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待草雪
2021年10月4日 21:02
2-3 シャッターの裏側は、埃の雪原だった。広い一軒家の高い天井から糸屑のようなハウスダストが舞い上がっては降り落ちていく。 一行は周囲にあるものの方に目を奪われていた。無数の分厚い本がぎっしりと詰まった棚が、壁一面を覆っている。 背の低い眼鏡の男は、上機嫌に鼻歌を歌いながら、身体を時々小さく振って、積もった埃を払い落とす。頭も肩も灰色の塵が乗っているレナとトカライはそれぞれ両方とも眉間
2021年8月19日 18:38
2-2 頭上に?マークを浮かべたカマックが、その場で延々と回転しながら自分の車を探すが、影すら全く見つからない。そのまま宙に浮きだしそうな程の回転力をつけ始めた少年が、目を回す前に肩を掴んで動きを強制終了させたメロンは、同じく周囲を見渡してみるが、やはり車の姿が何処にも無い。 レナとトカライも軽くだが周囲を探索する。が、やはり誰も見つめられない。徐々に冷や汗をかき始めていたカマックが遂に焦
2021年3月31日 19:22
ーーこの世界の名前は、『フィルアース』。世界は主に2つの名称で区別されていて、右側の巨大な大陸は「東世界」、左側の3つの大陸は、その他の小島等もまとめて「西世界」と呼ばれています。 2つの土地にはそれぞれ大国が統括していて、西世界は生物科学国家「ヴィクトリア共和国」、そしてこの東世界は、軍事大国「アルカディス帝国」が支配しています。 私、メロン・フルールは東世界の真ん中にある「岩山地帯」のフ
2021年4月15日 21:19
※書き下ろし。全文有料。
2019年12月4日 21:28
1−5 生気を失った姉の目が、ショックを受けている最愛の妹を見つめている。 全身の力が抜けたメロンは、肩から大きく崩れ落ちる。無残な姿と成り果てた家族の姿に、滝のように涙が溢れ出してくる。 カマックは天井を眺めると、虚ろな瞳に火を付ける。震える両手を握り締め、鞘に納めている武器に手を掛けると、 鎧を纏った男達に、背後を包囲された。「おやおやそいつは知り合いか?どうする?お前達は袋の鼠だ
2019年11月12日 12:06
1ー4――遙か遠い場所から、小鳥の囁き声が聞こえる。暖かい日差しと心地よい風が、身と肌を優しく撫でてくる。 揺れ動かされた髪が頬を摩ると、うめき声を出した少女の意識が戻る。ぼんやりとした思想と視界が徐々に鮮明になった時、薄暗い空間で初めて見た景色は、 目の前に広がる、大きな一筋の虹だった。 半開きの巨大なガラス窓の先にある美しい七色の帯は雲の間をすり抜けて、岩山の向こうの遙か遠くへと伸びて
2019年11月12日 11:24
――神様、神様。もし居るのでしたら教えてください。 何故私は、この世界に生まれてきたのですか? 何故この世界は、このようになっているのですか? 何故私は、このように生まれてきたのですか? そしてもし居るのなら、教えてください。 この運命を変える方法を。この怨恨に立ち向かう、勇気を持つ方法を。――