第20回 突きつけられた現実とその先にある希望
ー PROLOGUE ー
2024年8月マンスリーゲストは、認定NPO法人テラ・ルネッサンス 創設者・理事 鬼丸昌也さん。東京都世田谷区へ逢いにいってきました。
地雷撤去の活動、元子ども兵の社会復帰支援をはじめとする国際協力事業や、国内における平和教育・啓発事業を行い、「すべての生命が安心して生活できる社会の実現」を目指し奔走する鬼丸さんの経験や価値観に今回は注目します。
鬼丸さんの「いい」が未来にもたらすものとは。インタビューの様子を全4回にわたり配信します。
ー INTERVIEW ー
鎌倉投信プレゼンツ「Finding the GOOD」今回のマンスリーゲストは、認定NPO法人テラ・ルネッサンス 創設者・理事 鬼丸昌也さんです。鬼丸さん、引き続き宜しくお願いします。
宜しくお願いします。
鬼丸さんは路線図がお好きということでしたが、あっち行ったり、こっち行ったりしながら、遠い目的地にも必ず近づくことができるというところが、まさに路線図のようですね。
そうですね。うねうねしているし、途中が見えないかもしれないけれど、それでいいんだと思います。そのうちに手前が見えてきますから。一歩踏み出すことで、”ゴールが近づいている”という感覚なんです。私は、家が貧しくて、奨学生だったので、大学時代は新聞配達をしていました。1日400件、新聞を配るのですが、しんどいんですよ。でも、ある時、目の前の一件にフォーカスしたら、気づくと400件配り終わっていたんです。目の前の一件を終わらせることによって、残り399件。2件終われば、残り398件。そうやって、目の前の一件が、ゴールを近づける。今日のこの放送も、一人の人に領収書を書くことも、一人の人と話すことも、一人の人を支援することも、世界平和というゴールを私たちに近づけています。目の前の作業が、目の前の仕事が、目の前の働きが、とても大事。そんな感覚を持っています。
私自身、紛争地などに足を踏み入れたことがありません。そんな私にもできることはないだろうかとよく考えたりします。なかでも、「寄付」はわかりやすいアクションの一つかと思い、できる限り寄付するようにしています。ただ一方で、その寄付金がどのように使われているのか、どういう人の手に渡るのか、わかりにくいという側面も感じています。鬼丸さんは多くの方にご支援いただいた寄付金、つまり支援者の皆さんの想いを一手に受け取って、最前線で取り組まれていると思うのですが、どんな覚悟や意識をお持ちでしょうか。
基本的に現場では、日本の駐在員や現地の職員たちが支援活動を行なってくれています。私自身は、国内で講演をしたり、支援者の皆さんにお会いして、報告会を行なったり、寄付のお願いをするのが専らの仕事です。テラ・ルネッサンスの年間収入の6割近くが寄付や会費など民間からいただいたお金です。設立当初から、6割ほどは寄付や会費で賄うと決めていました。なぜかというと、「寄付」というものが、「社会参加の第一歩」であるからです。「寄付」には対価性がありません。物を買うのとは違います。ただ、「寄付」をすることによって、テラ・ルネッサンスや鬼丸昌也に関心を持ってもらうことができます。さらには、世界のニュースの見方が変わりますよね。とすると、より世界が近づくんです。世界の主体者として生きてもらえるわけですよ。
「寄付」をいただくことで、現地の人々の暮らしをより良くしていくことや問題を解決していくと同時に、途上国が起きている問題が、先進国や地球全体の構造によって生み出されている課題であることを知っていただくことができます。先進国や豊かな国に暮らす私たち自身が意識を変えない限り、もしくは仕組みを変えない限り、いくら支援したって本質的に変化がない。だからこそ、「寄付」をきっかけに、自分事として考えていただく、という意識があります。「寄付」は、単に誰かを助けるものではなくて、自分が学ぶべきものでもある。その二面性を大事にして、私たちは2001年から24年間ずっと活動を続けてきています。
日本国内、さらには台湾などでも、平和啓発の講演を多くやられていますが、どんなメッセージを伝えていらっしゃるのでしょうか。
テラ・ルネッサンスが活動しているコンゴ民主共和国東部では、いまだに紛争が続いています。もう20年、いや30年ほど続くその紛争では、540万人の人が亡くなっています。その9割が民間人で、特に、戦争下における女性の性的な被害がとてつもなく多い国です。下は2歳くらいから性的被害を受けています。村々を支配するための軍事的なオペレーションだからです。その大きな原因は何かというと、コンゴで豊富に取れるレアメタルや、金属、石油、ウランなどの資源です。それを誰が消費しているかというと、先進国や豊かな国の人間たちです。ということを、人々に伝えた時に、初めて"当事者性"が生まれるわけです。でも、大事なことは、その事実を突きつけるだけではなくて、その先にある希望を合わせてお伝えすることです。
例えば、携帯電話の製造メーカーやあらゆる電子部品をつくる製造メーカーが、紛争レアメタルを使わないようにしていこうと始めた活動や、鎌倉投信さんの投資先でもあるJEPLAN(旧 日本環境設計)の岩元さんたちのように、地下資源を使わない世界を目指した、地上資源だけの循環によるリサイクル推進事業や、HASUNAさんのように、児童労働や紛争を促してしまうような宝石を使わないジュエリーブランドなど、今ある希望をお伝えすると、人は、「変えられる!」と思いますよね。事実には二つあるんです。絶望と、希望です。その両方を目の当たりにした時に、人は、「何かを変えよう」と思えるんだと思います。だからこそ、私は鎌倉投信さんが大好きなんです!
声が大きくなりましたね!それはなぜですか。
希望だからです。鎌倉投信さんの投資先の企業は、「人・共生・匠」といった基準で選ばれていますよね(参考:#2 これからの社会に本当に必要な「いい会社」とは)。私たちだけでは知り得ない、または接点の生まれない、素敵な企業ばかりです。そういった企業との出会いにより、ますます希望が増えていく。心の中に希望を蓄えておくと、事実を人にお伝えする時、その先にある希望を分け与えることができます。恐怖の連鎖ではなく、幸福や希望の連鎖によって社会を変えることができる。それを伝えてくれる鎌倉投信さんや投資先の企業の皆さん、さらには穏やかで熱狂的な受益者の皆さんが、私は大好きです。私たちだけでは、世界平和を実現することはできません。だからこそ、あらゆる人たちと連帯していくことがとても大切だと思っています。
この瞬間も、連帯するあらゆる人たちが動いてくれているからこそ、一歩ずつ世界平和に近づいているのだ、ということを、私たち自身が自覚することが必要ですね。
そうですね。ガンジーの言う通り、『善きことは、カタツムリの速度で進む』。焦らないことですよね。焦りたなるけど、焦らないことです。
(『 第21回 平和をもたらす"安心"の本質とは 』に続く)
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ー Podcast ー
今回のインタビューを聴きたい人はプレイリストでチェック!
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ー CONCEPT ー
〜これからの社会に本当に必要な「いい会社」に投資する〜
鎌倉投信が提供するラジオ番組『Finding the GOOD』
全国を飛び回りゲストとクロストーク。
ものごとの「よさ」とはどこにあるのか。
さぁ。「いい」を探す旅に出よう。
ー PLAY LIST ー
これまでの放送は公式チャンネルプレイリストでチェック!
ー Instagram ー
写真家モロイユウダイ撮り下ろしインタビューショット
イラストレーターほりはる描き下ろし線画など
見つけた「いい」を集めています。
ー Youtube ー
収録前後の様子やインタビューの全貌をノーカット版で公開しています
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