【フィナンシェ話#7】小学生からお金の使い方を練習すると(前編)
様々なバックグラウンドの方に伺う、子どもとの買い物、お小遣い、お年玉、寄付や投資のこと…。そこから自分の子どもにつながるフィナンシェ(金融家)なヒントを探ります。
今回は、口座の6人に1人は未成年というコモンズ投信に投資する岡祐司さんにお話を伺いました。小学校6年生のお子様がいらっしゃる中、様々な形でお金の事を教えていらっしゃいます。皆さんのご家庭でも、今から実践できそうなアイディアをぜひ探してみてください。
■ 第三者を活用して、子どもに学ぶ機会を与える
—コモンズ投信で開催される子供向けのセミナーに参加されていると伺いましたが、普段はどのようにお金のことをお子様に教えていらっしゃいますか。
岡さん:はじめは小学校1年生の時。コモンズ投信の「こどもトラストセミナー」という小学生の子ども向けにお金のことを教えてくれるセミナーに親子で参加しました。それから機会がある度に、コモンズ投信の「おかねの教室」や「寄付の教室(※1)」に毎年参加させてもらっています。他にも、I-Oウェルス・アドバイザーでのセミナー(※2)で「キャサリンとナンシーのお金のおはなし(※3)」を聞いたりもしました。親が直接教える、というよりもお金を学ぶ勉強会に行くチャンスを与えた、という感じですね。
小学生になるとですね、親の言うことは聞いてくれない。でも他人の言うことは聞いてくれる。それで、外部の教室を利用していることが多いですね。本人もコモンズ投信で子ども向けセミナーを担当されている方をすっかり気に入っているようで、喜んで付いてきてくれます。でも小学校までかな。これからは、なかなか親についてきてくれないでしょう。
(※1~3:フィナンシェの会で過去に掲載したnoteがあります。末尾にリンクを記載しましたので、併せてご覧ください)
—子ども向けのお金のセミナーや教室に親子で参加されて、お子様の変化など気付かれた点はありますか。
岡さん:たとえば、必要な物に対して貯金できるようになった、自分に必要なものと自分が欲しい物の理解ができるようになった、というのはありますね。振り返ってみると、1回参加すると何かひとつ覚えてくるんです。だから、4回参加すると4つ覚えてくれる。
お金の使い方を全部覚えてきてほしいとは思っていません。まずは1つだけ覚えて、それを何回か繰り返していけば、お金の使い方が身についていくのではないでしょうか。
(コモンズ投信が定期的に開催する「こどもトラストセミナー」の様子)
—親よりも他の人が言うことを…というお話がありましたが、ご自宅でお金のことを教えるシーンはあるのでしょうか。
岡さん:特に教えるということではないのですが、今回の梅雨の時期にたくさん水害が起こりましたよね。小学6年生にもなると、色んな話が分かるようになってきたので、先日は水害を起点に寄付の話をしました。「この水害には、義援金よりも支援金の方が大事なんじゃないか。NPO法人に寄付をすれば、すぐに使ってもらえて助かる命があると思う」ということを伝えるようにしています。他には、食事などの買い物でスーパーに行くときに、「どうやって野菜を選ぶ?」「お菓子買いたいっていうけど、これいるかな?」という問いかけはするようにしていますね。
あとは困っていることにもなりますが、子どもがスマホでYouTubeを見たときのデータ通信料が非常に高くなっていることや、ポイントカードのポイント、交通系ICカードについても説明するのが難しいですね。どれも使った量が子どもにとって見えにくいものなので、通信費はたくさん使ってしまうし、勝手に交通系ICカードを使ってコンビニで買い物をしてしまったことも。子どもはすぐ使い方を覚えてしまうので、親がどう伝えたら良いのか…と困っている点ですね。
■ 戦略的にお小遣いをあげる
― 現在、お子様は小学校6年生ということですが、お小遣いはどのようにされていますか。
岡さん:お小遣いに移行したのは小学校3年生でした。それまでは「欲しい!」と言われたら買い与えていたのですが。
本などを参考にしながら、お小遣いをもらって使うためのお約束をまず作りました。契約書のようなものですね。お小遣い帳を必ずつけて月末に残高が合っていたら、お金をもらえる。お手伝いをしたら、お小遣いを増やす。親が買うものは習い事の月謝や洋服などで、おやつや学校で使わない本などはお小遣いで買う。お小遣いの金額を変えてほしければ、理由を話すこと。このように、どうしたらお小遣いをもらえるのか、増やせるのか、使えるのか、という点を紙に書いて、子どもにサインしてもらっています。
(岡さん親子のお小遣いの契約書を見せていただきました。とても詳細に決められています)
―親がその時々で感情的になって、毎回同じ判断をできないことは往々にしてあるので、冷静に立ち返れる契約書というのは良いですよね。その内容はお子さんと話し合って決めたのですか?
岡さん:そうですね、原案は親が作りましたが、子どもと話し合って「ここはこうだよね」と。困ったことがあるとまた話し合いをして変えていきます。
最初のころは嬉しいんでしょうね。たくさんもらうと。小学3年生で3,000円というのは高額だったと思います。お小遣いを初めてもらってからしばらくは、毎月見事に3,000円を使ってくれました。子ども向けのお金の教室に参加させていただいて、自分に必要なものと自分が欲しい物の区別がつくようになってきた、という変化があったのはお小遣いをあげた1,2年後くらいからです。ゲームは貯めてから買おうなど、自分でお金の使い方を考える力が出てきたのは良かったですね。
先ほども話しましたが、お金を学ぶといっても、お小遣いを渡して1、2ヵ月で答えが出るわけではない。ずーっと小学生の時から練習して、学んでいくのかな、と思っています。
―3,000円という額に設定したのは、どのような考えがあったからなのでしょうか。
岡さん:ノートやお菓子など、小学3年生くらいになると月に平均1,000円くらい使うのが分かっていたんです。それ以外に1,000円はできたら貯めてくれたら良いな、残りの1,000円は自由に使ってもらう分、と考えて3,000円になりました。親が思うよりも多めの金額ですよね。これを与えて1ヵ月でコントロールしてもらう。1週間単位であげる、という方法もあるようですが、この方が良いんじゃないかなぁと。
実は、6年生になってもお小遣いの金額を上げてほしい、という要望はないんです。なので、ずっと3,000円でやりくりしていますね。中学生になると変わると思いますが。
―お手伝いでお小遣いを増やす、というのはどのような方法ですか。
岡さん:まず基本的に守ってもらいたい事を決めて、それができたうえでお手伝いができたらポイントを加算して、それをお小遣いに換算しています。たとえば、子どもなので靴下を片付けなかったら-50ポイント、お風呂の掃除や洗濯をしたら何ポイント加算、とかですね。約束を守らないとお小遣いは減るし、普段の生活以外のお手伝いをしていけばお小遣いは増えていく。だから面白いと感じるのでしょう。
最近は、食事作りに凝っていたんです。最初から最後まで食事を作ると300ポイント。コロナの自粛時期はほとんど毎日作っていましたから、すごい金額になってびっくりしましたね。本人は料理を作って喜んでもらい、その上お金をもらえる、とかなり嬉しかったみたいです。
その日にしたお手伝いのポイントはカレンダーにメモして、これらを月末にまとめて計算します。減算は親が忘れがちですが、加算は子どもから要求があるので忘れないですね。
(毎日のポイントをメモされています)
―キャッシュレスが進んでいるので、渡す小銭がなかったり…?
岡さん:お小遣いを渡す前に必要のないものをコンビニで買って、おつりをもらうことはありますね。
(「そんなことしていたの?」と近くで聞いていらしたお子さんの声)
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学年が上がったらお小遣いの額も自然とあげる、という形式をとっているご家庭が多いと思います。でも岡さんのように、子どもがお金をどう使うかを考えられる機会を与えたり、約束事を紙に書いて特別ルールを作らないようにしたり、と意識するだけで、お小遣い自体の存在意義が高まるように感じました。まずはお子さまと一緒に、お小遣いをどうしたいか話し合うところから始めてみてはいかがでしょうか。
後編では、お子様のお金の使い方をどのように見守っているのかを教えていただきました。ぜひご覧ください。
文中の注釈に関連するリンクはこちらご覧いただけます。
※1 コモンズ投信による「寄付の教室」
※2 I-Oウェルス・アドバイザーの親子向けセミナーの様子
※3 キャサリンとナンシーのお金のおはなし 取材記事 前編 後編
(取材日:2020年7月27日、取材:額賀佑佳、Mari Kamei)
フィナンシェの会では、「お金がどこから来て、どこへ行くのか?」を軸に親子でお金のことを学ぶための情報発信をしています。お金を学べるアイディアや絵本も紹介していますので、宜しければ他の投稿もぜひご覧ください。
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