Bounty Dog 【アグダード戦争】109-110

109

 アルバード大佐の忘れ形見のような存在である、大佐に半ば洗脳されて人間の服と安売りの服屋が大好きになってしまっているモグラの亜人・コルドウは、ヒュウラが『箱』から”滅茶苦茶格好良いやっちゃ”の人間ことアグダード3大勢力の大将の1人、ナスィル・カスタバラクを連れて出てくるのを、土の中でずっと待っていた。
 モモモモ、モモモモ言いながら、彼の周りに大勢の、非常に大勢の同種の仲間達が、穴を掘りながら”説教”会場の最終調整を行なっていた。穴から鋼鉄の爪がついた腕が伸びて、『箱』から剥がれ落ちていたコンクリートの壁を運んで一箇所に組み立てている。ヒュウラが初めてコルドウ達に会った広場から、彼は其処に居たほぼ全てのモグラの仲間達を『箱』の周囲に連れてきていた。
 彼の群れの仲間は1体も中に混ざっていない。名をまだヒュウラに教えていない雄の若いコルドウは、此処から遠い場所にある別の巣にいるだろう、自分の群れのモグラ達には未だ内緒で単独行動をしていた。
 彼は自分の群れでサニリーとパッチョムを含めても2番目に若い15歳のモグラだが、モグラにも群れに序列があり、彼は1番下っ端であった。故に、最下っ端の特権のようなものだと思っている、何も告げずに突然居なくなっても暫く誰にも気付かれない『自由』を利用していた。

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