第19回 自立と孤立の決定的な違いとは
ー PROLOGUE ー
2024年8月マンスリーゲストは、認定NPO法人テラ・ルネッサンス 創設者・理事 鬼丸昌也さん。東京都世田谷区へ逢いにいってきました。
地雷撤去の活動、元子ども兵の社会復帰支援をはじめとする国際協力事業や、国内における平和教育・啓発事業を行い、「すべての生命が安心して生活できる社会の実現」を目指し奔走する鬼丸さんの経験や価値観に今回は注目します。
鬼丸さんの「いい」が未来にもたらすものとは。インタビューの様子を全4回にわたり配信します。
ー INTERVIEW ー
鎌倉投信プレゼンツ「Finding the GOOD」今回のマンスリーゲストは、認定NPO法人テラ・ルネッサンス 創設者・理事 鬼丸昌也さんです。鬼丸さん、引き続き宜しくお願いします。
宜しくお願いします。
ここまで、鬼丸さんの原動力が大いなる好奇心であるということを伺いました。(『第18回 好奇心は世界を平和にできるのか』)好奇心は、誰もが持っている。だとすれば、誰もがいつでもここからスタートできますね。24年間、活動を続けてこられた中で、濃厚な経験を沢山されてきているかと思います。改めて、テラ・ルネッサンスが今行なっている主な活動について、詳しく教えてください。
はい。ありがとうございます。カンボジアやラオスの地雷や不発弾による被害を受けた人々への自立支援、アフリカ3カ国(ウガンダ・コンゴ民主主義共和国・ブルンジ)における元子ども兵や紛争で被害を受けた女性たちの自立支援、最近ですと、ハンガリーに拠点を置いてのウクライナへの食料や日用品の提供支援や職業訓練のようなこともしています。併せて、日本と台湾では、講演などの啓発活動を行なって、社会の課題や私たちの取り組みを知ってもらうことで、寄付を募る活動をしています。そして、東日本大震災以降は、岩手県の大槌で被災者支援の活動もしています。そんな取り組みを世界9カ国で行なっています。その中で一番多くの方に関心を持っていただいているのは、元子ども兵の社会復帰や自立支援かな、と感じています。
子ども兵の現実を教えていただけますか。
子ども兵というのは、武器を持って戦わされている、または武装勢力の支配下に置かれている18歳未満の子どもたちを指します。世界中に25万人から30万にほどいると言われています。私たちが活動するウガンダでは、北部において、過去23年間、内戦が続いていました。その間に3万6千人の子どもたちが誘拐されて、兵士にされていました。ちなみに一番下の年齢が、だいたい5歳。5歳であれば自動小銃が撃てたりしますからね。私たちが初めてウガンダで調査をした2004年に出会った元こども兵は、当時16歳。12歳の時にウガンダの武装勢力に誘拐されて、兵士になる訓練を受け、自分の生まれ育った村に襲いに行かされるんです。そうすると、脱走を防ぐことができるんですよ。自分の村には戻れなくなるから。そんな中、目の前にその子どもの母親が引きずり出されて、武装勢力の兵士は「母親を殺せ」と指示する。当然、子どもは嫌だと拒否します。すると、銃の反対側でぼこぼこに殴られて、最後に「その女がお前にとってどんなに大切かわかった。その女の腕を切りなさい。そうしなければ、その女もお前も殺す」と言うわけです。仕方ないですよね。そうしなければ、母親の命も、自分の命も、守れないわけですから。その子どもは、兵士に言われた通りに実行するんです。これは極端な事例かもしれませんが、心身共に傷ついた状態。これが子ども兵の実態です。
さらに、ウガンダやコンゴ民主主義共和国の場合、自分の村を襲撃させられているので、脱走や解放によって自分の村に戻れたとしても、社会復帰や自立がとても難しいのです。そりゃそうですよね。村の人たちからすると、被害者だとは分かっていても、加害者でもあるわけですから。それが、元子ども兵の問題です。そこで、テラ・ルネッサンスでは、元子ども兵に対して、いろいろな取り組みをさせていただいているということです。
想像を絶しますが、それが本当に起きていることなんですよね。
それが、世界の一つの現実です。
「自立」という言葉が鬼丸さんの口から沢山出てくるのが非常に印象的だったのですが、「自立」にフォーカスするのはなぜでしょうか。
私たちがいなくなったとしても、その地域で生きていける。そこで初めて、社会復帰、もしくはその人たちの幸福を獲得することができると考えているからです。だからこそ、「自立をする」ということが私たちにとっては最上位目標です。ただし、勘違いしてはいけないのは、「自立」とは『一人で生き抜くこと』では決してないということ。それは「孤立」です。私たちが考える「自立」は大きく二つです。一つは、多様な収入源があること。そしてもう一つは、多様な依存先があることです。いろんな関係性によって、いろんな人とつながり合っていればこそ、どこかの関係性が切れたとしても、他の人との関係に勇気をもらって、切れてしまった関係性を向き合うこともできます。
「自立」と「孤立」は違うのですね。誰かを頼ることができて、初めて、自立できる。
そうですね。私たちは、多様な相互依存関係があってこそ「自立」と言える、と考えています。
現実と向き合いながら活動されている一方で、理想を掲げていると思います。この現実と理想のギャップに、何を感じていますか。
とんでもないギャップはありますよね。元子ども兵の自立とは、一体何をもって、自立と呼べるのか。その判断も難しい。さらにその先にある世界平和はもっと遠い。そんな時、私たちは、手前の小さな目標をとても大事にしています。
例えば、元子ども兵の社会復帰のための自立支援においては、毎年20名ほどの元子ども兵を施設で受け入れます。3年間の支援のなかで、一人一人の授業計画を立て、職業訓練、識字教育、心のケア、そして残りの1年で起業してもらいます。こうして、自分の所得で、自分と自分の家族を養えるようにするための伴走支援を行っています。
その時、手前にどういう目標を置くか、ということがとても大事だと思っています。小さなゴールを一つひとつ積み重ねていくたびに、目的に近づいている。その感覚を持ち得ているかどうかが、大きなギャップの中で活動を続けるための、一つの考え方ではないかなと思います。
(『第20回 突きつけられた現実の先にある希望の連鎖』に続く)
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ー Podcast ー
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ー CONCEPT ー
〜これからの社会に本当に必要な「いい会社」に投資する〜
鎌倉投信が提供するラジオ番組『Finding the GOOD』
全国を飛び回りゲストとクロストーク。
ものごとの「よさ」とはどこにあるのか。
さぁ。「いい」を探す旅に出よう。
ー PLAY LIST ー
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ー Instagram ー
写真家モロイユウダイ撮り下ろしインタビューショット
イラストレーターほりはる描き下ろし線画など
見つけた「いい」を集めています。
ー Youtube ー
収録前後の様子やインタビューの全貌をノーカット版で公開しています
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