Netflix「Don’t look up」
Netflix「Don't look up」のレビューです。気候変動問題や行きすぎた市場原理主義、格差、分断といった私たちが直面している問題をコミカルそしてシリアスに描いたブラックコメディです。
愛すべき登場人物たち
背後にあるテーマがシリアスなだけに登場人物はコミカルでメチャクチャやりたい放題しています。
選挙の事しか頭にない“女トランプ”大統領、“マザコン”大統領首席補佐官、アルゴリズムと「進化」至上のビッグテックCEO、快楽主義の女性キャスター。彼らのやりたい放題が実に爽快でしたね!
レオナルド・ディカプリオ演じるランドール・ミンディ博士、ジェニファー・ローレンス演じるケイト・ディビアスキーの視点を通して、私たちは彼等に呆れ果て、怒り、泣き笑います。そして圧倒的なアカデミー賞受賞演技を通して気付きます、これは現実に起きていることであると。
ポスト・トゥルースの時代の災害映画
環境活動家グレタ・トゥンベリが訴える理想、理念を嫌い、嘲笑する人がいます。劇中でディビアスキーは怒りをあらわにし地球の危機を訴え、ミーム画を拡散される、これはグレタ・トゥンベリそのものでした。
気候変動問題自体を否定する人もいます。コロナパンデミックについても同様です。
自分達が見たいものを見、信じたいものを信じ、異論者には徹底して攻撃的の手を緩めない。現在、こうした世界規模の分断、不寛容が起きています。
2016年のイギリスのEU離脱是非を問う国民投票、アメリカ大統領選挙辺りからポスト・トゥルースという言葉が流行したのは記憶に新しいですね。
気候変動問題、コロナパンデミックとワクチンを巡る是非、こうした極めて重大なトピックがSNSを通していち早く発信、拡散されるようになり、世界規模かつ個人単位で天秤にかけられています。
こうして考えてみると、2021年製作の映画として災害そのものを天秤にかけることに必然性があり、この映画の大きな魅力となっています。
最後の晩餐 祈り
この映画はラストで明確な答えを出していません。赤や青、右や左、上や下という二元論的論争の帰着点として隕石を地球に衝突させ、破壊し、ゼロリッセトしています。このある意味公平な結末があるからこそ、単なる災害映画に止まらない品格がこの映画にあるのだと思います。
そしてなんといっても、レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、ティモシー・シャラメ達による最後の晩餐がとても美しかったですね。室内の調光、食卓に並べられた食事、部屋の装飾、どれをとっても完璧で、宗教画のような神聖なシーン。ティモシー・シャラメの配役も素晴らしかった!
最後に
久しぶりに泣きながら笑った映画でした。そして映画の終盤には自分の信仰や、最後の晩餐について考えさせられる、そんな複雑な気持ちになるなんとも不思議な映画でした。
それではまた。