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Bounty Dog【アグダード戦争】

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遠く、でもいずれ来るだろうこの世界の未来を先に走る、とある別の世界。人間達が覇権を握るその世界は、人間以外の全ての存在が滅びようとしていた。事態を重くみた人間は、『絶滅危惧種』達…
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2022年6月の記事一覧

Bounty Dog 【アグダード戦争】109-110

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 アルバード大佐の忘れ形見のような存在である、大佐に半ば洗脳されて人間の服と安売りの服屋が大好きになってしまっているモグラの亜人・コルドウは、ヒュウラが『箱』から”滅茶苦茶格好良いやっちゃ”の人間ことアグダード3大勢力の大将の1人、ナスィル・カスタバラクを連れて出てくるのを、土の中でずっと待っていた。
 モモモモ、モモモモ言いながら、彼の周りに大勢の、非常に大勢の同種の仲間達が、穴を掘り

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Bounty Dog 【アグダード戦争】107-108

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 ミトは朱色目の攻撃の仕方に驚いていた。隠し部屋で引き出しと一緒に放り捨てていたボールペンを拾っていて、敵兵の後頭部、頭の付け根の部分の奥にある急所『脳幹』に突き刺して倒していた。縫い針や爪楊枝の方がやりやすい最も傷が残らないプロの暗殺者がする暗殺の手法だが、使っている物が自分も持っている文房具なので、ミトにはまるでヒュウラが人間を暗殺しているように見えた。
 人間の道具は、どんな物でも

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Bounty Dog 【アグダード戦争】106

106

 アグダード3大勢力の大将の1人の座を手に入れている、とある先進国陸軍第一部隊の元・少佐ナスィル・カスタバラクに拘束されながら、ヒュウラは漸く”あの穴”に辿り着いた。ワザとではないが非常にゆっくり歩いてきたので、恐らく15分程、時間が掛かったと思う。
 ゆっくり歩いた事をカスタバラクに全く”叱られ”なかった。相手も体力が消耗し切っているらしく、己のように足を引き摺ってはいないが、背負って

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Bounty Dog 【アグダード戦争】103-105

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 ミトが物色を始めた隠し部屋の机の引き出しは、何年も閉まったままで埃がこびり着いており、非常に開きにくかった。強引に力任せに開けたので、取手は取れなかったが引き出しの奥から木が割れたような音が聞こえる。
 実際に破壊していた。奥側の底板が割れて1段目に入っていた物が下の段に落ちる音が響く。壊れた引き出しを引っ張り出して、隙間から2段目の物を手探りで掴んで引っ張り出し始めた。引っこ抜いて放

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Bounty Dog 【アグダード戦争】101-102

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 ミト・ラグナル保護官と”アグダード民間お掃除部隊”の副将こと通称『朱色目の黒布』は、火の海と化しているナスィル・カスタバラクの私邸で爆弾兵達と応戦していた。敵兵が爆弾を起動させる前に眉間と首に銃弾を撃って容赦無く殺していたのは、朱色目だけじゃ無かった。
 ミトも心が生き返った時に、同時に覚悟を決めた。自分とヒュウラ達をこの地に連れて来たシルフィ・コルクラート保護官が言った通り、この地で

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Bounty Dog 【アグダード戦争】99-100

99

「俺が陸軍の部隊の一員としてアグダードに来た時は、此処は食う物が何も無い大飢饉の真っ最中でな。人間が人間を食っている地獄みたいな状態だった。だがその状態を見た時、俺の新兵時代に化け鮫に喰われて死んだ少佐の事を思い出してな。コレは兵器として使えると内心大いに喜んだ」
 座っているヒュウラの首根っこを掴んで引き摺りながら、支配者の道を選んで暴走している41歳のナスィル・カスタバラクは、崩壊した

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Bounty Dog 【アグダード戦争】98

98

 ーー『鳶から鷹が産まれる』という、東の小さな島国で発祥されたらしい諺があるが、他の大勢の人間と同じく極々平凡的な顔をしていた両親は、産まれた瞬間の顔を見た途端に助産師と医者と看護師達を全員窒息させた、異常な美を持って産まれた俺を鷹どころか象を餌にして船を沈める怪物のロック鳥とでも思ったらしい。恐れ恐れてしまい、自分達が窒息しないよう産まれて直ぐに顔に袋を被され、産まれたその日の内に病院を

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