Bounty Dog 【アグダード戦争】103-105

103

 ミトが物色を始めた隠し部屋の机の引き出しは、何年も閉まったままで埃がこびり着いており、非常に開きにくかった。強引に力任せに開けたので、取手は取れなかったが引き出しの奥から木が割れたような音が聞こえる。
 実際に破壊していた。奥側の底板が割れて1段目に入っていた物が下の段に落ちる音が響く。壊れた引き出しを引っ張り出して、隙間から2段目の物を手探りで掴んで引っ張り出し始めた。引っこ抜いて放り捨てた1段目には軍隊の支給品らしい紋章が刻印された文房具がくっ付いていたが、何の”手掛かり”にもならなさそうなので無視する。2段目から出てきたのは、半額シールが表紙に貼られた鍵付きの5年日記。数ページしか書き込まれていなさそうだった。開ける鍵も付いて無い。放り捨てる。
 次に引き抜いた物は”ヒュウラの居場所を見つける”のに非常に有力な物だった。先進国の紋章が背面に掘られた携帯用の通信機器を手に入れる。電池切れだが機械は生きていそうだった。ポケットに入れる。もう少し何か見つからないかと思い、机の穴に手を突っ込むと、
 朱色目が己の名前を呼んできた。怒鳴るように名を呼んで来て、空いていた方の腕を掴まれる。強引に伏せられると、直後に無数の銃弾が飛んで来た。
 奇襲される。暫く不気味な沈黙が漂って、静寂を破るように火の付いたダイナマイトが何束も飛んできた。朱色目に腕を引っ張られて、部屋から高速で退室させられた。机から出てきたミトの腕に深緑色の厚い木の板が掴まれている。最後の押収品を確認しないまま2人が隠し部屋を出た直後に、部屋が爆発して炎上した。
 部屋を容赦無く焼き払ったカスタバラク軍の兵士達が、ミトと朱色目を取り囲む。全員が身体に爆弾を巻き付けていた。爆弾兵の1人が手に持ったライフル銃を構えながら叫ぶ。
「虻虫は此処で駆除してやる!旦那様の為に!!」
 2人の背後で炎が轟々と吹き上がっている。大事な主を護ると言い放った部下の兵士によって、大事な主の大事な思い出の品々が勝手に喪失させられた。朱色目は複雑な気分になりながらアサルトライフルを敵勢に構える。
 ミトも嫌いな人間の事だが、良い気分にならなかった。深緑色の厚い木の板をポケットに入れてから、茶色い大きな目を限界まで吊り上げてドラム型弾倉付きサブマシンガンを構えた。

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