「自分の時間」
「自分の時間」(アーノルド・ベネット 渡部昇一 三笠書房)
イギリスの作家による、時間活用術の本。「人間というものは、貧乏人でも金持ちでも、とにかく1日24時間しかない」という明々白々なことに目を向け、その24時間でいかに生きるかということに対する具体的なヒントを提供している。
普通の人が、充実した完全な1日を送りたいと思ったら、頭の中で、1日の中にもうひとつ別の1日を設けるようにしなければならない。
この「内なる1日」は、ひとまわり大きな箱の中に入っている小さな箱のようなもので、夕方6時に始まって翌朝の10時に終わる。16時間の1日というわけである。
そして、この16時間はすべて、もっぱら自分の心と身体を成長させ、同胞を啓発することだけに使うのだ。(59ページ)
私が言いたいのは、「夕方6時に、あなたはまだ疲れているわけではないのだ」という事実を直視し、受け入れるということだ(事実、あなたは疲れてはいないのだから)。
(中略)
私が申し上げたいのは、まず手始めに、ひと晩おきに1時間半、何か精神の向上になるような意義のあることを、継続してやってみてはどうだろうかということである。
それでもまだ3晩残るのであるから、友人と会うこともできるし、ブリッジやテニスをすることもできる。(72-73ページ)
心正しき平均的な現代人の生活に何よりも欠けているのは、内省的気分であるのは間違いない。
われわれは自分のことを振り返って考えることをしない。つまり、自分の幸福とか、自分の進もうとする道、人生が与えてくれるもの、いかに理性的に決断して行動しているか(あるいは、していないか)、自分の生活信条と実際の行動の関係など本当に大切な問題について、自分というものを見つめることをしていない。(98ページ)
だが、実際に幸福を手に入れた人もいる。そういう人たちは、幸福とは肉体的、精神的快楽を得ることにあるのではなく、理性を豊かにし、自らの生活信条にかなった生き方をするところにあると悟ることによって、幸福を自分のものとしているのだ。(99ページ)
人間は理性的な生き物であると思われているが、実際は理性よりも本能に従って生きている。そして、深く自分を振り返って考えることが少なくなればなるほど、ますます理性的でなくなるのだ。(101ページ)
確かに本は価値がある。が、しかし、本さえ読めば、それでもう最近やったこと、これからやろうとしていることを、毎日きちんと率直かつ正直に検討しなくてもいいということにはならない---いくら本を読んでも、やはり自分をしっかり見つめることは必要である(自分を見つめるというのは、はなはだ狼狽させられる作業ではあるが)。(103ページ)
物事の原因と結果に深く思いをめぐらせていれば、人生の苦悩は減り、他方、人生はより味わい深く、豊かなものとなる。(120ページ)
そして、そうやって得た知識をまとめ、自分なりにひとつの系統だった説を構築してみるのである。(124ページ)
ただ、2つの重要な一般的注意事項だけは述べておきたい。
ひとつは、自分が努力を傾ける方向と範囲を限定しておくべきであるということである。ひとつの時代、あるいはひとつの主題、あるいは一人の作家を選ぶことである。
(中略)
2つめは、よく読むと同時によく考えよということである。(134-135ページ)
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