい.
条件より$${P(A) = 0.01, P(A^C) = 1 - P(A) = 0.99, P(B|A) = 0.95, P(B^C|A^C) = 0.9, P(B|A^C) = 1 - P(B^C|A^C) = 0.1}$$が成り立つ.
$$
\begin{align}
P(B) &= P(B \cap A) + P(B \cap A^C) \notag \\
&= P(B|A) P(A) + P(B|A^C) P(A^C) \notag \\
&= 0.95 \times 0.01 + 0.1 \times 0.99 \notag
\end{align}
$$
である. よって,
$$
\begin{align}
P(A|B) &= \frac{P(B|A)P(A)}{P(B)} \notag \\
&= \frac{0.95 \times 0.01}{0.95 \times 0.01 + 0.1 \times 0.99} \notag \\
&= \frac{95}{95 + 990} \notag \\
&= \frac{95}{1085} \notag \\
&= \frac{19}{217} \notag \\
&= 0.08755… \notag
\end{align}
$$
したがって, 求める確率は$${0.088}$$である.
最後に
『統計学実践ワークブック』第1章 事象と確率は条件付き確率, ベイズの定理に関する問題はどのようおな問題が出ても解けるようにしておきたい.
参考
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