映画『C'MON C'MON』、まるで宇宙のような映画🎬
まるで宇宙のような映画だ。
ホアキン・フェニックスがジョーカーを演じてアカデミー主演男優賞をとり、次に選んだのは家族の都合で9歳の甥っ子と暮らすはめになる中年ラジオ・ジャーナリスト役だった。
なんと言ってもオスカー俳優と対等に渡りあう甥っ子ジェシー役のウディ・ノーマンには驚かされる。聡明でユーモアがあり、不安定で衝動的なジェシーを見事に演じている。天才だ。
マイク・ミルズ監督はきっと優しい人間なんだろう。でなければ子供と同じ目線で対話なんて出来ない。ホアキン演じるジョニーのインタビューに対する姿勢は監督自身の姿だ。そして監督の人生観が映画に表われている。子供から大人になること、人は出会い、別れ、死ぬこと、時間の流れには逆らえないこと、過ぎ去り行くもの、失われるものに対する郷愁の念、監督はその思いをモノクロ映像に捉えようとしている。
アメリカのロックバンドThe Nationalのデスナー兄弟と監督による短編映画「I am easy to find」は美しくて、汚い、悲しくて、楽しい、そして素晴らしい人生という不思議な旅を俯瞰して捉えた傑作であり、本作はまさにこの短編映画と同じ地平に立つ作品だ。
映画『C'MON C'MON』はジェシーとジョニーの絆の物語であり、家族の再生の物語でもある。監督はそこに宇宙のような広がりを実に見事に生み出してくれた。彼らの物語が自分の物語として動き始めた時、自分が作品の一部となり、壮大な宇宙に漂う小舟のように心地よく身を委ねていることに気づくだろう。
ジョニーとジェシーのかけがえのない時間は、モノクロだからこそ感じる永遠の中の一瞬の瞬きだ。愛おしい。だからこそ記憶したい。
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