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待草雪
2024年2月26日 00:54
0-Ω 此の”犬”は、月に向かって遠吠えをした事が生まれてから一度も無い。唸り声さえ出した事が無いが、代わりに怒号の吠え声を出した事は、9ヶ月前から幾度もあった。 寡黙に見えるが無駄な会話が嫌いなだけであり、無感情に見えるが、怒り以外の感情の出し方と伝え方を殆ど知らないだけである。故に今も全く反応せずに吠えもしなかった。代わりに相棒が大声で鳴き喚いた。「ブニャアアアアア!!」 “猫”が3
2024年2月25日 00:09
0-θ「誰か、俺を助けて下さい」 タクト・ディスペルは死に掛けていた。特に腰が死に掛けている。痛みは胸からも襲ってきており、左胸の肋骨付近からも強い痛みを感じていた。ストレスだった。数ヶ月間受け続けている過度なストレスと、数ヶ月間殆ど休まずに、中腰で作業に明け暮れていたせいだった。 北東大陸上部の自然豊かな国にある小さな寒村にある自宅のベッドで、タクトはうつ伏せになって倒れていた。見舞いに
2024年2月23日 04:52
0-β 此の“幽霊”は生きている。天に向かって本物のカクテルグラスを掲げると、揺らし傾けて見えないグラスに乾杯を返した。 バーテンダーは要らなかった。カクテル作りは特技のひとつだ。”死ぬ”前から会得している。会得した時、己の齢は4歳だった。 今宵作ったカクテルは、初心者でも作れる入門カクテル、かつ、バーテンダーの腕が試される『カクテルの王』だ。材料はドライ・ジンとドライ・ベルモット。其れら
2024年2月20日 19:41
0-α「本当、お前はクレイジーだよ」 紫煙に包まれた空間で、その男は頭に装着しているヘッドセットに付いたマイク越しに”相棒”に向かって呟いた。 男の名前はセグルメント・カッティーナ。東南の海に群れながら浮かんでいる小さな島の1つの上で、45年前に極々普通の人間として生まれた。魚や海老やタコ貝イカや南国の草木や派手な羽色の鳥や動物云々達と共に生きて育ち、魚と動植物達を島と海に置いてグッド・バ
2024年2月20日 01:56
ーー上出来ね。 あなたは此処まで、間接的だけど付いてきた。初めは早々に退場すると思ってたわよ。余りにも”あの子”は、する事やる事が自由過ぎるから。でもお互い様よ?私達も別に、あなたの気紛れに付き合わないといけない義務なんて無いもの。今もそう、辞めたきゃ今直ぐに辞めて良いの。さようなら。でも、未だ付いてきたければ何時迄も好きなだけ、しつこいくらいに付いてきなさい。 此の物語は、此処で折り返しを