第18回 好奇心は世界を平和にできるのか
ー PROLOGUE ー
2024年8月マンスリーゲストは、認定NPO法人テラ・ルネッサンス 創設者・理事 鬼丸昌也さん。東京都世田谷区へ逢いにいってきました。
地雷撤去の活動、元子ども兵の社会復帰支援をはじめとする国際協力事業や、国内における平和教育・啓発事業を行い、「すべての生命が安心して生活できる社会の実現」を目指し奔走する鬼丸さんの経験や価値観に今回は注目します。
鬼丸さんの「いい」が未来にもたらすものとは。インタビューの様子を全4回にわたり配信します。
ー INTERVIEW ー
鎌倉投信プレゼンツ「Finding the GOOD」今回のマンスリーゲストは、認定NPO法人テラ・ルネッサンス 創設者・理事 鬼丸昌也さんです。鬼丸さん、宜しくお願いします。
宜しくお願いします。
早速ですが、自己紹介をお願いします。
はい。ありがとうございます。認定NPO法人テラ・ルネッサンスは、2001年の10月に設立をした団体です。当時、私は大学生で、京都にある立命館大学に通っていました。大学4年生の時に、カンボジアに行く機会があって、地雷除去の大変さや地雷被害の悲しさを知って、「自分に何ができるんだろう」というところから、地雷の問題を多くの人に伝えることはできるんじゃないかと思ったんです。
そこで、日本国内で地雷に関する講演をして、寄付を集めて、それを地雷除去団体にお渡しするというところから活動を始めました。おかげさまで、今年で24年目です。一人で始めた活動ですが、今は、日本人15名、外国籍の職員およそ80名と共に、世界9カ国で活動をしています。地雷だけでなく、元こども兵や地雷被害者など、主に紛争で苦しんだり悲しんだりしている方々の「自立」を支援するために、職業訓練や識字教育などを展開しています。
2001年から、大学4年生の時に活動を始めたんですね。ものすごい選択ですね。
いえいえ、自分にとっては、それが素直な選択だった気がします。なぜかというと、2001年は、9.11同時多発テロがあって、その後のアフガニスタン紛争があり、日本国内でも平和への関心が高まっていました。それ以前、1990年頃には、いわゆる環境問題にも関心が高まっていて、環境や平和をテーマに、講演活動やNPO活動をしている人が周りに出始めていました。そういった皆さんが示してくださっているたくさんのモデルがすでにあって、自分もそのモデルの一つになれたらと思い、導かれて、テラ・ルネッサンスを創るという決心ができたんだと思います。
大学在学中は何を専攻されていたのでしょうか。
法学部でした。立命館大学には平和博物館があって、その館長がゼミの担当教官でしたので、なかでも平和学を学んでいました。
平和を考える機会が、大学在学中に多くあったということなんですね。
そうですね。ただ、遡ってみると、元々、社会の事柄には関心がある子どもでした。私、小さい時から鉄道オタクなんです。路線図が好きなんですよ。路線図、つまり、地図という空間の広がりを見ることで、「この街にこんなものがあるんだ」「この国にこんなものもあるんだ」と関心がどんどん喚起されていって、世界に対する関心が深まっていったんだと思います。
そんななか、高校3年生の時、ある団体のスタディツアーで、スリランカに行く機会があって、スリランカで一番大きなNGOを創った人に会う機会がありました。スリランカ国内のあらゆる場所で、村おこしや村づくりの活動をする『サルボダヤ運動』、「すべての人の目覚め」という意味を持つ団体です。その『サルボダヤ運動』を創ったアリヤラトネ博士にツアーの最終日にお会いできる機会があって、言われたんです。『世界を変える気はあるのか』と。勢い余って、「はい」と答えたんです。そしたら、博士が言ったんです。
『世界を変える秘訣を教えてあげる。世界を変えるには、特別な知識や特別な経験は一切必要ない。ただ、次のことだけは覚えておきなさい。それは、全ての人に
未来を創る力がある。障害があろうがなかろうが、子どもだろうが大人だろうが、今の環境が、今の状況が、今の条件がどんなものであれ、その人にはその人とその人の住む地域の未来を創る力がある。それを、"信じることができるかどうか"だ。それさえ信じれていれば、今やっていることが例えうまくいかなかったとしても、またそれが次の瞬間に変化する。なぜなら、全ての人に未来を創る力があるのだから。未来を創る力は、君にもあるし、周りの人にもある。きっと君はなんでも変えることができるよ。』
その後、カンボジアの地雷除去の現場に行って、暗澹たる気分になるわけですよ。だって、カンボジアだけで、地雷除去に600年かかる、とか、地雷の被害者の体験談を聞いたりするわけですから。でも、その暗澹たる気分になった時に、アリヤラトネ博士の言葉を思い出して、自分の"できないこと"にフォーカスをするのではなくて、"できること"にフォーカスをしたら、「人に伝えることはできる」と思えたんです。自分にも"できること"を見つけた。その流れの中で、ささやかだけど活動を始めたのが、大学4年生の頃というわけです。
ここで大事なことは"できないこと"ではなく、"できること"にフォーカスするということなんです。私自身もそうですし、地雷の被害者たちや、元子ども兵士たちや、私たちに関わる全ての人たちに対してもそう見ることが大事。できないことは多いけれど、できることはある。そこに注目をして関わりを持てば、自ら変化を起こしていける。そうすることで、テラ・ルネッサンスは、24年間、世界9カ国、いろんな場所で支援活動を行なってきました。支援を受ける人たちと、支援する人たちの、「共同作業」で、ここまで続けてこられたという感覚でいます。
今、この瞬間にも"できること"はあるよね、というメッセージを常に伝え続けているのですね。24年間、大切にされている理念についても、ぜひ教えてください。
テラ・ルネッサンスの設立当時から、ビジョンは「すべての生命が安心して生活できる社会の実現」です。そして理念はいくつかあります。一つは、「全ての人に未来を創る力がある」、さらに一つ、「全てのものごとは変化するのだから、諦めないことをが大切」ということです。
小さな一歩から始めて、24年間。この歩みの中で感じている『使命感』のようなものはありますか。
私自身、実は、あまり使命感はないんです。使命感や正義感が、事業永続の原動力にはならないと思っています。なぜなら、使命感と使命感がぶつかり合うと「戦争」に、正義感と正義感がぶつかり合うと「争い」になる。思うに、『好奇心』が大事なんです。世界平和は、人類が発祥して以来、誰も成し遂げたことがないし、見たことがない。それを、もし見れたら、面白そうじゃないですか。例えば、この番組を提供されている鎌倉投信が投資されている企業の皆さんは、一社一社、いろんな平和を創っています。従業員を大事にしたり、可能性を引っ張り出したり、いろんな"平和を創る活動"が重なりあってこそ、世界平和は創られていく。あらゆる全てのものが本当に平和になった状態は、ものすごい幸福なんじゃないか。見てみたいな、と。そんな"純粋な好奇心"こそが、物事を成し遂げていく力だし、遠い未来や遠い目標に向かって推し進んでいく原動力になるのではないかなと、今は思っています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ー Podcast ー
今回のインタビューを聴きたい人はプレイリストでチェック!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ー CONCEPT ー
〜これからの社会に本当に必要な「いい会社」に投資する〜
鎌倉投信が提供するラジオ番組『Finding the GOOD』
全国を飛び回りゲストとクロストーク。
ものごとの「よさ」とはどこにあるのか。
さぁ。「いい」を探す旅に出よう。
ー PLAY LIST ー
これまでの放送は公式チャンネルプレイリストでチェック!
ー Instagram ー
写真家モロイユウダイ撮り下ろしインタビューショット
イラストレーターほりはる描き下ろし線画など
見つけた「いい」を集めています。
ー Youtube ー
収録前後の様子やインタビューの全貌をノーカット版で公開しています
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
▼鎌倉投信 HP
▼鎌倉投信 X
▼鎌倉投信 鎌田代表Note
▼最新著書「社会をよくする投資入門」