マトリックスの原理2° 決済手段が銀行の負債として供給されている
日本円の決済手段(決済手段とは支払(決済)ができること、第三者に送金できること(送金には口座振替を含む)である。)はマトリックス上の項目では、①現金、②流動性預金、③政府預金、④日銀預け金(日銀当座預金)の4項目に分類され、負債サイドでは①③④が『中央銀行』(日本銀行)、②が『銀行等』(中央銀行を除く一般銀行)の部門に計上されている。
決済手段が銀行の金融負債として供給・計上されていることは、以下のような性質をもつ。
第一に、銀行以外の経済主体間でどのような取引をおこなっても、銀行以外の経済主体が保有する決済手段の総額は変化しない。
第二に、一般銀行(日銀以外の銀行)全体では、資産の増加に対して自行の負債である預金で決済するため自動的に調達がなされる。資産を減少させると並行して調達も減少する。一般銀行の調達の中心が、金融負債として供給している決済手段の流動性預金とそれから変換される定期預金などが中心であることから、「一般銀行全体では、資産の増加に対して自動的に預金が発生する。資産を減少させると並行して預金も減少する」「預金は一般銀行が資産を増加させると増加し、減少させると減少する」ということである。
これは、上記一とあいまって原理的には、一般銀行全体ではいくらでも資産を増加させることができるということを意味するが、個別の銀行では、預金者が他行に自由に送金できたり、預金から現金に払い出せるため資金流出のリスクがあり、信用力を超えて規模を拡大することはできず、また自己資本比率規制などの規制により資産規模には自ずと上限がある。
第三に、日銀以外の経済主体間でどんな取引を行なっても日銀の負債である決済手段の総額は変化しない。
第四に、日銀は、日銀との取引の決済を全て日銀の負債で行うことから、上記三とあいまって原理上はいくらでも資産を増加させることができる。すなわち、無制限のバランスシート拡大能力をもつ。
上記の四は日銀預け金についての記述で、日銀預け金(日銀当座預金)は一般銀行の預金と異なり日本銀行1行が供給しているため他行に流出することがない。また規模に関して自己資本比率規制などの法的な制約もない。規模、実質的な期間、金利等の条件は日銀が独自に設定できる。調達サイドが規模、期間、金利等などの条件を設定できるという最強の調達手段といえる。
原理3°『金融元本取引では資金過不足は発生しない』へ続きます。
原理2°の詳細と日銀預け金の性質の詳細につきましては、
金融マトリックス―国債と銀行の運命 | 磯野 薫 |本 | 通販 | Amazon
を参照してください。
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