虎に翼 第67話 神の中の神回か?
はやとらとでも言うのか、BSで7:30から見ている虎に翼。本日7:45の放送が終わった時、体の中を流れた。目から涙じゃなくて肩から滝のようなものがザーと流れていた。
こんな15分間がかつてあっただろうか?
日常生活と民法の改稿を始めた寅子は長官の息子の独特な反応に戸惑いながら作業を進める。
そして時間の経過とともに、捉えどころがないと思っていた航一のこともそのバックグラウンドが徐々に明らかになっていく。
数々のドラマに出演し、その度に演技の素晴らしさに驚かされてきた岡田将生さんは、今回はまた、あんなにも涼やかで整った顔立ちなのに、その表情をほとんど動かさずとも伝わる演技に驚かされる。
そして、平田満さんの演じる星長官は、最高に優秀で地位も名誉もある真の大人物たる謙虚さと優しさを見事に見せてくださった。
「偉そうに言うだけの口だけじじい」
読み直された原稿に赤字で書かれた「大変よろしい」の暖かさ
最後に長官が序文を書き上げるまでの時間、たけもとで待つ航一と寅子
「今日でお手伝いも終わりでしょう?なんだかとても寂しくて」
という寅子の言葉に、何も言わずにほんの少し驚いたように目を見開く航一に向かって
「あ、航一さんも?」
というたった二言のセリフだけれど、改稿作業を続けるうちに、だんだんと航一を理解するようになったのがわかる。
そして表紙の装丁に自分の名前を見て、優三が法律の本を出す夢を持っていたことを思い出し
「代わりに夢を叶えたってことにしちゃおうかしら」
というセリフ。
かつて、こんなふうに自然なセリフがあったろうか?
昔、どなただったか脚本家の方が話していた。言葉はその人が思っていることのほんの一部に過ぎないって、この一言の中にある彼女の思い出、ここまで生きてきた時間全てが
「しちゃおうかしら」とサラッという言葉に込められている。
そしてそういう彼女を見る航一の表情
少ないセリフの中にというか間(ま)に気持ちが詰まっているのが伝わる。
出涸らし
「出涸らしにだからこそできる役目や、若い奴らに残せることがあるんじゃないかい?」
「出涸らしにしては味も香りも上等すぎますね」
どのセリフもいちいち素晴らしい
そして圧巻の序文読み上げシーン
いつの間にか店中の人がそれに聞きいる。これは本当の序文からの引用なのだろうか?
今まで法律なんて用事のある時だけ「どうなってるの?」と思うくらいの存在だったのに、この序文に込めた気持ちがなんと大きな日本全体への愛だっったのかと気付かされた。
このドラマがなかったら、戦後憲法や法律が新しくなっていくプロセスがこんなにも多くの優秀な人材がその叡智を尽くして作ったものとは考えなかった。
序文を読み終え、拍手を受けて幸せそうな顔をする長官の笑顔はまた最高だった。
体の中を滝のような何かが流れて止まらなかった