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仙台の伝説の書店「八重洲書房」を思い出す

今日は書店の話題がにぎやかだった。経済産業省が「書店振興プロジェクトチーム」を設置し、本格支援に乗り出すという。提言した組織を構成する自民党の政治家や提言の内容を読むと、書店の減少に国が支援に乗り出す、という話に諸手を挙げて賛成できない面もあり、果たして本当に支援になるのか、という疑問はぬぐえない。具体的な支援策が出てくるまでは様子見なのかな、と思っている。

そんな話題をきっかけに、思い出すのは、仙台にあった「八重洲書房」という伝説の書店だ。なぜ伝説なのかは、私が書くよりも、このブログのほうが魅力を伝えてくれていると思う。

私も学生時代によく通っていた。当時は、書店で置いてある本の傾向が違うことや八重洲書房がいかに特別だったのか、まったく知らず、ただただ、「ここへ行けば、何かしらの新しい世界が開ける」と夢中だった。仙台駅が目の前の繁華街なのだが、飲食店が建ち並ぶ小路の古いビルにあるのも、隠れ家に潜り込むような感覚で、ちょっと大人になったような自分が気持ちよかった。

ハリー・クレッシングの『料理人』やダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』(90年代に大ヒットするずっと前だ)、フランク・ハーバード、アーシュラ・K ・ル=グィン、フィリップ・K・ディックなどのSFやファンタジーを主に買っていたけど、谷川俊太郎や村上春樹を知ったのも、この書店だった。岩波書店やみすず書房、晶文社、白水社など、子どもの頃から慣れ親しんだ講談社や集英社、小学館とは違う出版社の存在を認識したのも、八重洲書房に通ってのことだった。買える本はほんの少しだったけど、哲学や思想の本に触れたり、芸術に関する本や画集を眺めるのは、新鮮だった。八重洲書房の本は、そこにあるだけ。訪れる人を選ぶことなく、どの本を手にとっても自分のために用意されている気がする揃え方だった。

バイトをするようになり、少し余裕が出てからは、八重洲書房の隣にあった喫茶店「グッドマン」のドアを開け、コーヒーを飲みながら、買ったばかりの本を読むのが、何よりも好きだった。特別な時間だったと思う。

仙台を離れてからは、帰京したときにたまに寄るくらいになってしまったし、移転してからは足が遠のいてしまった。

その後、何十年も経ち、「あの書店はいったいなんだったんだろう」という疑問がわき、ネットで検索し、伝説の書店と知ったくらいの私である。上京したときは、「八重洲ブックセンターの系列店だったのかな」と勘違いしたほど無知だった。常連だった人たちに比べたら、語るのもおこがましいのだが、今の私の基礎を作ってくれたのは、間違いなく八重洲書房だった。

独立系書店も増えているけれど、八重洲書房のような店には、二度と出会えないだろう。タイムマシンがあるなら、あの頃に戻って、預金をはたいてでも目に付く本を片っ端から買いまくりたい。八重洲書房の空気が私にとっての書店にしかない文化を教えてくれたのだと思う。


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仕事に関するもの、仕事に関係ないものあれこれ思いついたことを書いています。フリーランスとして働く厳しさが増すなかでの悩みも。毎日の積み重ねと言うけれど、積み重ねより継続することの大切さとすぐに忘れる自分のポンコツっぷりを痛感する日々です。