【フィナンシェ話#1】後編:韓国では寄付が流行!?
韓国出身の金柔伸(キム ユシン)さんに伺った韓国の金融教育。その内容である前編はこちらから。
後編ではお小遣いから寄付にテーマを変えて掘り下げてみました。
■ 寄付する子供の写真をオフィスに飾る
── お小遣いから話題は変わるけど、韓国の寄付ってどうなの?
友人など周りで寄付している人は多いですね。社会人になってからか、アフリカの子ども一人に対して月何千円かを寄付する、というのがとても流行ったんです。テレビで芸能人が寄付するのを見たり、会社のデスクに支援するアフリカの子どもの顔写真を置く人もいたりします。
── えっ、寄付した子どもの写真を会社に!?
そうです。それ以外には、NAVERという会社ではクリックすると募金できるサイトがあるんです。
── でもそれってそんなに使われてるの?
結構みんなやってますよ。ネットショッピングやサイトにアクセスしたときのポイントやクレジット、振込でも寄付できます。プロジェクト毎に目標金額を設定して、達成状況を見れるんです。例えば、貧困で生理用品が買えない女の子に寄付する、なんて具体的なものが多いです。そして、寄付した分だけNAVERが同額を上乗せして寄付する、マッチングギフトの仕組みもあります。
── 日本でも最近増えているクラウドファンディングみたい。
そうですね。クラウドファンディングは寄付と別のタブにあります。クラウドファンディングになると作った製品をあげる、という性質のプロジェクトが多いですね。実は、ネットだけでなくて、テレビでも寄付番組があるんですよ。
■ テレビとネットとリアルをつないだ寄付の仕組み
── テレビで寄付? 一体どういうもの?
日本語では『同行(ドンヘン)』という意味の番組です。KBS(日本のNHK)が毎週土曜日に1時間放送します。国内にいる障がいをもった方や、親のいない子どもなどに密着したドキュメンタリーです。仕組みとして面白いのは、番組中に数字が出てきて、その番号に電話すると、その人に直接寄付ができるんです。人によっては、口座に振り込んだり、手紙を送ったり、生活用品を提供したり、ということもできます。
── なんて斬新な仕組み! でもそんな一時期に一気に支援が集まったら、その人は逆に困らないの?
テレビ放送が終わると、先程話したNAVERのサイトに『同行』の専用枠があって、そこに放送された人への寄付プロジェクトが掲載されるんです。そして、定期的な寄付をしたい人は、寄付先を記載して口座振替での寄付ができる仕組みになっています。
── 寄付されたのお金や物はどうやって使われるの?
始めの放送から数ヶ月後に、こないだの寄付はこのように使われました、という放送があります。それもドキュメンタリーなんです。支援したい人がお家まで行って、家を修理してあげたり、食事を作ったり。大学の入学金に使えました、というものもありました。
── 寄付って実際は何に使われたか分かりにくい面があるから、この取り組みは視聴者にも受け入れられやすそう。この番組は視聴率高いの?
視聴率は4.7%です。韓国ではほとんどがダウンロードなどで視聴するのでこれはとても高い率です。昔はこのような番組がたくさんありましたが、今はこの『同行』だけになりました。
── 今まで教えてもらった寄付はお金を持っていないと取り組みにくいけれど、子どもたちが寄付に関わる機会はある?
日本の赤い羽根のようなもので、「愛の実」という赤い実をモチーフにした寄付があります。小学校から高校で寄付する感じですね。あ、国会議員も付けています。
── 小学校のころ、赤い羽根募金をしたけれど、結局何のための募金か意識していなかったなぁ。
それは「愛の実」ではないですね。キャッチフレーズが「貧しいとなりの人を助ける」ですから。
■ 国の背景や立場は異なっていても・・・
ここまで韓国の寄付の仕組みがメディアを巻き込んで広がっていることには驚きました。日本は自然災害時に寄付が集まりやすい印象があります。韓国では自然災害が少ない一方で、貧富の格差が激しく関心も高い、という背景の違いもあるかもしれません(日本でも格差はありますが)。日本版の『同行』、子どもと一緒に見てみたいです。寄付や社会課題を家族や友人で気軽に話せるきっかけができるのはとても良いことだと感じました。
前編の金融教育についても日本で参考にできる部分があると思います。まさに今、筆者は長女とおもちゃを買う、買わないの言い争いをしていたところ。収支を把握すること、欲しいもののために自ら工夫すること、などどのように分かりやすく伝え、納得してもらうか、まだまだ我が家の課題は山積みです。
フィナンシェの会では、引き続き様々なバックグラウンドの方に幼少期のお小遣いや寄付、投資などの話を取材させていただきます。次回もお楽しみに…!
文:Mari Kamei
たくさんの家庭や子どもたちに届けるため、可愛いイラストを使ったお金の紙芝居、海外事例の翻訳など、さまざまなコンテンツを作っていきたいと考えています!