磯野薫

1982年、ボルガ―の時代から銀行のリスク管理を専らとし後半は内部統制が加わりました。 四半期ごとに公表される金融マトリックス(資金循環統計)を追っていくことをメインにそのときどきのトピックスをお伝えします。

磯野薫

1982年、ボルガ―の時代から銀行のリスク管理を専らとし後半は内部統制が加わりました。 四半期ごとに公表される金融マトリックス(資金循環統計)を追っていくことをメインにそのときどきのトピックスをお伝えします。

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最近の記事

ランオフのスピード

前回の記事の追加になりますが、日本銀行がランオフ(保有債券の落ち切り)を開始した場合どのくらいのスピードになるか計測しました。 日銀が2023年3月末に保有する国債・国庫短期証券は額面で569.7兆円でその償還額を四半期ごとに表示したものが下のグラフです。 年度間償還額は 23年度78.3兆円、 24年度62.8兆円、 25年度60.6兆円、 26年度56.6兆円と続き、 4年半後の2027年9月末の残存率は49.9%とほぼ半減するスピードです。 マトリックス的(資金循

    • 2022年第4四半期マトリックス速報② YCCが撤廃されると

      日銀のYCCの撤廃もしくは形骸化が期待されています。YCCが撤廃され日銀のランオフ(保有国債の期日落ち切り)が始まると銀行にとってどのような状況が予想されるかマトリックスを使って考えてみたい。   順路は、 ①量的・質的緩和によって国債から日銀預け金に代替されていった過程 ②日銀預け金の特徴 ③日銀は政策金利を上げられるか ④YCCが撤廃されると としたい。   1、国債から日銀預け金へ~国債の代替資産としての日銀預け金   量的・質的緩和が始まった2013年3月末から20

      • 2022年第4四半期マトリックス速報① 鉄板の現預金選好は続く

        2023年3月17日に金融マトリックス(資金循環統計)の22年第4四半期(速報値)が公表されました。 定点観測として低金利政策が継続できることの前提である家計の鉄板の現預金選好に変化があるか見ました。   1、  家計のネット金融資産拡大は続く 22年も引き続き一般政府と海外部門のフロー差額(資金過不足)はマイナスが続き、家計を中心に資金余剰(フロー差額がプラス)となっています。 換言すると国債の増発と国際収支の経常黒字の継続により家計を中心にネットの金融資産が増加している

        • 2022年第2四半期マトリックス速報② 家計の純資産

          純資産(金融資産と金融負債の差)の変動はフロー差額(資金過不足)と時価変動(調整差額)によって起こります。 下表は2005年3月末の純資産と2022年6月末の純資産及びその間のフロー差額の累計値と調整差額の累積値を大部門ごとに表示したものです。 22年6月末純資産=05年3末純資産+この間のフロー差額累計+調整差額累計 となっています。 主な特徴は、 ①一般政府部門と海外部門の資金不足(マイナスのフロー差額、純金融負債の供給)で家計を中心とした他の部門が純金融資産の増加(資金

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          2022年第2四半期マトリックス速報① コロナによる負債膨張の行方

           9月21日公表の22年第2四半期速報のマトリックスの特徴についてピックアップします。 最初にコロナ禍に対応して膨張した金融負債の動向が注目されます。 マトリックスが新基準になった2005年第2四半期からの17年4カ月のフロー全体の動向は下の表の通りです。 主な特徴は、網掛けの部分で、 ①一般政府の債務証券(国債)の純増とその費消による資金不足及び経常黒字の累積による海外部門の資金不足(ネット金融負債の供給)が継続している。 ②①のネット金融負債の供給により家計と非金融法

          2022年第2四半期マトリックス速報① コロナによる負債膨張の行方

          マトリックスの原理6° 経常黒字を超える円投は必ず円転者がいる

          直物外貨ポジションの発生要因としては、 ① 非金融元本取引(経常取引)によるもの、 ② 外貨建て資産負債の外貨建て時価の変動によるもの、 ③ 外貨売買取引によるもの があります。 外貨売買取引で発生した直物外貨ポジションは、必ず反対のポジションを持つ主体が存在します。非金融元本取引(経常取引)あるいは外貨建て時価の変動で発生した場合は片サイドのみ単独で発生し反対のポジションは発生しません。仮に全ての直物外貨ポジションを外貨売買取引で相殺させた場合、非金融元本取引と外貨建て時価

          マトリックスの原理6° 経常黒字を超える円投は必ず円転者がいる

          マトリックスの原理5° 外貨の売買はほぼ必ず対外資産・負債が発生する

          外貨の売買は外貨の決済場所が海外に、円の決済場所が東京にあるため海外部門を動かします。しかし、外貨売買も金融元本取引であり、「原理3° 金融元本取引では資金過不足は発生しない」の通り、海外部門、国内部門いずれにおいても資金過不足は発生しません。このことは、「外貨の売買を行うと対外資産と対外負債が発生する」「新たな対外資産を金融元本取引で取得すると対外負債が発生するか既存の対外資産が減少する」「新たな対外負債を作ると必ず対外資産が発生するか既存の対外負債が減少する」ことを意味し

          マトリックスの原理5° 外貨の売買はほぼ必ず対外資産・負債が発生する

          マトリックスの原理4° 純金融資産の変化はフロー差額と時価変動の合計

          マトリックスは今期末のストック=前期末ストック+今期フロー+今期調整の関係であることから、ある部門の資産・負債差額は 今期末の純資産=前期末の純資産+今期の資金過不足+今期の調整差額 となります。 純資産はストックの資産と負債の差額、資金過不足はフローの資産負債差額、調整差額は調整金額の資産負債差額です。 パネルの家計部門の表の差額行をみると、1980年3月末の純資産210兆円から2021年3月末の純資産1606兆円まで41年間で1396兆円増加額しているが、給与所得や利子・

          マトリックスの原理4° 純金融資産の変化はフロー差額と時価変動の合計

          マトリックスの原理3° 金融元本取引では資金過不足は発生しない

          マトリックスは部門ごとに負債サイドに差額の項目を設けて資産サイドと合計を一致させています。フローの差額を資金過不足と呼んでおりある部門、例えば民間非金融法人企業部門のある期間のフローの差額がプラス(金融資産が超過)の場合が資金過剰(貯蓄超過)、マイナス(金融負債が超過)の場合が資金不足(貯蓄不足、投資超過)となります。 因みにストックの差額を金融資産・負債差額、調整の差額を調整差額と呼んでいます。 金融元本取引は、マトリックス上の決済手段以外の項目の移動を行う金融取引と定義

          マトリックスの原理3° 金融元本取引では資金過不足は発生しない

          マトリックスの原理2° 決済手段が銀行の負債として供給されている

          日本円の決済手段(決済手段とは支払(決済)ができること、第三者に送金できること(送金には口座振替を含む)である。)はマトリックス上の項目では、①現金、②流動性預金、③政府預金、④日銀預け金(日銀当座預金)の4項目に分類され、負債サイドでは①③④が『中央銀行』(日本銀行)、②が『銀行等』(中央銀行を除く一般銀行)の部門に計上されている。 決済手段が銀行の金融負債として供給・計上されていることは、以下のような性質をもつ。   第一に、銀行以外の経済主体間でどのような取引をおこな

          マトリックスの原理2° 決済手段が銀行の負債として供給されている

          マトリックスの原理1° 誰かの金融資産は誰かの金融負債

          金融資産と金融負債を対象にしている金融マトリックスには従っている原理があります。ここでは『誰かの金融資産は誰かの金融負債である』と『決済手段は銀行の金融負債として供給されている』という根本的な2つの原理とそこから派生する4つの原理を述べます。 金融資産・負債は人が作った契約であり同じ契約の一方の当事者にとっては金融資産、もう一方の当事者からは金融負債となります。従って個々の金融資産・負債でも、それを集計したマトリックスでも、残高(ストック)、取引額(フロー)、時価変動(調整

          マトリックスの原理1° 誰かの金融資産は誰かの金融負債

          金融マトリックス(資金循環統計)とは

          四半期ごとに公表される金融マトリックスを追う前に概要や原理を紹介します。 金融マトリックスは、日本銀行が四半期毎と年度毎に作成、公表している統計で、日本国内の金融資産・負債の時価ベースの残高(金融資産・負債残高表(ストック))、資金決済と金融取引によって生じた期中の金融資産・負債の増減額(金融取引表(フロー))、前期ストックと当期ストックの変化額と当期フローとの乖離額で、主に時価評価による変動を記録した調整額(調整表)の3種類の計数を、部門(金融資産・負債の保有者)と取引項

          金融マトリックス(資金循環統計)とは