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Bounty Dog【清稜風月】

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遠く、でもいずれ来るだろうこの世界の未来を先に走る、とある別の世界。人間達が覇権を握るその世界は、人間以外の全ての存在が滅びようとしていた。事態を重くみた人間は、『絶滅危惧種』達…
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2023年6月の記事一覧

Bounty Dog 【清稜風月】98-99

98

 城の主、槭樹・イヌナキは本丸の中庭に未だにいた。城のあちこちから聞こえてくる部下達の声と轟音、中庭に吹く微風が流れ伝えてくる曲者”3種”の気配を、終始聴覚と第六感を働かせて感知していた。
 右手に、鞘から引き抜いた大太刀を握っている。此処にやって来た侵入者を何時でも斬り捨てる準備を万端にした状態で、先程から声が聞こえてくる若い男を”第四の曲者”と認識すべきか、心の中で吟味していた。
 ー

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Bounty Dog 【清稜風月】96-97

96

 スパイに、己の生涯の中で最も想定外の信じられない事態が起こった。齢は若いが潜入諜報や暗殺等の難関任務を幾度も完遂させてきた”元人間の幽霊”は、初めから人間では無い存在がしてくる行動だけは”お見通し”出来なかった。
 突然、背後から強烈な地鳴りと激しい揺れが生じた。曲輪の陰に隠れていた少年の直ぐ傍を、割れた瓦が飛んでいく。あの狼の亜人については己が現在所属している組織が情報を得ているので、

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Bounty Dog 【清稜風月】94-95

94

 完璧な安心・安全なんて此の世に無い。例えあったとしても、神や運命という存在は”生者”にのみ、気まぐれにしか与えてこない。己が祖国の為に真面目に任務をこなそうが、何処を探してもそんなモノは初めから全く無い。其れも”人間としては死んで”から11年間此の世に留まり続けて重々承知している”幽霊”が背負わされた宿命だった。
 寧ろ自由という『全ての人間が持つべき最高の幸せ』がある国だと世界に謳い続

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Bounty Dog 【清稜風月】92-93

92

 ヒュウラは、己だけに効果がある”人間の料理の臭い”という猛毒が充満している天井裏から一刻も早く抜け出したかった。冷や汗と吐き気がどんどん強くなる。意識すら遠くなってくる。
 煮物の臭いを我慢し続けるのは”部屋大回転罠”よりも遥かに地獄だった。だが槭樹という人間の男に日雨から預かっている密書入り菓子折りを渡すまで、気絶する訳にはいかなかった。出口を探して、猛スピードで這い進んでいく。
 激

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Bounty Dog 【清稜風月】89

89

 今度のYESは命を奪われる危険が無かった。部屋中から響いてくるカラカラという軽い音がガラガラという重い音に変わり始めた頃、コノハの背後に空いていた長方形の穴に、上から落ちてきた木製の板が蓋のように覆い被さった。
 重い音を出して穴から不透明の窓になった侵入口に向かって、音に反応したコノハの激推しイケメン亜人が顔ごと視線を向けてきた。漸くコノハ・スーヴェリア・E・サクラダ保護官は、己の護衛

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Bounty Dog 【清稜風月】87-88

87

 “回る”仕組みがこの城に備わっている事は、城の主である槭樹は当然知っていた。イヌナキ一族も皆知っているが、此れ迄に今は町から数十里も離れた土地の邸に住んでいる己の老いた両親も、寿命を全うして冥土に旅立っている祖父母も曽祖父母も一度として使った事は無かった。
 だが槭樹自身は、試運転で数度”回した”事があった。しかし凪と結婚して凪が柳を孕んだ時期に、己の大事な家族がカラクリに巻き込まれて”

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Bounty Dog 【清稜風月】85-86

85

 ヒュウラには、忘れている”神輿”が1つあった。ヒュウラに騙された事に勘付いた睦月・スミヨシが、イヌナキ城の正門前にある広場にやって来ていた。
 当然の如く、睦月は怒っていた。安本丹(あんぽんたん)な幼馴染の虫に唆されて性懲りも無く”忍者ごっこ”をしている西洋からやって来た馬鹿犬にキツい灸を据えたいと思いながらも、櫻國の極々平凡な庶民である彼は、甘夏の時は”知り合い”として特別に邸に入れた

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