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装いは中身も変える
以前、ドラマカーネーションを見て感じた品格のことふたたび
美容院で#風呂キャンセル界隈の話をした時のこと、スタイリストさんはこんな話もしてくれました。
特別な日の装い
彼がまだ美容師になったばかりの頃(20年前くらい)はクリスマスの日は夕方まで忙しく、6時ごろまでは目まぐるしいけれど、それ以降はお客様たちは皆クリスマスデートに行ってしまってお店はからっぽになるって。
盆と正月の帰省シーズン前はキッズカットに来るお客様が多くなり、帰省に際してお母さんがおじいちゃんおばあちゃんに会う前に、きちんと身なりを整えようとする気持ちがあったのに、最近そういうことが全くなくなったと言うのです。
つまり、特別な装いをする意識が少なくなってしまった。
私とて、恥ずかしいことに、先日帝国ホテルに友人と食事に行くときに履いていく靴がないことに気づきました。
若い頃は服に合わせて色もヒールの高さも違う靴を持っていたのに、今は普段はスニーカーだけ。2足のぺったんこパンプスは服に合わず、仕方なくかつてステージで履いていた靴を引っ張り出してきて履いて行きました。ところが5cmのヒールはもう歩くのがやっと。次の日は筋肉痛。
いつのまにか、特別なおしゃれをして出かけなくなったことを実感しました。
いつだったか、何かで昭和時代のラッシュアワーの映像を見た時に、改札口から通勤する人たちが一斉に出てくると、ザッザッザと靴音が聞こえてきたのに驚きました。
そうだった。この音!
女性はパンプス、男性は革靴を履いているからです。今テレビから通勤ラッシュの映像が映ってもこの音は聞こえません。スニーカーやヒールのない靴を履く人が多いからです。
動きやすい服装は仕事効率も上がるのかもしれませんが、かつてのラッシュアワーの靴音には、仕事人たちのパワーや緊張感がみなぎっていたように聞こえます。
人は着るもんで変わるんや
カーネーション第36話
イブニングドレスを注文してきたサエは、サンプルで作ったドレスに満足し、そのサンプルを着ると言います。
糸子はそれに激怒
「本気で作るんや 本気で着てもらわな嫌や」と啖呵をきります。
サエは着物でもドレスでも中身は一緒だと言うのに対して、糸子は
「人は着るもんで変わるんや」と根岸先生の言葉を伝えます。
サエは、本当は自分を認めてくれた一流の人にイブニングドレス姿を見てほしかったことを告白します。
そして糸子は自分が一流のドレスを作るから、それに釣り合う踊り子になるように言います。
一流のドレスに釣り合う踊り子
その意識をもっただけでサエは変わっていきます。
この物語が、真に品格のあった昔を思い出させてくれるのです
緊張感はあっていい
そう、緊張感。
「緊張する」はちょっとネガティブだけど、緊張感は場合によってはあった方がいい。
制服を着て個性は抑えていた時代から見れば、個性は認められる世の中になりました。
会社勤めでも髪をカラーリングしたり、服装も昔に比べれば自由でいいなあと思うけれど、
その自由な感性は活かしつつ、さまざまな場において的確に自分をスイッチできれば、もっとかっこいい。
場があって、そこにふさわしい服装があって、それを着るにふさわしい立ち居振る舞いができること。それこそが品格。
時代を戻して品格のある世の中をもう一度見てみたいものです。